🏠 🔋C1 Laboratory
🌡️ 📆 令和6年4月25日

電気化学

グローバル化学・バイオ工学特論I 💬 Web Class Syllabus 56354 前期・火曜日 4-115
山形大学  工学部  化学・バイオ工学科  🔋 C1 伊藤 智博 📛 立花和宏

10

リチウム電池(LIB)のジェリーロール構造と寸法例

正極 負極
  1 リチウム電池(LIB)のジェリーロール構造と寸法例
©Copyright Satoshi Ishikawa all rights reserved.

ジェリーロール構造は、スパイラル電極構造とか捲回型とも言われます。 円筒型電池には、出力重視のスパイラル電極構造のほかに容量重視のボビン電極構造もあります。 * さらに出力重視では、ラミネート型電池に使われる枚葉積層型があります。 * * 電極面積を大きくし、電極間距離を小さくして、電解液による溶液抵抗を減らし、 内部抵抗を小さくします。


リチウムイオン二次電池

51 リチウム電池の模式図
©K.Tachibana Copyright all rights reserved.
電池式 アノード (-)Cu| C6Lix | LiPF6/EC+DEC | Li1-xCoO2, C | Al (+) カソード
※充電式電池では、充電時にカソードとアノードが入れ替わります。

リチウムイオン二次電池 では、 正極活物質負極活物質も、 固相反応にすることでカタチが変形を最小限にしています。 しかし、反応生成物の化学組成が違う以上、密度が変化するので、カタチの変形から逃れることはできません。 カタチの変形によって、固体と固体の 接触状態が変わるため、 電池の内部抵抗の増大の原因になります。


リチウムイオン電池

  1 リチウムイオン電池 実用電池
電池式 組み立て後:Cu|C|LiPF6 EC+DEC|LiCoO2,C|Al
充電後:Cu|C6Lix|LiPF6 EC+DEC|Li1-xCoO2,C|Al
負極 反応 6C+xLi++xe-←C6Lix Eº = -3V
正極 反応 LiCoO2←xLi++xe-+Li1-xCoO2 Eº = 0.7V
全反応
起電力/V 3.7 (公称電圧) 18650リチウムイオン電池は1セルの公称電圧が3.6Vまたは3.7V
最低放電終了電圧/V 2.5~2.75V
実用電池容量/mAh 1200~3300mAh
理論電池容量/mAh
サイクル寿命/回
理論重量容量密度
理論容量 電力原単位
/mAh/g
157.7mAh/g
理論重量エネルギー密度
/mWh/g
583.5
実用 重量エネルギー密度 200~250Wh/kg 程度 *
形状・寸法 円筒型 (18650の例 18は直径18mm、65は長さ65mm、0は円筒形) 2170や4680も * * 、 ラミネート型
重量
用途 住宅自動車スマホ

1 ) https://led-outdoorgear.biz/wp/18650-pse/ F=96485.33212331


電池と内部抵抗と等価回路

  2 電池と 内部抵抗 と 等価回路
©K.Tachibana
r Q = η t Q Q t I

電池は、化学エネルギーを電気エネルギーに変換するデバイスです。 その変換効率は高いほど良いです。 変換損失は熱エネルギーとなって放出されます。 この発熱は変換効率を悪化させるだけでなく、電池の温度を上昇させ、電池の安全な動作を妨げます。 電池の発熱は、内部抵抗rという 等価回路で表現されます。 電池の端子間電圧Vは、電池の起電力Ve.m.f.より電圧降下Irを差し引いた電圧です。


電池の起電力と内部抵抗

  3 電池の起電力と内部抵抗
©K.Tachibana
Vo Q = Ve.m.f. Q - rI
Vo Q = Ve.m.f. Q - η t Q Q t

電池の起電力は、正極と負極の単極電位の差です。 単極電位は、おおむね ネルンストの式に従います。 ネルンストの式によれば、電位は、活量に依存します。 このことは電池反応の進行とともに、電位が変化することを意味します。 逆に言えば、端子電圧から、電池の起電力を推定し、 電池の残量SOC)を推定することができます。

電池の端子電圧は、流れる電流が増えると小さくなります。この電流増加に対する電圧降下の割合を電池の内部抵抗と言います。


電流と電圧と電気抵抗の関係

  4 103
🖱 電流と電圧と電気抵抗の関係
©K.Tachibana

電池から電流を取り出すと 過電圧による電圧降下が生じます。 電流に比例する電圧降下を、電池の内部抵抗と言います。


電池の内部抵抗とSOC- OCV曲線

  5 198 🖱 電池の内部抵抗とSOC- OCV曲線
©K.Tachibana

電池の内部抵抗 が大きくなると、カットオフ電圧に到達する時間が短くなり、電池の容量が小さくなります。 電池の内部抵抗 は、溶液抵抗( 抵抗過電圧)と接触抵抗からなります。 接触抵抗は、オーミックコンタクトでは、固体間接触の集中抵抗からなり、 またショットキーコンタクトでは、反応抵抗( 活性化過電圧)や皮膜抵抗となります。 SOCの推定に使われます。


SOC-OCV曲線

  6 SOC-OCV曲線
python (colab)→ pngsvghtml

電池の起電力は、充電率(State of charge、SOC) 2 ) によって変化します。 電池の過電圧も、充電率で変化します。また過電圧は、放電か、充電か、その方向でも変化します。

組電池 の電圧も、同様です。


SOC-OCV曲線

# ■■■ OCV-SOC curve ■■■
import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
import math

R=8.314 #気体定数
F=96485 #ファラデー定数
T=298 #絶対温度
E0p=0.7 # 正極の酸化還元電位/正極は、1電子反応、ネルンストの式に従うと仮定
E0n=-3 # 負極の酸化還元電位/負極は、一定と仮定
RR=0.03 # 電池の内部抵抗/一定と仮定
I=3 # 放電電流・充電電流/一定と仮定
a = np.arange(start = 0.0005, stop = 0.998, step = 0.002) # SOC の範囲
x = [100*p for p in a] # SOC の範囲
y = [E0p - E0n + R*T/F*math.log(p/(1-p)) for p in a] # OCV の計算
y1 = [p + I*RR for p in y] # 充電曲線 の計算
y2 = [p - I*RR for p in y] # 放電曲線 の計算

fig, ax = plt.subplots() # Figureオブジェクトとそれに属する一つのAxesオブジェクトを同時に作成

ax.axhline(E0p - E0n,linestyle="dashed") #電池の起電力
ax.axhspan(ymin=3.30, ymax=4.15, color="g", alpha=0.3) #推奨範囲
ax.axhspan(ymin=4.15, ymax=4.20, color="y", alpha=0.3) #電圧上限限度
ax.axhspan(ymin=3.00, ymax=3.30, color="y", alpha=0.3) #電圧下限限度
ax.axhspan(ymin=4.20, ymax=4.25, color="r", alpha=0.3) #保護回路作動
ax.axhspan(ymin=2.95, ymax=3.00, color="r", alpha=0.3) #保護回路作動

ax.plot(x, y)
ax.plot(x, y1,linestyle="dashed")
ax.plot(x, y2,linestyle="dashed")

ax.annotate('OCV-SOC curve', xy=(np.mean(x),np.mean(y)), xytext=(np.mean(x)+np.std(x)/2, np.mean(y)-0.2),arrowprops=dict(arrowstyle="->"))
ax.annotate('charge curve', xy=(np.mean(x),np.mean(y1)), xytext=(np.mean(x)+np.std(x)/2, np.mean(y1)+0.1),arrowprops=dict(arrowstyle="->"))
ax.annotate('discharge curve', xy=(np.mean(x),np.mean(y2)), xytext=(np.mean(x)+np.std(x)/2, np.mean(y2)-0.25),arrowprops=dict(arrowstyle="->"))
ax.text(0.1, 3.8, "recommended")
ax.text(0.1, 4.15, "higher limit")
ax.text(0.1, 3.2, "lower limit")
ax.text(0.1, 4.2, "danger")
ax.text(0.1, 2.95, "danger")

ax.set_xlabel("SOC / %")
ax.set_ylabel("OCV $V$ / V")

plt.show()

# ■■■ OCV-SOC curve ■■■

©K.Tachibana

SOCの測定

  2  SOCの測定 3 ) 4 )
項目 説明
電圧測定方式 電圧 SOC-OCV曲線から推定することもあります。 電池の起電力が、 ネルンストの式と関係することが根拠です。
Ve.m.f.Q = E+ Q - E- Q
E = E0 - RT nF ln Q 0 -Q Q
クーロン・カウンタ方式 電流、時間 SOC[%] = RM/FCC 5 ) 反応量が ファラデーの法則に従うことが根拠です。
電池セル・モデリング方式
インピーダンス・トラック方式 電流、電圧、温度 電池の内部抵抗が、放電深さで変わることが根拠です。
Vo Q = Ve.m.f. Q - η t Q Q t
拡張カルマンフィルター方式など

バッテリー、セル、電極

158 バッテリー、セル、電極
©K.Tachibana

電源装置としての電池はバッテリーと言います。

ストリングの接続には、モノポーラとバイポーラがあります。

有機電解液は導電率が小さいため内部抵抗の増大の課題がありますが、 起電力の大きなリチウム電池では、同じ電圧を得るのに直列につなぐセルの数が少ないため、バッテリーとしては内部抵抗を下げるのに有利です。


BMSの機能

  3  BMSの機能
項目 説明
セルの過充電、過放電を防ぐ機能 電位検出
セルの過電流を防ぐ機能 短絡検出、発熱検出、過電流保護、過電圧保護
セルの温度管理を行う機能( BTMS 発熱検出、加熱、冷却
電池残量(SOC)・充電状態を算出する機能 積算電気量、電位
健康状態(SOH)を算出する機能 サイクルごとの内部抵抗
セル電圧の均等化(セルバランス)を行う機能

リチウムイオン電池には、過充電および過放電を防止する保護回路が必要である。24 V系の電源では、リチウムイオン電池を7 セル直列に接続して、各セルの電圧を監視し、正常な電圧範囲を逸脱した場合、回路を遮断する保護装置が必要である 6 )

*

* 経済産業省、蓄電池産業の競争力強化に向けて

バッテリの管理はマイコンで

シャント バッテリーストリング アナログフロントエンド マイコン
  7 電池管理用マイコンの例

バッテリーストリング の各セルの電圧を差動アンプでひろい、 積分型の高精度AD変換器でデジタルデータにします。 電流はシャント抵抗の両端の電圧を作動アンプでひろいます。 アナログフロントエンド(AFE)がやります。 マイコン(マイクロコントロールユニット、MCU)で処理します。 FETドライバが搭載され、パワー半導体を制御できます。


ルネサスよりRAJ240090のスペック

そうした中でルネサスは、「産業向けリチウムイオン電池管理ICとして業界初」というマイコン(RL78 CPUコア)を内蔵し、ソフトウェアで柔軟に多様な電池システム仕様に対応できる電池管理ICを実現した。電池残量の計測や、過電圧、過電流などの安全監視機能(アナログフロントエンド部)とマイコンが1パッケージ化されたため、電池制御の電圧測定に必要な高精度A-Dコンバーターとマイコンとのマッチングを事前に調整した上で提供するため、キャリブレーション作業が大幅に削減できるとする。その他、新製品は、電源、FETドライバー、リアルタイムクロックなどを搭載し、電池管理システム部分のトータルコストを従来品よりも「30%削減可能」(同社)とした。
シリアル通信 C ラズベリーパイ・エッジ

電池材料

  4   電池材料 7 )
分類 材料 特徴
電極材料 正極材料 活物質 極性固体、 酸化物、 イオン結合絶縁体
負極材料 (活物質) 極性固体(金属やグラファイト)/非極性固体(酸化物)
導電材 非極性固体 炭素材料
分散剤 界面活性剤
バインダー 界面活性剤
CMC・増粘剤 極性材料
集電体 (金属) 非極性固体
電解質 電解液、添加剤*
セパレータ
その他 外包材・リードタブ

界面は、 極性どうし、あるいは非極性どうし、だとなじみがいい。 異なる界面では、なじみが悪いので、界面活性剤などを検討する。


博士後期課程 機能界面設計工学特論

参考文献


QRコード
https://edu.yz.yamagata-u.ac.jp/Public/54299/c1/Extra_Syllabus/56354/56354_10.asp
名称: 教育用公開ウェブサービス
URL: 🔗 https://edu.yz.yamagata-u.ac.jp/
管理運用 山形大学 学術情報基盤センター

🎄🎂🌃🕯🎉
名称: サイバーキャンパス「鷹山」
URL: 🔗 http://amenity.yz.yamagata-u.ac.jp/
管理運用 山形大学 データベースアメニティ研究会
〒992-8510 山形県米沢市城南4丁目3-16

Copyright ©1996- 2024 Databese Amenity Laboratory of Virtual Research Institute,  Yamagata University All Rights Reserved.