JSR(株)四日市プラント、(株)イーテック四日市プラント工場見学の報告
JABEEが主張する技術者教育の実践には、教官がモノ造りの現場を熟知する必要があり、いろんな会社の工場見学を実施しています。貴社は、排気・騒音等の環境問題にも配慮し、低周波遮音壁への2億円(ちょっとした研究用施設が建ちますね)や環境清浄化への生きた投資が、空気の清浄さに結実しているのを肺で実感することができました。ニーズ志向の技術開発や効率的な製造ばかりでなく、半導体用レジストのように試験設備の頻繁な更新が不可欠な分野など、未来に向けて走り続けるさまは、大学での教育や研究にも言えます。現場が抱えている問題も垣間見え、「工学」としての体系化が必要な研究ネタも転がっていました(^_^;)。現場は宝の山ですね(^_^)v。
今回の工場見学では、実際に工場を見学する前に四日市駅に降りたった時点で驚いたことがございます。それは、空気がとても清浄でおいしかったことです。子供のころに教科書で学習した「四日市喘息」のイメージがあり、石油化学コンビナートの公害問題への各社の対応で改善したとの話は聞いたことがあったのですが、実際には改善どころの話ではなく、日本でも5指に入るほどの清浄度になっているとのこと、昼食を摂った食堂でもおばちゃんに叱られる始末でありました。後で学生にも聞いてみたところ、彼らも私と同じイメージを持っているとのことで、教育現場でも事実が正しく伝わっていないことを確認しました。これが教育現場での実態です。早速ながら、「四日市は企業の努力で日本でも5指に入るほど空気がきれいなんだぜ。」と自慢しておきました。やはり、実際に現場に行き、この身で体験しないと「理解」には至らないことを身をもって知ったしだいです。これを教育現場にいかすのが、我々大学側の使命でしょう。
工場見学では、品質を向上させつつも効率的な製造に日夜改善を重ね、省力化も推進している様が手に取るように見ることができました。省力化ではお決まりのオペレーションセンターでの計算機による制御・監視が見事に進んでおりましたが、ややもすると現場のライン全体を見渡すことのできる人がいつのまにかいなくなることが懸念されます。しかし、その点も十分に承知の上で、技術の伝承と人材育成にも努力されているとのこと、流石と感心するばかりでしたが、一抹の不安を覚えたのは事実です。
高分子研究所の皆様には、本学で進行中の都市エリアプロジェクトに関する仕事をお願いしておりますが、詳しい検討結果を頂き、感謝の念に絶えません。互いに警戒しながら、胡散臭さを匂わせながら
の議論でしたが、お互い初対面ということもあり、正常な反応だろうと思います(^_^;;;。これがユーザというお客様相手だったらば、見事に対応が違っていただろうことは容易に想像できます。何せ、大学の先生は何でもしゃべってしまうような人が多いですから、企業としては警戒するのは当然の反応でしょう。やはりface-to-faceでの交流を通してこそ、互いに信頼を勝ち得ることは私も認識しております。
ご推察のとおり、あれは燃料電池用のものですが、電極用ではありません。ガス透過性に関しては電解
質膜以上に良い特性を持っているようで、使えそうな気がしています。本学が進めている米糠の焼成材で導電率の良いものができれば一番良いのですが、アセチレンブラック系のものや炭素ナノファイバー系との混合使用も視野に入れたほうが良いかもしれません(ゴム材との混合が難しそうですが)。ゴム材や炭素とのアフィニティーの違いを利用すれば、意外と電子伝導性に乏しいものとの混練が良い結果を生むかもしれません。山形大学工学部の力を結集致しまして、成果が出ますように邁進いたします。評価試験等のお力添えをこれからも頂けます様に、宜しくお願い申し上げます。
これは蛇足になりますが、私自身は個人的には燃料電池自動車はないだろうと予想しています。PEFCのターゲットは、家庭などの定置用コジェネに絞るほうが良いと思うのです。どうやら、東京モーターショー等でも、大手メーカーもFCVの本当の実用化に関しては口をモニョモニョするだけで、明快なコメントを誰も発していません。
消泡剤に関する私の質問は、消泡剤の真の機能を逆手に取って、高分子材の機械的な特性ばかりでなく、鋳型としての単分散ナノ粒子の製造や電磁的ななんらかの機能発現に利用できないかという意図があってのものでした。もしやっていたとしても、開発中の秘密を教えてくれるとは思っておりませんので、ご安心下さい。
ゴム材への種々な材料の「混合」、「均一混合」、「構造制御混合」がアプリケーションとしてのゴム材のキーテクノロジーになるかと思います。この点については、貴社も流石だと思いますが、フコク様も優れた技術を持っているように思います。意外とゴム材のような超高粘度材料への混合技術自体は、学問的な体系化がなされていないような印象を受けました。これはエマルジョン系にも言えることでしょうが、こちらの分野への混合に関しては、もっと体系化が進んでいるようにお見受けしました。反応槽やポンプ・配管類の洗浄や接着なども工学としての体系化が遅れている分野かなとの印象をうけています。
これはどうでもいいことかもしれませんが、多くの方がオドオドしていたような印象をうけています。今回は、現場を知らない大学の先生を相手にしてのものですから、堂々とした態度でいて欲しかったように思います。人間は自分が苦労したところなどは自慢したがるものです。それがあまり出てこなかったように思うのです。強面の元役員の方が科学技術コーディネータとして同行していたための条件反射だったのかもしれませんが…(^_^;;;
山形大学工学部もJABEE対応を進めており、技術者教育の意味を踏まえた上で、更なる進化を目指して邁進していきますので、皆様も厳しい目で観察して下さるようお願い申し上げます。大学ってところは、甘やかすとロクなことがありません。
JSR(株)、(株)イーテックの益々のご繁栄、皆様方のご健勝をお祈り申しあげます。
JSR、イーテック訪問@三重県四日市市2003-11-14 【工場見学】JSR、イーテック訪問@三重県四日市市