HOME 教育状況公表 令和3年4月14日

08.工業電解と分解電圧―電力効率とターフェルの式―

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前回

前回は 電池の起電力―銀塩化銀電極とネルンストの式―を勉強しました。

水を水素と酸素に熱分解しようとしたら、2500度もの高温が必要だ。 電気を使えば、室温で乾電池をふたつ直列につなぐだけで、水素と酸素に電気分解できる。

keisan:ターフェルの式 学生実験-分解電圧

速度論について議論します。 セルに電流を流すということは反応を進行させるということでです。 電流をファラデー定数と反応に関与する電子の数で割ったら反応速度です。


分解電圧シミュレータ
溶液抵抗と分解電圧曲線

電流電位曲線

の電解

電流の測定

電流計を電池に直接つないではいけません! まずは電流を測定してみましょう。 乾電池の電圧を開回路電圧で測定します。 次に電流を流して測定します。 流した電流はいくらでしたか? 電圧降下から内部抵抗を求めてみましょう。


分解電圧

平衡電位を超えたからといってすぐには反応ははじまりません。 実際に反応が始まる電圧を分解電圧といいます。

物質化学工学実験Ⅱ 分解電圧

-0.500.511.522.52.521.510.50-0.5 電圧 V /V 電流 I /A
分解電圧
08. エネルギー化学
硫酸の分解電圧(電流‐電圧曲線

Pt | H2SO4 | Pt     (* )


過電圧

理論分解電圧と分解電圧の差を過電圧といいます。 過電圧には抵抗過電圧、濃度過電圧、活性化過電圧があります。

工業電解 の場合に特に重要な析出物質、水素、酸素、塩素にはそれぞれ水素過電圧、酸素過電圧、塩素過電圧 と呼ばれています。 電極の金属の種類によって過電圧が異なります。電解の場合には過電圧の小さな金属が選ばれます。 逆に電池の負極の場合には自己放電が小さく起電力が大きくなるように過電圧の大きな金属が選ばれます。


201
硫酸の分解電圧(電流‐電圧曲線)
©T.Ito
希硫酸の電気分解
電池式 Pt | H2SO4 | Pt
アノード 反応 O2 + 4H+ + 4e-  ←    2H2OEº = 1.229V
カソード 反応 H+ + 2e-  →    H2Eº = 0V
理論分解電圧 Eº = 1.229V
化学実験Ⅰ エネルギー化学

202
水酸化ナトリウム水溶液の分解電圧(電流‐電圧曲線)
©T.Ito
水酸化ナトリウム水溶液の電気分解
電池式 Pt | NaOH | Pt
アノード 反応   O2 + 2H2O + 4e-  ←    4OH-Eº = 0.401V
カソード 反応 2H2O + 2e-  →    2OH- + H2Eº = -0.8285V
全反応 2H2O → 2H2 + O2
理論分解電圧 Eº = 1.229V
化学実験Ⅰ エネルギー化学 無機工業化学

203
塩酸の分解電圧(電流‐電圧曲線)
©T.Ito
塩酸の電気分解
電池式 Pt | HCl | Pt
アノード 反応 Cl2 + 2e-  ←    2Cl-Eº = 1.3583V
カソード 反応 H+ + 2e-  →    H2Eº = 0V
理論分解電圧 Eº = 1.229V
化学実験Ⅰ エネルギー化学

水素過電圧

 水素過電圧の小さい序列
PtPdRuRhAu FeCoAgNi Cu CdSnPb Zn Hg

酸素過電圧

 酸素過電圧の小さい序列
NiFePbAg Cd Pt Au

野村正勝・鈴鹿輝男, 最新工業化学―持続的社会に向けて― , 講談社サイエンティフィク, , (2004).
電解の化学

山下正通、小沢昭弥, 現代の電気化学, 丸善 , 目次 (2012).


電解の条件を設定するのに、抵抗を使って任意の電圧を電解槽に印加する方法を調べ、説明しなさい。またそのときに流れる電流を測定する方法についても調べて、説明しなさい。

分解電圧と理論分解電圧から過電圧を求める方法を調べ、説明しなさい。


電圧効率

電圧効率と電流効率から電力効率が求まります。

ターフェルの式

電流密度と過電圧には一定の関係があります。 実験的に求めた式をターフェルの式といいます。 ターフェルプロットをしてみましょう。 電位を平衡電位からずらすことを分極といいます。 一定の速度で分極して得られるグラフをボルタモグラムといいます。

keisan:ターフェルの式
数式 - 163

電流が大きくなると溶液抵抗が支配的になり下記のようになります。 溶液抵抗から外挿して交点が分解電圧ということになります。 分解電圧から理論分解電圧を差し引けば反応過電圧が求まります。

電流電圧曲線
分解電圧にかかわる物理量
物理量 単位 備考
過電圧 η V ηIR+ηmt+ηa
抵抗過電圧 ηIR V
電流密度 j A/m² 電流÷ 電極面積 A
セル定数 a 1/m

物質化学工学実験Ⅱ 分解電圧

電解の電圧効率を向上させる方法について調べ、説明しなさい。

工場見学に行こう! 東北東ソー (食塩電解の塩素)
https://a.yamagata-u.ac.jp/amenity/~host/yz/c1/Education/EChem.asp
工場見学へ行こう

水電解ではなくトルエン電解?


工業電解プロセス
プロセス アルミ
ニウム
溶融塩電解
食塩
電解

電解精錬
亜鉛
理論電気量 /kWh/t 2980 670 844 820
理論分解電圧 /V 4.17 2.2 0.1×10-3 2.0
電気量原単位 /kAh/t 3350 910
電解電力 電力原単位 ) /kAh/t 13400

次回

次回の 電気化学工業製品への応用1―アルマイト・エッチング―を勉強しましょう。

エネルギー変換化学特論電池の内部抵抗と過電圧


野村正勝・鈴鹿輝男 最新工業化学―持続的社会に向けて― 講談社サイエンティフィク
松林光男、渡辺弘, イラスト図解 工場のしくみ ,日本実業出版社
山下正通、小沢昭弥, 現代の電気化学, 丸善 , 目次 , (2012).

立花研究室(要認証)
エネルギー化学
  1. 量と単位-自然界を測るものさし-
  2. エネルギーと生活-動力と電力-
  3. 材料と電気-化学結合の種類-
  4. 電気と化学―電池と豆電球のつなぎ方と電流・電圧の測り方―
  5. セルの組立―電池式の書き方と電極の呼び方―
  6. 電気分解とファラデーの法則―銅クーロメーターと電気めっき―
  7. 電池の起電力―銀塩化銀電極とネルンストの式―
  8. 分解電圧―電力効率とターフェルの式―
  9. 測定法-ボルタンメトリーと交流インピーダンス法-
  10. センサーと情報変換-pH電極、参照電極-
  11. 表面処理とアノード酸化―アルマイトと不動態-
  12. 印刷とフォトリソグラフィー―エッチングと腐食―
  13. エネルギー変換と化学―一次電池と二次電池ー-
  14. 自然との共生―バイオと光-
  15. エネルギーと情報-ディスプレイとエレクトロニクス―


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