🏠
🌡️ 📆 令和6年3月29日
エネルギー化学 戻る 進む 別窓で開く

06. 電気分解とファラデーの法則~銅クーロメーターと電気めっき~

山形大学  工学部  化学・バイオ工学科  🔋 C1 📛 立花和宏

🔚 エネルギー化学 Web Class syllabus 53209 📆 🕥10:30- 🕛12:00 仮想教室中示範B C1 zero zoom English korea 簡体 繁体

電気量を測るには?-ファラデーの電気分解の法則-


なぜ電流はIなのか?

  1 電池を使った単純な回路(豆電球の点灯)
©Copyright K.Tachibana all rights reserved.

電気回路図の記号は電気用図記号は JISで定められており、考えたところでもムダなので、読み書きを練習して慣れるしかありません。

電池、結線、スイッチ、電球、 電気抵抗コンデンサ、 コイル、電圧計、電流計、検流計などは最低限覚えましょう。


回路計で測れる主な物理量

  1 回路計で測れる物理量
物理量 単位 備考
電圧 V V 乾電池開回路電圧1.65V。 乾電池 の公称電圧は1.5Vダニエル電池起電力は、1.1V 水の理論分解電圧は1.23V。
電流 I A 豆電球の電流は 0.5A。 ぽちっと光ったLEDの電流は1mA。 電流密度=電流÷電極面積
I= Q t
時間 t s
電気量 Q C Q = I t
🖱 電気エネルギー 電気量×電圧
電気抵抗 R Ω
R = V I , V = R I
静電容量 C F ( ファラッド )
C = Q V , V = 1 C I t
インダクタンス L H ( ヘンリー )
L = V I t , V = L I t
数式 電気にまつわる量

電気量とは?

  2 電気エネルギー
©2022 K.Tachibana

エネルギー〔 Wh(ワットアワー) 〕=示強変数×示量変数

電気エネルギー(電力量)〔Wh〕=電圧〔V〕× 電気量〔 Ah(アンペアアワー)

電気エネルギー〔Wh〕=電圧〔V〕× 電流〔 A(アンペア) 〕×時間〔h〕

電気エネルギー〔Wh〕=電力〔 W(ワット) 〕×時間〔h〕

電気量を測るには、電析した物質量を測ればいいのです。

「どんだけ強力な還元剤を使ったとしてもカリウムを単離することは不可能だろうね」
「ならどうやって単離したんですか?」
「電気分解さ。ボルタの電堆を使ってデービーはカリウムを単離することに成功したんだ」
「なるほど」
「単離できたとなれば、次やりたいのは量産だよね」
「うんうん」
「ファラデーっておっさんが、地道な実験を積み重ね、1832年に 電気分解によって析出する 物質量n が通電した 電気量 Q と に比例することを見出した」
式で書くとこうなる。


q=nF


ファラデー定数=27 Ah/mol

  2 ファラデー定数
数値(概数) 単位 説明
96485.332 C/mol
26.801 Ah/mol
26801.481 mAh/mol
0.027 kAh/mol

96485.33212331は、アボガドロ数×電気素量で、それらはSIで定められた 定義定数 です。

、爆鳴気などで、電気量を較正します。

ファラデー定数は、 エネルギー密度や理論容量の計算にも使います。

このファラデー定数F=96485こそ、物質量と電気量を橋渡しするマジックナンバー、ファラデー定数です。 目にも見えず、触れてもわからない電気の量を、物質の目方を測ることで定量したのです。

  3 ファラデーの法則の用途
用途 概略 説明
計測 電流 電量計( クーロメーター
電池 容量 残量(SOC)計算
電解 生産量
06 13 エネルギー化学 08 エネルギー化学特論
  3 銅クーロメーターによる 電気量の測定

物質量n〔mol〕と 電気量n〔C〕 は比例します。これを ファラデーの電気分解の法則と言います。 比例定数はファラデー定数F=96485.3415〔C/mol〕です。

ファラデーの法則を使って電気量を測る装置を クーロメーターと言います 2 )


学生実験の銅の析出実験では、3mgの銅を析出させる課題が出されます。 直径0.5mmの銅線を3cmほど硫酸銅水溶液に浸したとすると 端面の面積を無視すれば円筒の表面積は3.14×0.5×30=5mm^2=0.05cm2。 20mA/cm2の電流密度とすると実際の通電電流は0.1mAです。 さて、3mgの銅を析出させるには何秒間電解をすればいいか?

  4 🖱電析した物質量と電気量
©K.Tachibana
電気分解とファラデーの法則―銅クーロメーターと電気めっき―
学生実験
無機工業化学の電解精錬のところでも出てくるね。 実測例
山下正通、小沢昭弥, 現代の電気化学, 丸善 , p.46 , (2012).


電量計

電気量を測る装置は電量計またはクーロメーターと呼びます。 ボルタメーターと呼ぶこともありますが、ボルトメーターと紛らわしいので使わない方がいいでしょう。 クーロメーターは測ろうとする電流を電解液に通じて、電気分解をして、析出した金属または気体の量を測り、 ファラデーの電気分解の法則を使って、通じた電気の量を知る装置です。つまり、電流計を較正する装置です。 主なクーロメーターとしては銀クーロメーター、銅クーロメーター、爆鳴気クーロメーターがあります。

電気量を測る装置を電量計またはクーロメーター(coulometer)とよぶ。またこれをボルタメーター(voltameter)とよぶことがあるが、この名はボルトメーター(voltmeter)と紛らわしくてよくない。何クーロンの電気が流れたかを測る器であるから、クーロメーターとよぶ方が適当である。

クーロメーターは、測ろうと思う電流を電解質水溶液に通じて電気分解を行わせ、析出した金属または気体の量を測り、ファラデーの法則を用いて、そのとき通じた電気の量を知る装置である。

鮫島実三郎. 物理化学実験法 より 3 )

電流が流れると近くにある方位磁針が振れます。 電流に測る方法があるのか?それは流れた電気量と流した時間から決めることができます。

  5 コンパス

米沢高等工業学校本館から 銀電量計を探してみよう。

  6 米沢高等工業学校本館 応用化学科展示室(会計室) に展示してある 銀クーロメーター

銅クーロメーターは銀クーロメーターほど正確でないけれど、材料が安く便利なため広く使われます。 ビーカーに銅板を浸し、一方をアノード、もう一方をカソードとします。 欲組成の例としては150グラムの硫酸銅、50グラムに硫酸および50グラムのアルコールを水1000グラムと混ぜたもの。 空気があると銅が酸化する恐れがあるので、空気が液中に溶けるのを追い出すために、二酸化炭素または水素を細いガラス管で送ります。 電流密度はカソード1平方センチにつき2~20ミリアンペア程度。カソードは使用の前に一度電流を通じて、表面に新たに銅を付着させ、 それを水洗い、アルコールで洗い乾かし、秤量し、測るべき電流を通じます。

1クーロンの電気で遊離される銀の質量はいくらか?また銅の質量はいくらか?また0度1気圧での爆鳴気の体積はいくらか?


電流計の表示が一定になるようにして硫酸銅水溶液中で銅を電解析出させたところ 10分間で5mgの銅が析出した。 電流効率が100%とすると流れた電流の平均値はいくらか?

銅の電解精製

電気分解を使って物質を作ったり、純度を高めたりすることができます。 物質を作る電解製造としては、食塩を作るときの電気透析食塩電解の塩素、アルミニウム精錬のアルミニムなどがあります。 また純度を高めることでは銅の電解精製がよく知られています。

ただ実際には通電した電気量がすべて目的の物質量とはなりません。目的の物質が析出した割合を電流効率といいます。また平衡電位から求めた目的の物質の理論分解電圧よりよけいにかけた電圧を過電圧と言い、槽電圧のうち理論分解電圧の割合を電圧効率といいます。


  7 工場見学に行こう! 小名浜製錬所 (銅の電解精製)

電解精練(粗銅を陽極、純銅を陰極として電気分解を行う)の工程を施すことで、電気銅と呼ばれる純度99.99%の銅が得られる。

野村正勝・鈴鹿輝男. 最新工業化学より

アノードもカソードも銅だったら、理論分解電圧は何Vになるか?

  4 工業電解プロセス のエネルギー効率
プロセス アルミ
ニウム
溶融塩電解
食塩電解
電解精錬
亜鉛 電界採取
原料 食塩(岩塩)
製品 亜鉛
理論電気量 /kAh/t 2980 670 844 820
理論分解電圧 /V 4.17 2.2 0.1×10-3 2.0
アノード 電流密度/A/m2
単槽 電圧/V
電気量原単位 /kAh/t 3350 910
電解電力 電力原単位 ) /kWh/t 13400 2200 284 3000
電流効率
電圧効率
エネルギー効率 4 )
山下正通、小沢昭弥, 現代の電気化学, 丸善 , 工業電解プロセス p.125 , (2012). genden

理論分解電圧とは、アノードとカソードの平衡電位の差であって、槽電圧(浴電圧)をこれ以下に切り下げることはできません 。


山下正通、小沢昭弥, 現代の電気化学, 丸善 , 工業電解プロセス p.118 , (2012).

セル定数に関わる物理量と物性

  5   セル定数 に関わる物理量と バルクの材料 物性
物理量 単位 凡例
電極間距離 d mメートル 電界の強さ=電圧÷電極間距離
セル断面積 S へいほうメートル 拡面倍率1で、平板モデルのとき電極面積≒セル断面積
電極面積 A へいほうメートル 実験室でよく使う旗型電極の電極面積は 1cm²
セル定数 a 1/mまいメートル セル定数a=電極間距離d÷セル断面積S
コンダクタンス G 導電率 σ ÷セル定数
電気抵抗=抵抗率ρ×セル定数a
バルク電流密度j A/m2 バルク 電流密度 j 電流I÷セル断面積
界面電流密度j A/m2 界面 電流密度 j 電流I÷電極面積
電界の強さe V/m 電界の強さe電圧V÷電極間距離
🖱セルとセル定数

銅めっき

金属の表面処理
表面処理の種類 説明
塗装 有機物を主体とする皮膜を形成 トタン板(鉄|錫)、ブリキ板(鉄|亜鉛)
めっき 金属の皮膜を形成
ほうろう 素地金属に顔料を混入したガラス質の釉薬を焼きづける

ある金属を別の金属薄膜で覆う技術をめっきといいます。 めっきはアノード酸化などとならぶ重要な表面技術です。 カソード の表面に金属を電解析出させるめっきを電解めっきと言います。 電気を使わず還元剤を使うめっきを無電解めっきと言います。 溶かした金属にどぶづけするめっきもあります。 すずをめっきして 腐食 しないようにした鉄板をブリキ板、 亜鉛をめっきして傷がついたとき亜鉛が犠牲になって鉄板を守るようにしたのをトタン板と言います。

工場見学に行こう! 三ツ矢 (めっき)

表6.1  表面処理法とその目的、用途 5 )
表面処理法 目的 用途(具体例)
電気めっき (イ)装飾 (ロ)耐食 (ハ)耐摩耗 (二)機能
  • (イ)装飾品(金ボタン、時計側)
  • (イ)+(ロ)耐食性装飾品(自動車用マーク)
  • (ハ)耐摩耗品(エンジンシリンダー)
  • (二)合金めっき(ワイヤメモリ、磁気ヘッド)
  • 無電解めっき (イ)装飾 (二)機能
  • (イ)下地めっき(自動車用マーク)
  • (二)磁性めっき(磁性めっき)
  • 気相めっき (ロ)耐食 (ハ)耐摩耗 (ハ)機能
  • (ロ)+(ハ)耐食・耐摩耗品(切削工具)
  • (二)酸化物超伝導体(電子デバイス)
  • エッチング (二)機能
  • (二)砂目立て(PS版)
  • (二)回路形成(プリント基板)
  • (二)表面積増大(電解コンデンサー)
  • アノード酸化 化成 (イ)装飾 (ロ)耐食 (ハ)耐摩耗 (二)機能
  • (イ)+(ロ)+(ハ)アルマイト処理(アルミサッシ)
  • (二)Alの酸化膜(電解コンデンサー)
  • (ロ)+(ハ)+(二)Alの酸化膜(PS版)
  • 電解研磨 (イ)装飾 (ロ)耐食 (二)機能
  • (イ)+(ロ)耐食装飾品(ステンレス鋼)
  • (二)超精密研磨(超精密部品)
  • 塗装
  • 電着塗装
  • (イ)装飾 (ロ)耐食
  • (イ)装飾 (ロ)耐食
  • (イ)+(ロ)耐食装飾品(カラーステンレス、バンパー)
  • (イ)+(ロ)耐食装飾品(自動車ボデー)
  • 化学処理 (イ)装飾 (イ)装飾品(カラーステンレス)
    泳動電着 (イ)装飾 (ロ)耐食 (二)機能
  • (イ)+(ロ)耐食装飾品(自動車ボデー)
  • (二)酸化物超伝導体(磁気シールド)
  • 表面硬化
  • 浸炭、窒化、浸透
  • (ロ)耐食 (ハ)耐摩耗 (ロ)+(ハ)耐食・耐摩耗品(工具)
    化学修飾 (二)電極の機能化(電池用電極、センサー)
    電鋳 (イ)装飾 (二)機能
  • (イ)装飾品(精巧な美術品)
  • (二)複雑形状金属(精密機器部品、電子部品)

  • 山下正通、小沢昭弥, 現代の電気化学, 丸善 , 装飾めっき p.144 , (2012).
    無機工業化学 1000℃、 4Vが作る新幹線―非鉄金属― ロウソクの科学
    https://www.youtube.com/watch?v=E1yAULdDvBo
    https://www.genpaku.org/candle01/candlej1.html
    ✏ 平常演習

    めっきについて調べてみよう

    立花研究室(要認証)


    参考文献

    エネルギー化学
    ✏ 平常演習
    ✏ 課外報告書 Web Class


    QRコード
    https://edu.yz.yamagata-u.ac.jp/Public/52255/52255_06.asp

    🎄🎂🌃🕯🎉
    山形大学 データベースアメニティ研究所
    〒992-8510 山形県米沢市城南4丁目3-16
    3号館(物質化学工学科棟) 3-3301
    准教授 伊藤智博
    0238-26-3573
    http://amenity.yz.yamagata-u.ac.jp/

    Copyright ©1996- 2024 Databese Amenity Laboratory of Virtual Research Institute,  Yamagata University All Rights Reserved.