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06. 電気分解とファラデーの法則~銅クーロメーターと電気めっき~

山形大学  工学部  化学・バイオ工学科  仁科辰夫

エネルギー化学 Web Class syllabus 53209 10:30-12:00 仮想教室中示範B C1 English korea 簡体 繁体

ファラデーの電気分解の法則


「どんだけ強力な還元剤を使ったとしてもカリウムを単離することは不可能だろうね」
「ならどうやって単離したんですか?」
「電気分解さ。ボルタの電堆を使ってデービーはカリウムを単離することに成功したんだ」
「なるほど」
「単離できたとなれば、次やりたいのは量産だよね」
「うんうん」
「ファラデーっておっさんが、地道な実験を積み重ね、1832年に 電気分解によって析出する 物質量n が通電した 電気量 Q と に比例することを見出した」
式で書くとこうなる。


q=nF

このファラデー定数F=96485こそ、物質量と電気量を橋渡しするマジックナンバー、ファラデー定数です。 目にも見えず、触れてもわからない電気の量を、物質の目方を測ることで定量したのです。


学生実験の銅の析出実験では、3mgの銅を析出させる課題が出されます。 直径0.5mmの銅線を3cmほど硫酸銅水溶液に浸したとすると 端面の面積を無視すれば円筒の表面積は3.14×0.5×30=5mm^2=0.05cm2。 20mA/cm2の電流密度とすると実際の通電電流は0.1mAです。 さて、3mgの銅を析出させるには何秒間電解をすればいいか?
電析
電気分解とファラデーの法則―銅クーロメーターと電気めっき―
学生実験
無機工業化学の電解精錬のところでも出てくるね。 実測例
山下正通、小沢昭弥, 現代の電気化学, 丸善 , p.46 , (2012).

電量計

電気量を測る装置は電量計またはクーロメーターと呼びます。 ボルタメーターと呼ぶこともありますが、ボルトメーターと紛らわしいので使わない方がいいでしょう。 クーロメーターは測ろうとする電流を電解液に通じて、電気分解をして、析出した金属または気体の量を測り、 ファラデーの電気分解の法則を使って、通じた電気の量を知る装置です。つまり、電流計を較正する装置です。 主なクーロメーターとしては銀クーロメーター、銅クーロメーター、爆鳴気クーロメーターがあります。

電流が流れると近くにある方位磁針が振れます。 電流に測る方法があるのか?それは流れた電気量と流した時間から決めることができます。

コンパス

米沢高等工業学校本館から 銀電量計を探してみよう。

米沢高等工業学校本館 応用化学科展示室(会計室) に展示してある 銀クーロメーター

銅クーロメーターは銀クーロメーターほど正確でないけれど、材料が安く便利なため広く使われます。 ビーカーに銅板を浸し、一方をアノード、もう一方をカソードとします。 欲組成の例としては150グラムの硫酸銅、50グラムに硫酸および50グラムのアルコールを水1000グラムと混ぜたもの。 空気があると銅が酸化する恐れがあるので、空気が液中に溶けるのを追い出すために、二酸化炭素または水素を細いガラス管で送ります。 電流密度はカソード1平方センチにつき2~20ミリアンペア程度。カソードは使用の前に一度電流を通じて、表面に新たに銅を付着させ、 それを水洗い、アルコールで洗い乾かし、秤量し、測るべき電流を通じます。

1クーロンの電気で遊離される銀の質量はいくらか?また銅の質量はいくらか?また0度1気圧での爆鳴気の体積はいくらか?


電流計の表示が一定になるようにして硫酸銅水溶液中で銅を電解析出させたところ 10分間で5mgの銅が析出した。 電流効率が100%とすると流れた電流の平均値はいくらか?

銅の電解精製

電気分解を使って物質を作ったり、純度を高めたりすることができます。 物質を作る電解製造としては、食塩を作るときの電気透析食塩電解の塩素、アルミニウム精錬のアルミニムなどがあります。 また純度を高めることでは銅の電解精製がよく知られています。

ただ実際には通電した電気量がすべて目的の物質量とはなりません。目的の物質が析出した割合を電流効率といいます。また平衡電位から求めた目的の物質の理論分解電圧よりよけいにかけた電圧を過電圧と言い、槽電圧のうち理論分解電圧の割合を電圧効率といいます。


工場見学に行こう! 小名浜製錬所 (銅の電解精製)

電解精練(粗銅を陽極、純銅を陰極として電気分解を行う)の工程を施すことで、電気銅と呼ばれる純度99.99%の銅が得られる。

野村正勝・鈴鹿輝男. 最新工業化学より

アノードもカソードも銅だったら、理論分解電圧は何Vになるか?

工業電解プロセス
プロセス アルミ
ニウム
溶融塩電解
食塩
電解

電解精錬
亜鉛
理論電気量 /kWh/t 2980 670 844 820
理論分解電圧 /V 4.17 2.2 0.1×10-3 2.0
電気量原単位 /kAh/t 3350 910
電解電力 電力原単位 ) /kAh/t 13400

山下正通、小沢昭弥, 現代の電気化学, 丸善 , 工業電解プロセス p.118 , (2012).

銅めっき

金属の表面処理
表面処理の種類 説明
塗装 有機物を主体とする皮膜を形成 トタン板(鉄|錫)、ブリキ板(鉄|亜鉛)
めっき 金属の皮膜を形成
ほうろう 素地金属に顔料を混入したガラス質の釉薬を焼きづける

ある金属を別の金属薄膜で覆う技術をめっきといいます。 めっきはアノード酸化などとならぶ重要な表面技術です。 カソード の表面に金属を電解析出させるめっきを電解めっきと言います。 電気を使わず還元剤を使うめっきを無電解めっきと言います。 溶かした金属にどぶづけするめっきもあります。 すずをめっきして 腐食 しないようにした鉄板をブリキ板、 亜鉛をめっきして傷がついたとき亜鉛が犠牲になって鉄板を守るようにしたのをトタン板と言います。

工場見学に行こう! 三ツ矢 (めっき)
表6.1  表面処理法とその目的、用途
表面処理法 目的 用途(具体例)
電気めっき (イ)装飾 (ロ)耐食 (ハ)耐摩耗 (二)機能
  • (イ)装飾品(金ボタン、時計側)
  • (イ)+(ロ)耐食性装飾品(自動車用マーク)
  • (ハ)耐摩耗品(エンジンシリンダー)
  • (二)合金めっき(ワイヤメモリ、磁気ヘッド)
  • 無電解めっき (イ)装飾 (二)機能
  • (イ)下地めっき(自動車用マーク)
  • (二)磁性めっき(磁性めっき)
  • 気相めっき (ロ)耐食 (ハ)耐摩耗 (ハ)機能
  • (ロ)+(ハ)耐食・耐摩耗品(切削工具)
  • (二)酸化物超伝導体(電子デバイス)
  • エッチング (二)機能
  • (二)砂目立て(PS版)
  • (二)回路形成(プリント基板)
  • (二)表面積増大(電解コンデンサー)
  • アノード酸化 化成 (イ)装飾 (ロ)耐食 (ハ)耐摩耗 (二)機能
  • (イ)+(ロ)+(ハ)アルマイト処理(アルミサッシ)
  • (二)Alの酸化膜(電解コンデンサー)
  • (ロ)+(ハ)+(二)Alの酸化膜(PS版)
  • 電解研磨 (イ)装飾 (ロ)耐食 (二)機能
  • (イ)+(ロ)耐食装飾品(ステンレス鋼)
  • (二)超精密研磨(超精密部品)
  • 塗装
  • 電着塗装
  • (イ)装飾 (ロ)耐食
  • (イ)装飾 (ロ)耐食
  • (イ)+(ロ)耐食装飾品(カラーステンレス、バンパー)
  • (イ)+(ロ)耐食装飾品(自動車ボデー)
  • 化学処理 (イ)装飾 (イ)装飾品(カラーステンレス)
    泳動電着 (イ)装飾 (ロ)耐食 (二)機能
  • (イ)+(ロ)耐食装飾品(自動車ボデー)
  • (二)酸化物超伝導体(磁気シールド)
  • 表面硬化
  • 浸炭、窒化、浸透
  • (ロ)耐食 (ハ)耐摩耗 (ロ)+(ハ)耐食・耐摩耗品(工具)
    化学修飾 (二)電極の機能化(電池用電極、センサー)
    電鋳 (イ)装飾 (二)機能
  • (イ)装飾品(精巧な美術品)
  • (二)複雑形状金属(精密機器部品、電子部品)

  • 山下正通、小沢昭弥, 現代の電気化学, 丸善 , 装飾めっき p.144 , (2012).
    無機工業化学 1000℃、 4Vが作る新幹線―非鉄金属― ロウソクの科学
    https://www.youtube.com/watch?v=E1yAULdDvBo
    https://www.genpaku.org/candle01/candlej1.html
    平常演習 Web Class

    めっきについて調べてみよう

    立花研究室(要認証)

    1. 量と単位-自然界を測るものさし-
    2. エネルギーと生活-動力と電力-
    3. 材料と電気-化学結合の種類-
    4. 電気と化学―電池と豆電球のつなぎ方と電流・電圧の測り方―
    5. セルの組立―電池式の書き方と電極の呼び方―
    6. 電気分解とファラデーの法則―銅クーロメーターと電気めっき―
    7. 電池の起電力―銀塩化銀電極とネルンストの式―
    8. 分解電圧―電力効率とターフェルの式―
    9. 測定法-ボルタンメトリーと交流インピーダンス法-
    10. センサーと情報変換-pH電極、参照電極-
    11. 表面処理とアノード酸化―アルマイトと不動態-
    12. 印刷とフォトリソグラフィー―エッチングと腐食―
    13. エネルギー変換と化学―一次電池と二次電池ー-
    14. 自然との共生―バイオと光-
    15. エネルギーと情報-ディスプレイとエレクトロニクス―


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