溶剤系バインダーと水分散系バインダーがあります。 溶剤系バインダーとしてPVDF+NMPの組み合わせが知られています。 重合の方法によって微妙に電池性能の影響が現れます。 PVDFの極性はとても大事で、なかなかほかのバインダーの追従を許しません。 ただ、極性があるがために結晶性があるので、機械的な折り曲げに対して柔軟性に乏しくなることが懸念されます。 水分散系バインダーは粘度の調整のために増粘剤が使われます。 SBR+CMC+水の組み合わせが知られていますが、SBRはその内部の共役二重結合のせいか若干電流のリークが見られます。 そのせいでSBRが酸化するのか、それとも接している電解液が酸化するのかはさだかではありませんが、 あまり正極には向いていないようです。
合材は極性の活物質、非極性の導電助剤は混錬するため、分散剤が使われます。 界面活性剤には、アニオン、カチオン、ノニオンなどが知られていますが、 電池では電解液にイオンが溶け出して悪さするのが懸念されるため、 主に高分子系の分散剤が使われます。 粒子表面に吸着した静電的な反発力よりも分子のかさ高さを利用した分散といえます。 できれば乾燥時に熱分解よって揮発していなくなってくれるものがありがたいです。
内部抵抗を下げるには薄い方がいいのですが、 そうすると短絡のリスクが高まります。 一般的に多孔性のフィルムが使われますが、 製法によって穴の開き方が異なります。 穴の開き方によってはマイクロショートによる金属析出に対して脆性となることもあります。 正極活物質は酸化剤なので、活物質に触れるところは耐酸化性が要求されます。
ラミネートパッケージの内装にも高分子フィルムが使われます。 もちろん、有機電解液に溶解したり膨潤したりしないことが前提となりますが、 ヒートシール性などが重要となります。 タブの取り出し口のところはとくに電解液のリークの原因となりますので、 タブに使用する金属との密着性が期待できる高分子材料を選びましょう。
導電性高分子という材料があります。 電気を流すのだから、導電助剤に使ったらよさそうなものですが、 分子内を電気をよく流すということと、分子間で電気が流れるということをいっしょにしてはいけません。 コンデンサのように高い周波数で一時的に電気を流すのであればよいのですが、 電池のように継続的に直流電流を流すのであれば、分子間でも連続的に電流が流れる必要があります。 極性の強い導電性高分子は一般的にアルミニウム集電体の接触抵抗を増大させるため、 コンデンサには向いていますが、電池にはあまり向いていません。
化学工学とリチウム電池〜分散・スラリーの作成と塗布乾燥〜
立花研究室(要認証)