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🌡️ 📆 令和6年4月19日

08. セラミックス材料~正極活物質と導電助材の働き~

山形大学  理工学研究科(工学系)  物質化学工学専攻  🔋 C1 立花和宏


  1 セラミックスの種類
分類 原材料 製品
セラミックス クラシックセラミクックス 土器 粘土 瓦・レンガ
陶器 陶石 食器
磁器 陶石 実験器具
ニューセラミクックス アルミナ
ファインセラミクックス 生体関連
エネルギー関連 シリコンカーバイド
情報通信関連 チタニア
ガラス ソーダガラス ケイ酸塩 板ガラス・ガラス瓶・ガラス繊維
カリガラス ケイ酸塩 実験用器具
鉛ガラス
(クリスタルガラス)
ケイ酸塩 装飾品
ホウケイ酸ガラス
(耐熱ガラス)
ケイ酸塩 電球、ガラス器具
セメント ポルトランドセメント 粘土・石灰石 土木・建築
1 )

窯業は、 JISにより規格が定められています。

酸化剤として使える固体は、酸化物が多い。必然的にセラミックスを使うことになる。 金属を使った電極は、充電時に形状を元に戻すことが極めて困難。

スラリーを使った成形
Example fillrule-evenodd - demonstrates fill-rule:evenodd 10-810-610-410-21001021041061081010101210141016 Al Cu Ge Si
  1 導体(金属)・半導体・不導体(絶縁体) の 抵抗率 ρ(ロー)/ Ω·m
© K.Tachibana , C1 Lab.

抵抗率は、 物性値です。 慣例的に金属などの固体材料は、抵抗率で表現し、電解液などは、 導電率で表現することが多いです。


分極の種類とイオン結合

  2 純物質  化学結合結晶
結合の種類 結晶 性質や特色 物質の例
イオン結合 イオン結晶 固体 導電率が小さい(絶縁体)。水溶液や溶融塩 導電率が大きい。 (キャリア:イオン)。 塩化ナトリウム、塩化銀、水酸化ナトリウム
共有結合 分子結晶 分子式 で表す。融点沸点は低い。 酸素、アンモニア、水※1、ドライアイス
共有結合の結晶 黒鉛や導電性高分子は、例外的に電気を通す。 ダイヤモンド、 黒鉛、 ケイ素水晶 、石英※2
金属結合 金属の結晶 導電率 が大きい(キャリア:自由電子)。 銅、亜鉛🜀 アルミニウム リチウム

※1.水分子は共有結合に分類されるが、液体の水はわずかに電離して電気を流す。 このイオン結合的な性質を、極性分子と表現する。

※2.ケイ酸塩のケイ酸はイオン結合に分類されるが、共有結合としての性質が強く、焼成などで成型することができる。


バルクの分極

08 エネ特 08 1224

誘電率は、簡単に言えば電荷密度と電場強度金属の比です。

金属は、 金属結合 なので、分極されると、電荷が表面に集まります。このような分極を静電誘導と言います。

活物質は、 イオン結合 なので、分極されると、イオンの位置がずれて電気がたまります。このような分極を誘電分極と言います。

208
金属の結晶
©K.Tachibana

204
静電誘導(概念図)
©

205
静電誘導(電位プロファイル)
©Miyuki Akama

209
イオン結晶
©K.Tachibana

206
誘電分極(概念図)
©Miyuki Akama

207
誘電分極(電位プロファイル)
©Miyuki Akama

電位プロファイル―正極と負極-

  2 74 電位プロファイル―正極と負極-
©K. Tachibana

横軸に距離、縦軸に電位をとったグラフを 電位プロファイルなどと言います。 グラフの傾きは、 電界の強さを表します。

電池には電極があります。

酸化が起きる極をアノード、還元が起きる極をカソードと呼びます。 以前はアノードを陽極、カソードを陰極と呼びましたが、正極と陽極がまぎらわしいのでアノードと呼びます。 アノードは電流が外部回路から流れ込む極です。カソードは電流が外部回路へ流れ出す極です。 アノード、カソードは電流の向きに注目した呼び方です。 それとは別に正極と負極という呼び方があります。 電位の高い極を正極、電位の低い方を負極と呼びます。 正極、負極は電位の高低に注目した呼び方です。

ダニエル電池を放電するときは、負極の亜鉛が酸化して亜鉛イオンになります。 つまり負極がアノードです。 乾電池の負極も亜鉛です。 乾電池に豆電球をつないで点灯させているときも亜鉛が亜鉛イオンとなって溶け出していることになります。


結晶の分類とブラバイス格子

  3 結晶の分類とブラバイス格子
結晶系 P
単純
(Primitive)
I
体心
(Body-centered)
F
面心
(Face-centered)
C
底心
(Side-centered)
1.立方(Cubic)
2.正方(Tetragonal) ' '
3.斜方(Orthorhombic)
4.六方(Hexagonal)
5.三方(Trigonal)|斜方(Rhombohedral)
6.単斜(Monoclinic)
7.三斜(Triclinic)

固体結晶になります。結晶構造はXRDなどで分析できます。


点群と空間群

  4 点群と空間群
ヘルマン・モーガン記号
(Hermann-Mauguin)
シェーンフリース記号
(Schoenflies)
説明
H2O C2v
CH4 Td
LiCoO2 R3_m 便宜的に 六方晶系

集合に定められた演算について、結合律が成り立つとき、その集合は半群です。 さらに交換律が成り立つとき、その集合は可換半群です。 単位元をもつ半群のすべての元が逆元を持つとき、その半群は群といいます 2 )


バンド伝導とホッピング伝導

物質の誘電率について 出典:山本電機工業


-2.0-1.5-1.0-0.50.00.51.01.52.02.01.51.00.50.0-0.5-1.0-1.5-2.0' fill='none' stroke='black' stroke-width='3' /> 1/ T / K log( ρ / Sm ) 金属伝導 バンド伝導 ホッピング伝導
  3 材料の導電率と温度
3 )

正極活物質

  5   代表的な酸化物の導電率、格子定数および原子当たり体積 4 )
化学式 d電子数 導電率 結晶構造/空間群
層状化合物 LiVO2 2
LiCrO2 3
LiCoO2 6(低スピン) 便宜的に 六方晶系R3_m
LiNiO2 7(低スピン)
疑層状化合物 LiMnO2 4(高スピン)
スピネル LiMn2O4 3,4(高スピン)
LiV2O4 1,2
08.エネルギー化学特論

様々な結晶構造があります 5 )

正極合材は、正極活物質、導電助材、結着材を正極集電体に塗布乾燥して正極とする。

コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン鉄酸リチウムリン酸鉄リチウム1)、EMD二酸化マンガン(IC21)、ニッケル酸リチウム、酸化銀、酸化銅など。

リチウムイオン二次電池の活物質は、数ミクロンから数10ミクロンの粒径を持つものが実用化に適している。粒径が大きいとリチウムイオンの拡散が間に合わなくなり、粒径が小さいと比表面積が大きくなって導電助材やバインダーの量が増えて、電池容量が小さくなってしまうからである。


  6   正極活物質 6 )
活物質/ 略号 理論容量 /mAh/g 実効容量 (可逆容量) /mAh/g 用途 特徴
酸素 燃料電池、ガルバノ電池(ボルタ電堆)、 11円電池 気体
銅イオン ダニエル電池 液体
二酸化マンガン 308.3 アルカリ乾電池
🏞 コバルト酸リチウム/ LCO 273.8 130~150 リチウムイオン電池スマホ LiCoO2←Li++e-+CoO2
コバルト回収採算可
🏞 ニッケル酸リチウム 274.5
NCM 277.9 160
リチウム過剰NCM 267.1 160
ハイニッケル NCM,LNCM523 180~200 ニッケル回収採算可。 インセンティブは補助金?
🏞 ハイニッケル NCA 180~200 ニッケル回収採算可
🏞 マンガン酸リチウム(スピネル) LMO * 148.2 110~120 密度4.1 * 導電率1×10-6S/cm
🏞 LFP LiFePO4 リーズナブル。 バイポーラで、NCM置換可能。

正極活物質は、主に 電池正極で使われる酸化剤です。 充電式電池(二次電池)では、充電前の電池材料 である正極材料も活物質と呼ばれることがあります。 負極には還元剤が使われます。 酸素、酸化物(二酸マンガン)やフッ化物、硫化物が使われます *

* F=96485.33212331 F/Fw*Z

  4 155
均一固相反応(S字)と二相(L字)反応
© K.Tachibana

正極活物質の反応は、 大きく均一固相反応と二相反応に分類されます。 MnO2やLCOは、均一固相反応と言えます。NiOOHやLFOは二相反応と言えます。 均一固相反応の放電曲線はS字型を描き、二相反応の放電曲線はL字型を描きます。 放電深さにおける起電力はネルンストの式で議論でいます。 バッテリーマネジメント の立場から言うと、S字型の放電曲線は、電圧だけで 残量管理ができるメリットがあります。 しかし負荷からすれば電池の電圧が変動してしまうデメリットもあります。


電池活物質が100%反応したときの電気量を理論容量と言います。

理論容量 :電池活物質が100%反応したときの電気量

これはファラデー定数を式量で割れば求めることができます。 慣例的に電池の電気量は、〔mAh〕で表現されます。 ファラデー定数は、慣例的に〔C/mol〕で表現されますが、 ここでは、〔mAh/mol〕で表現した方が、計算に便利です。

  7 ファラデー定数
数値(概数) 単位 説明
96485.332 C/mol
26.801 Ah/mol
26801.481 mAh/mol
0.027 kAh/mol

96485.33212331は、アボガドロ数×電気素量で、それらはSIで定められた 定義定数 です。

、爆鳴気などで、電気量を較正します。

ファラデー定数は、 エネルギー密度や理論容量の計算にも使います。

例二酸化マンガンMnO2 正極活物質 の理論容量=FdyC/(Fwp/zp)
308.3mAh/g

でも二酸化マンガンは、MnO2-xのように 非量論化合物なので、厳密に式量は定義できない。 電池で使う活物質は、非量論化合物が多い。

電池活物質の式量Fw/g/mol
例LCO:97.873[g/mol]、C=12.011[g/mol]
反応に関与する電子数zp=1,zn=1/6

リチウムイオン電池 7 ) の正極として使われる コバルト酸リチウムの式量は、97.873である。 よって、理論容量は、273.9mAh/gとなる。 でもコバルト酸リチウムは、厳密には、酸化してはじめて正極活物質となる。 その場合式量としてリチウムが抜けた状態の量を使って282.6mAh/gとなる。 実際には100%リチウムを抜くことはできない。 そこで慣例的に、コバルト酸リチウムを正極活物質として計算することが多いようである。*

電池の容量

  8 電池の容量
項目 説明
活物質の理論容量 コバルト酸リチウムの式量は、97.873を 273.9mAh/g
正極の容量密度 mAh/g
正極活物質 の理論容量=FdyC/(Fwp/zp)
273.8mAh/g
負極活物質の理論容量=FdyC/(Fwn/zn)
371.9mAh/g
電池の論重量容量密度=FdyC/(Fwp/zp+Fwn/zn)
157.7mAh/g
  9 電池のエネルギー
説明
E= Vo Q Q

電気エネルギーEは、電気量Qの関数であるところの作動電圧Voを電気量で積分して得る。 理想的な電池では、電気量Q=電池容量× SOCである。

E = Va Q Q = VaQ

電池の作動電圧を 平均作動電圧として一定 とみなせば、電気エネルギーEは、平均作動電圧と電気量の積で近似できる。

Vo Q = Ve.m.f. Q - η I 作動電圧(Q)は、電池の起電力(Q)から電流の関数であるところの過電圧を差し引いて得る。
Vo Q = Ve.m.f. Q - η Q t 電流と電気量の関係を使って、全て電気量で記述できる。
Vo Q = Ve.m.f. Q - rI 過電圧が、 電池の内部抵抗だけで近似できるなら、
作動電圧(Q)= 電池の起電力(Q)±過電圧(I)
電流は電気量の時間微分なので、 作動電圧(Q)=電池の起電力(Q)±過電圧(dQ/dt)

粉体としての活物質

  10   粉体と比表面積 8 )
量名 記号 単位
密度 ρ kg/m3
比表面積形状係数 φ φ=6(、立方体、直径と高さが等しい円柱
直径 d m d=2×半径(
比表面積 S m2/kg S=φ÷ρ×(1/d)
比表面積 S m2/kg S=φ÷ρ×∫1/d(w)*dw
08 12 15 エネルギー化学特論

単位質量の 粉体 の全表面積を、 粉体 の比表面積と言います。 一定量の固体を粉砕すると、 その表面積は粒径にほぼ反比例して増加します 9 )


活物質の接触抵抗

接触抵抗Rc 接触容量Cc 粒子間抵抗Rp 粒子間容量Cp 粒界抵抗Ri バルク抵抗Rb
  5 接触抵抗Rc * +粒子間抵抗Rp+粒界抵抗Ri+バルク抵抗Rb

Rb+Ri+Rpは、15kΩ以下と推定された。 等価回路

©2020 K.Tachibana
  6 接触抵抗Rc * +粒子間抵抗Rp+粒界抵抗Ri+バルク抵抗Rb
©2020 K.Tachibana

電池 の劣化に伴う 内部抵抗の増大は、 形状変化に伴う 接触抵抗 の増大によるところが大きい


オーミックコンタクトとショットキーコンタクト

  11  電子からみた接触の種類
界面 電位差 界面
オーミックコンタクト 0 金属|金属 銅|アルミニウム
金属|半金属 アルミニウム|グラファイト
金属| 電解液 白金|Fe2+,Fe3+/ aq
ショットキーコンタクト 界面電位差 (起電力 金属| 電解液 銅|銅イオン水溶液
半導体|半導体 アルミニウム(酸化アルミニウム皮膜)|酸化マンガン(Ⅳ)、
金属| 固体電解質 金|ヨウ化銀
07.エネルギー化学 08.エネルギー化学 0422 1217 1224

炭素材料と導電助材

炭素材料

  7 炭素材料
©2022 K.Tachibana

バイオハードカーボン

ハードカーボン、ソフトカーボン、ダイヤモンド、DLC、活性炭、人造グラファイト(黒鉛)、炭素繊維、カーボンナノチューブ(CNT) 籾殻燻炭

炭素材料は、 導電性があるので、 電池 の導電助剤として使われます。

電池の内部抵抗は、過渡応答や 交流インピーダンス法で、評価されます。

カーボンナノチューブ

アセチレンブラック

  8 188
アセチレンブラック
©K.Tachibana

10 )

カーボン材料の表面はほとんど水素です。 官能基は、解放型とラクトン型に分類されます。 官能基の分析は、熱分析などによりますが、精度を上げることは困難です 11 )

🏞アセチレンブラック

電気二重層容量の測定

卒業研究炭素材料

負極活物質としての炭素材料は炭素への層間化合物として使われます。 グラファイト系の炭素材料です。 ソフトカーボン ハードカーボン

炭素材料の表面は炭素ではありません。 表面の極性は電池性能に大きく影響を及ぼします 12 )


活物質表面での電子パスとリチウムイオンパス

  9 42
活物質表面での電子パスとリチウムイオンパス
© K.Tachibana

次回

金属材料~負極活物質と集電体の働き~
http://c1.yz.yamagata-u.ac.jp/Education/Energy.html
✍ 平常演習
黒鉛や二酸化マンガンはなぜ黒いか?

参考文献


エネルギー化学特論
✍ 平常演習
💯 課外報告書 Web Class


QRコード
https://edu.yz.yamagata-u.ac.jp/Public/56307/56307_08.asp
名称: 教育用公開ウェブサービス
URL: 🔗 https://edu.yz.yamagata-u.ac.jp/
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URL: 🔗 http://amenity.yz.yamagata-u.ac.jp/
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