🏠
🌡️ 📆 令和6年4月20日
機能界面設計工学特論
リチウムイオン二次電池の構造と材料設計の考え方

電気化学測定と電極構造


2-1 ビーカーセルによる部材特性の理解とコイン電池によるデバイス評価


セルとセル定数

  1 102 セルとセル定数
©K.Tachibana

平行平板電極であれば、
セル定数a=電極間距離d÷セル断面積S
です。 一般的には、導電率既知のKCl溶液などを使って、セル定数を較正します。

コンダクタンス=導電率
電気抵抗=抵抗率×長さ÷電極面積

導電率の測定では、 セル定数が必要です。


セル定数に関わる物理量と物性

  1   セル定数 に関わる物理量と バルクの材料 物性
物理量 単位 凡例
電極間距離 d mメートル 電界の強さ=電圧÷電極間距離
セル断面積 S へいほうメートル 拡面倍率1で、平板モデルのとき電極面積≒セル断面積
電極面積 A へいほうメートル 実験室でよく使う旗型電極の電極面積は 1cm²
セル定数 a 1/mまいメートル セル定数a=電極間距離d÷セル断面積S
コンダクタンス G 導電率 σ ÷セル定数
電気抵抗=抵抗率ρ×セル定数a
バルク電流密度j A/m2 バルク 電流密度 j 電流I÷セル断面積
界面電流密度j A/m2 界面 電流密度 j 電流I÷電極面積
電界の強さe V/m 電界の強さe電圧V÷電極間距離
🖱セルとセル定数

電池・電解槽の種類

  2 電池・電解槽の種類
分類 種類 備考
セル(単電池) 二極式 フルセル 実用電池(コインセル、円筒型電池)、メッキ試験(ハルセル)、電解槽など。 アノード カソードのみ
三極式 ハーフセル 作用極 、対極、 参照極
バッテリー(組電池)
電解槽
単極式(モノポーラ)
複極式(バイポーラ) 液を通しての短絡電流を防ぐなどの工夫が必要となる。 トヨタ 古河電池

  2 電極の接続様式

バイポーラ接続では、ブスバーなどの重量を低減できるため、 バッテリーだけでなく、 水電解の電解槽などでも、応用が考えられるが 液絡のリスクを減らすのが課題です。 1 )


二極式セル(フルセル)と三極式セル(ハーフセル)

初めての電気化学 電極類選定のポイント https://www.bas.co.jp/2559.html

11円(人間電池)の起電力

  3 11円電池(人間電池)
©Copyright 2017-2024 Kazuhiro Tachibana all rights reserved.
電池式 アノード (-) 🪙一円玉 |🖐人間 |🪙十円玉 (+) カソード

てのひらに、10円と1円をのせれば、 電気化学の三要素 がそろって、電池になります。 デジタル式回路計で、 電圧を測定すると、0ではありません。 これが 電池の起電力です。 電流が流れていないにもかかわらず電圧があるのです。 電池では、電流と電圧が、そのまま比例しません。 電池は単なる電気抵抗ではないのです。 化学反応が電気を起こしているのです。 11円電池は、 ガルバニ電池と言っていいでしょう。


主な電気化学測定法

  3 主な電気化学測定法
名称 概略 制御 測定 装置
クロノポテンショメトリー (CP 電圧電気量曲線 電池充放電曲線 過渡応答 など 電流 電圧 ( 電位 )、時刻 🚂 ガルバノスタット、データロガー
クロノアンペロメトリー 電流絞り込み曲線など 電圧 電流、時刻 🚂 ポテンショスタット 2 ) データロガー
リニアスイープボルタンメトリー (LSV) 分解電圧の測定など 電圧、掃引速度 電流 🚂 ファンクションジェネレータ、 🚂 ポテンショスタット、データロガー
サイクリックボルタンメトリー ( CV) 3 ) 電圧、掃引速度 電流 反応種の特定など
電圧電流曲線 電流 電圧 電池の内部抵抗
コンダクトメトリー 導電率 誘電率 の測定など 電圧 電流 🚂 ファンクションジェネレータ 4 ) 🚂 ポテンショスタット、データロガー
交流インピーダンス法 導電率 の測定など 電圧 周波数 電流 ファンクションジェネレータ、ポテンショスタット、データロガー、 オシロスコープ、LCRメータ * *

電池の直流評価と交流評価

  4   電池の 🖱 直流評価🖱 交流評価
直流 交流
主な対象 界面 バルク
主な評価項目 直流抵抗( DCR イオン導電率
主な評価方法 短絡試験、定負荷試験、定電流試験 交流インピーダンス法 過渡応答試験

交流インピーダンス法 で測定した、 コールコールプロット の切片は、バルク抵抗(溶液抵抗など)です。 複雑な 電池の内部抵抗 は、 バルク抵抗より界面抵抗に支配されます。 周波数が高いと、界面抵抗と 並列の容量が比較的小さくても(皮膜、 空間電荷層リアクタンスが小さくなってしまうため、 内部抵抗の推定は、直流抵抗の評価が大切です。


2-2 充放電曲線から読む放電容量と内部抵抗

電池の内部抵抗と充放電曲線

  4 198 🖱 電池の内部抵抗とSOC- OCV曲線
©K.Tachibana

電池の内部抵抗 が大きくなると、カットオフ電圧に到達する時間が短くなり、電池の容量が小さくなります。 電池の内部抵抗 は、溶液抵抗( 抵抗過電圧)と接触抵抗からなります。 接触抵抗は、オーミックコンタクトでは、固体間接触の集中抵抗からなり、 またショットキーコンタクトでは、反応抵抗( 活性化過電圧)や皮膜抵抗となります。 SOCの推定に使われます。


2-3 サイクリックボルタモグラムから読む放電容量と内部抵抗


124
RC直列回路のサイクリックボルタモグラム(CV)
©K.Tachibana
https://edu.yz.yamagata-u.ac.jp/Public/54299/Common/Chart/CV-RCs.asp

2-4 交流インピーダンス法による電解質の導電率

コールコールプロット(ナイキストプロット)とボードプロット

  5 83
コールコールプロット(ナイキストプロット)とボードプロット
©K. Tachibana

ランドルス型等価回路

反応抵抗 界面 電解質
  6 典型的な電極界面の等価回路
14.エネ特 03.エネ特 1217 1224 0216

159
電極内部の界面の数
©K.Tachibana

2-5 固体材料の交流インピーダンス法による界面評価

固体電解質の界面

固体電解質の粒界をインピーダンスで調べようとすると、誘電分極ではなう電子分極させなければならないため、かなり高い周波数が必要です。 もっとも、そうやって調べる粒界抵抗は、電子抵抗であって、電子の2000倍もの質量をもつイオンが、粒界を通過できる保証はありません。結局、テストセルを作って、直流分極するしかありません。


粉体混合による活物質表面の変化と電池性能への影響

223
©C.Honda

224
©C.Honda

2-6 分散材料の交流インピーダンス法によるポットライフ管理

3-3
289
©F.Sato

268
©F.Sato

269
©F.Sato

225
©C.Honda

2-7 過充電による電解液分解と炭素材料の膨張・集電体からの剥離


229
©M.Morita

228
©M.Morita

227
©M.Morita

2-8 塗布ムラによる電極の凹凸からくる選択的電流集中と電解液の電気分解

234
©K.Tachibana

2-9 活物質の表面誘電率が炭素アンダーコートによる接触抵抗低減効果に及ぼす影響

界面

  8
©K. Tachibana

235
©C.Honda

236
©C.Honda

237
©C.Honda

2-10 集電体表面処理と電極スラリー密着性

285
©

278
©


情報機構2月16日 戻る
  • 1 電池の動作原理と電気化学の基礎
  • 2 電気化学測定と電極構造
    • 2-1 ビーカーセルによる部材特性の理解とコイン電池によるデバイス評価
    • 2-2 充放電曲線から読む放電容量と接触抵抗
    • 2-3 サイクリックボルタモグラムから読む放電容量と接触抵抗
    • 2-4 交流インピーダンス法による電解質の 導電率
    • 2-5 粉体混合による活物質表面の変化と電池性能への影響
    • 2-6 電極スラリーの経時によるゲル化とインピーダンス測定によるポットライフ管理
    • 2-7 過充電による電解液分解と電極材料の膨張収縮・集電体からの剥離
    • 2-8 塗布ムラによる電極の凹凸からくる選択的電流集中と電解液の電気分解
    • 2-9 活物質の表面誘電率が炭素アンダーコートによる接触抵抗低減効果に及ぼす影響
    • 2-10 集電体表面処理と電極スラリー密着性
  • 3 材料から見た電池の構造設計と工程設計
    • 3-1 材料が同じでも電池性能は変わる?
    • 3-2 充電式電池に求められる材料と形状の可逆性
    • 3-3 スラリー塗工工程と乾燥工程による電極と導電ネットワークの形成
    • 3-4 過充電時におけるバインダー樹脂と炭素粒子界面破壊
    • 3-5 バインダー樹脂が種々の界面に与える影響
    • 3-6 分散剤や界面活性剤の残存や異物が電池性能に与える影響
    • 3-7 導電助剤と集電体との接触抵抗が電池性能に与える影響
    • 3-8 電解質がマイクロショートやデンドライド形成に与える影響
    • 3-9 活物質の表面やSEIが電池性能にに与える影響
    • 3-10 タブリードやパッケージが電池性能にに与える影響
  • 4 リチウムイオン二次電池のパワーマネジメント
    • 4-1 単電池と組み電池、ハイブリッド蓄電システム
    • 4-2 クラウドとエッジを活用した電池のモニタリング
    • 4-3 リモートセンシングにおけるサイバー攻撃からの防御
    • 4-4 IoTやAIを使ったバッテリシステムの制御と劣化やトラブルの診断
    • 4-5 脱炭素社会に向けた再生可能エネルギー利用とV2H/V2G、超小型モビリティにおける蓄電システム