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05. セルの組立―電池式の書き方と電極の呼び方―

山形大学  工学部  化学・バイオ工学科  仁科辰夫

エネルギー化学 Web Class syllabus 53209 10:30-12:00 仮想教室中示範B C1

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この「アルミニウム電解槽」は、昭和電工(株)大町工場に設置され、 昭和9年(1934年)1月11日、国産初の「アルミニウム」を生産したわが国最初の「電解槽」を、 当時のままに実物大に再生したものです。 大町市は、この「電解槽」から生産された国産アルミニウムにより、「アルミニウム発祥の地」の栄誉を、永遠に記録されることとなりました。


物質に電気を流すことで、撹拌、加熱、加圧などで得られなかった新たな材料を作ることができます。 物質に通電するための仕組みの単位を、電解槽、セルといいます。 セルには電極があり、通電するだけでなく電気を取り出すのにも使います。この場合はセルを電池と呼びます。 セルをいくつか直列につないで、電気エネルギーを取り出せるようにしたものはバッテリーと呼びます。

10 コイン電池(人間電池)
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コイン電池の電位の高い方を正極と言います。電位の低い方を負極と言います。 十円玉と一円玉の正極はどちらでしょう?

手のひらにのせた十円玉と一円玉が接触すると、起電力はなくなります。 この状態を短絡、ショートと言います。 電位の高かった十円玉から、電位の低かった一円玉に電流が流れています。 一円玉から手のひらの汗に電流が流れ込み電気分解が起きます。

コインの電位序列を回路計で実測し、数直線に記入しましょう。 数直線の描画

電解槽・電気化学セル・電池

一対の電極を備え電解質を支える一組をセルと言います。 工業電解では電解槽、エネルギーデバイスでは電池、研究用では電気化学セルなどと言います。 電気エネルギーを取り出す目的でセルを複数つないで構成したものはバッテリーと言います。

セルとセル定数

電池式の書き方

化合物を表すのに化学式を使います。化学式には組成式やイオン式などがあります。 同様にセルの構成を表すのに電池式を使います。

一般に、電気の流れる向きを、横書き文字と同じように左から右に書くと読みやすいため、 左にアノード、右にカソードを書きます。 一次電池の場合は、左が負極、右が正極となります。

https://www.sidaiigakubu.com/examination-measure/chemistry/25/
*  化学式
化学種 式の種類
水素 元素記号 H
分子式 H2O
電子式 H:O:H
示成式 H-O-H
構造式 H-O-H
水素分子 分子式(化学式) H2
硫酸アルミニウム 組成式(化学式) 3Al2(SO4)3
炭酸イオン イオン式(化学式) CO32-
ダニエル電池 電池式 Zn | Zn2+ || Cu2+ | Cu
化学式には、組成式、構造式、示性式、電子式などがあります。 デジタル情報としては、 SMILES記法などがあります。 また伝統的なファイル形式として、mol形式などがあります。 XML形式としては、CML形式などがあります。

化合物を化学式で表すように、電解槽・電気化学セル・電池を表すには電池式があります。電池式はアノードを左側に書くのが慣例です。 電池式の縦棒(|)は相と相との界面を表しています。たとえばダニエル電池の電池式は下記のようになります。 電池の起電力の測定では、電池式からダニエル電池を組み立てることになります。

ダニエル電池の模式図
実際にセルを組み立てたところ

Zn | Zn2+ || Cu2+ | Cu     ( * )

電池式の例
電池系 電池式 備考
ダニエル電池 Zn | Zn2+ || Cu2+ | Cu
アルミニウムの
アノード酸化
Al| Al2O3 | NH4OOC(CH2)4COONH4 aq
銀のアノード酸化 Ag|AgCl|HCl aq
Fig 電池の表記と特性(電池式)
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現代の電気化学p.64, 電池の表記

界面の厚みはないものとみなします。

電池の電極の名称
注目する量 電極の名称 説明
電位に注目 正極 電位の高い電極、(+)プラス
負極 電位の低い電極、(-)マイナス
電流に注目 アノード 電流が流れ込む電極。酸化反応が起きる電極。 放電するときは負極。 充電式電池では、充電のときは正極。
カソード 電流が流れ出る電極。還元反応が起きる電極。 放電するときは正極。 充電式電池では、充電のときは負極。
電池の電位プロファイル

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電位プロファイル―正極と負極-
©K. Tachibana

電池には電極があります。

酸化が起きる極をアノード、還元が起きる極をカソードと呼びます。 以前はアノードを陽極、カソードを陰極と呼びましたが、正極と陽極がまぎらわしいのでアノードと呼びます。 アノードは電流が外部回路から流れ込む極です。カソードは電流が外部回路へ流れ出す極です。 アノード、カソードは電流の向きに注目した呼び方です。 それとは別に正極と負極という呼び方があります。 電位の高い極を正極、電位の低い方を負極と呼びます。 正極、負極は電位の高低に注目した呼び方です。

ダニエル電池を放電するときは、負極の亜鉛が酸化して亜鉛イオンになります。 つまり負極がアノードです。 乾電池の負極も亜鉛です。 乾電池に豆電球をつないで点灯させているときも亜鉛が亜鉛イオンとなって溶け出していることになります。

無機工業化学・電気化学に記載されている電池をひとつ選び、その電池式を書きなさい。電池式の上に、その電池が放電しているときの回路図を書き、回路図に電極の呼び名も記入しなさいその図面を撮影してアップロードしなさい。

豆電球のスペックをみたところ、2.5Vの0.5Aでした。 このとき亜鉛が溶け出す反応速度をmol/sで求めてみましょう。

エネルギー変換化学特論電気エネルギーと物質~電池の系譜~

2極式セルと3極式セル-作用極、対極、参照電極-

電極がアノードとカソードのふたつだけの電気化学セルを2極式セルと言います。 2極式セルは電解液やセルの寸法の影響を受けやすいので、 特定の反応だけ見る場合は、3極式セルを使います。 3極式では、電位が予めわかっている参照電極を使います。

特定の反応が起きている電極を参照電極を使って平衡電位を調べるとき、その電極を単極と言い、半電池と言います。電解液がまざらないよう塩橋でつなぎます。これを液絡と言います。

初めての電気化学 電極類選定のポイント https://www.bas.co.jp/2559.html

作用極

作用極
備考
白金電極 水素過電圧が小さい
金電極 酸素過電圧が大きい
カーボン電極
水銀電極 水素過電圧が大きい
その他の金属電極
特殊な電極 ネサ電極(透明電極)

参照極

参照極 の種類と標準酸化還元電位
備考
銀|塩化銀電極 AgCl + e- ↔   Ag + Cl-Eº = 0.2223V* 温度Cl-濃度依存
水銀|塩化水銀電極 Hg2Cl2 + 2e- ↔   2Hg(l) + 2Cl-Eº = 0.26816V * 温度Cl-濃度依存
水銀|酸化水銀電極 HgO + H2O + 2e- ↔   Hg(l) + 2OH-Eº = 0.0977V * アルカリ用、温度、OH-濃度に依存
水銀|硫酸水銀電極 Hg2SO4 + 2e- ↔   2Hg(l) + SO42-Eº = 0.613V * 酸性用、温度、SO42-濃度に依存
エネルギー化学 化学実験
電極の作成とセルの組み立て

参照電極の例として銀塩化銀電極について調べ、銀塩化銀電極を参照電極として亜鉛亜鉛イオン電極と半電池を組み立てたときの電池式を書き、電位を測定するための実態配線図を書きなさい。

塩橋と液絡

塩橋には、アニオンとカチオンの輸率が近しい 塩化カリウム水溶液などが使われます。


電気力線とセル定数

電気回路は電池の中で途切れているわけではありません。 電池の中で電流はイオンとしてアノードからカソードへ流れます。 電解液の中のイオンは 電界 E 〔V/m〕 によって F 〔N〕 を受けるからです。 このようにイオンが力を受けて移動する道筋を電気力線といいます。 電気力線は途中で途切れることもなければ交わることもありません。

同じ電解液であれば、抵抗は電極間距離に比例し、断面積に反比例します。 このときの電極間距離と断面積の比をセル定数aと言います。

a = d / S     ( * )


  セル定数に関わる物理量
物理量 単位 凡例
電極間距離 d mメートル 電界の強さ=電圧÷電極間距離
電極面積 A へいほうメートル 実験室でよく使う旗型電極の電極面積は 1cm²
電流密度 j =電流÷電極面積
セル定数 a 1/mまいメートル セル定数=電極間距離d÷電極面積A
コンダクタンス G 導電率 ÷セル定数
電気抵抗=抵抗率ρ×セル定数a


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平板電極の間の等電位線
©
若杉 誠 電気力線
平常演習 Web Class

等電位線と電気力線を描いてみよう

セル定数
制御と結果
角度:
角度:
電極間距離:
電極面積:
インピーダンスと物性との関係
測定可能な 物理量 界面の特性値 物性値
電気抵抗R=電圧÷電流 反応抵抗Rct〔Ωm-2〕=電圧÷ 電流密度 抵抗率ρ=電場強度÷ 電流密度
抵抗率ρ〔Ωm〕=電気抵抗R〔Ω〕÷ セル定数 a〔1/m〕
抵抗率ρ=1÷導電率
コンダクタンスG=1÷電気抵抗R 導電率 σ〔Sm-1〕 、電気伝導度
静電容量 (キャパシタンス)C 電気二重層容量Cd〔Fm-2 誘電率 ε
インダクタンスL 透磁率 μ
エネルギー化学05 電気化学特論05 電気化学特論14

セルの寸法

セルは寸法が大切なので、三角法で製図しましょう。

Fig 三角法による電解セルの製図
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AB(スラリー)|スチーブンサイト2wt%/水分散液|AB(スラリー)
©H.Tanabe
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次回

電気分解とファラデーの法則

立花研究室(要認証)

エネルギー化学
  1. 量と単位-自然界を測るものさし-
  2. エネルギーと生活-動力と電力-
  3. 材料と電気-化学結合の種類-
  4. 電気と化学―電池と豆電球のつなぎ方と電流・電圧の測り方―
  5. セルの組立―電池式の書き方と電極の呼び方―
  6. 電気分解とファラデーの法則―銅クーロメーターと電気めっき―
  7. 電池の起電力―銀塩化銀電極とネルンストの式―
  8. 分解電圧―電力効率とターフェルの式―
  9. 測定法-ボルタンメトリーと交流インピーダンス法-
  10. センサーと情報変換-pH電極、参照電極-
  11. 表面処理とアノード酸化―アルマイトと不動態-
  12. 印刷とフォトリソグラフィー―エッチングと腐食―
  13. エネルギー変換と化学―一次電池と二次電池ー-
  14. 自然との共生―バイオと光-
  15. エネルギーと情報-ディスプレイとエレクトロニクス―


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