めっきを施された 工業製品をひとつ選びましょう。 その建浴、 方式について調べましょう。
めっき厚みとファラデーの法則の関係について議論しましょう。 めっき厚みの ばらつきをへらすのにどんな工夫をしているか、 ピンホールなどが生じた 不適合品をへらすのにどんな工夫をしているかも調べてみましょう。
また、ハルセル試験について調べ、 ハルセル内部のアノードからカソードに至る等電位線と電気力線の略図を描き、 電流密度とめっきの 外観について議論しましょう。
アノードやカソードなどの電極の名称や、 等電位線や電気力線などの概念を忘れた人は、前回の講義と演習を復習しましょう。
96485.332 〔 C/mol 〕 は、アボガドロ数×電気素量で、それらはSIで定められた 定義定数 です。
工業的には、 26.801 〔 Ah/mol 〕をよく使います。
ファラデー定数は、 エネルギー密度や理論容量の計算にも使います。
演習例) めっきを施された工業製品として、USB端子を選んだ。
USB端子は、耐摩耗性を高めるため、ニッケル下地めっきの上に、 パラジウムニッケル合金めっきを施し、 さらに金メッキを施している※。
ニッケル下地めっきの建浴は、現代の電気化学p148表6.6のストライク浴に準じた浴と思われる。 パラジウムニッケル合金めっきは、つきまわりをよくするため、電気化学p145表6.3の Ostrow浴に準じた浴と思われる。 最表層の金メッキは、耐摩耗性を高めるため硬度の得られる電気化学p145表6.3の Rinker浴に準じた浴と思われる。
USB端子は小さい部品であるので、方式としてはバレルメッキで生産されると思われる。
めっき厚みは、単位面積あたりに析出する物質量で決まる。よってファラデーの法則から、単位面積あたりの電気量で決まる。 電気量は、電流×通電時間であるから、単位面積当たりの電流、すなわち電流密度で決まる。よってめっき厚みの ばらつきをなくすには、 電流密度の 制御が重要である。
めっきのピンホールの原因のひとつとして、ワークの形状不良(ひけ巣)などがある。 これは、形状の異常によって、局所的に設計した電流密度から偏りが生じるためである。 表面処理などによって、予めワークの表面を均一にすることで 改善が期待できる。
ハルセルは、めっき液の状態を確かめるのに使われる台形の形状をしたテストセルである。等電位線は、アノードからカソードに至る途中で傾斜を持ち、電気力線もそれに伴い曲がる。結果としてカソード面の電流密度が変化し、さまざまな電流密度でのめっき状態を一度の分極で確かめることができる。
物理量 | 単位 | 凡例 |
---|---|---|
電極間距離 d | m | 電界の強さ=電圧÷電極間距離 |
セル断面積 S | m² | 拡面倍率1で、平板モデルのとき電極面積≒セル断面積 |
電極面積 A | m² | 実験室でよく使う旗型電極の電極面積は 1cm²。 |
セル定数 a | 1/m |
セル定数a=電極間距離d÷セル断面積S コンダクタンス G = 導電率 σ ÷セル定数 電気抵抗=抵抗率ρ×セル定数a |
バルク電流密度j | A/m2 | バルク 電流密度 j = 電流I÷セル断面積 |
界面電流密度j | A/m2 | 界面 電流密度 j = 電流I÷電極面積 |
電界の強さe | V/m | 電界の強さe = 電圧V÷電極間距離 |
表面処理法 | 目的 | 用途(具体例) |
---|---|---|
電気めっき | (イ)装飾 (ロ)耐食 (ハ)耐摩耗 (二)機能 | |
無電解めっき | (イ)装飾 (二)機能 | |
気相めっき | (ロ)耐食 (ハ)耐摩耗 (ハ)機能 | |
エッチング | (二)機能 | |
アノード酸化 化成 | (イ)装飾 (ロ)耐食 (ハ)耐摩耗 (二)機能 | |
電解研磨 | (イ)装飾 (ロ) 耐食 (二)機能 | |
化学処理 | (イ)装飾 | (イ)装飾品(カラーステンレス) |
泳動電着 | (イ)装飾 (ロ) 耐食 (二)機能 | |
表面硬化
|
(ロ)耐食 (ハ)耐摩耗 | (ロ)+(ハ)耐食・耐摩耗品(工具) |
化学修飾 | (二)電極の機能化(電池用電極、センサー) | |
電鋳 | (イ)装飾 (二)機能 |
ワークショップを楽しみましょう 2 ) 。 グループ人数は、5〜6名とします。 7名を超えないようにしてください。
初対面の場合は、自己紹介をしましょう。 雑談をして、アイスブレイクしましょう。
リーダー(司会進行)を決めてください。 そのほかのメンバーの 役割(記録係、資料作成係、プレゼンター( 登壇者))を決めてください。
グループ名を決めてください。
記録係は、試験答案用紙表面の最上部に、授業科目名、グループ名を記入してください。 メンバーは、記録係に従い、学籍番号、氏名、役割を直筆署名してください。 その際、 筆頭著者を登壇者の氏名の前に〇をつけてください。
討論を開始したら、記録係は討論の内容を裏面に記録してください。
討論がまとまったら、資料作成係は、試験答案用紙表面に グラフィカルアブストラクト に表現してください。
グラフィカルアブストラクトを撮影し、WebClassにアップロードしておくと復習に便利です。
登壇者は、プレゼンテーションのイメージをしましょう 3 ) 。 メラビアンの法則を意識して、 非言語表現も工夫しましょう 4 ) 。
グループ名が指名された後で、じゃんけんなどで登壇者を決めるのは、授業進行の妨げとなりますので、 必ず、討論前に 登壇者を決めてください。
記名だけして、討論に参加しない場合、不正行為として扱うことがありますので、必ず討論に参加してください。 自分から参加できなそうな人には、積極的に声がけをお願いします。 期末の 成績評価申請 時に、グループ名やメンバー、討論の内容を思い出せるよう、答案用紙を撮影することを推奨します。
ランダムにグループを指名し、壇上で、 プレゼンテーションしてもらいます 5 ) 。 質疑応答の際も、グループを指名しますので、指名されたグループのプレゼンターが質問、コメント、アドバイスをしてください。 ディベートとしての反対意見は、大歓迎です。
資料作成係は、討論の内容をポスターとして、試験答案用紙の裏面にまとめてください。 資料作成係に従って、他のメンバーが代筆してもかまいません。
*平常演習の配点は、授業1回ごとに、一律加点です。 平常演習には、ワークショップ、意見交換、発表、質疑応答など授業時間内の学習活動を含みます。 そのほかに授業時間外の0.5時間の学習活動を含みます。 平常点は、学期末に WebClass の 成績評価申請書 に申告していただき集計します。
授業時間外の活動の一助としてWebClassへの提出を推奨します。〆切は講義後1週間です。 ただし平常点の加点は、授業時間内の学習活動も含みます。 WebClass への提出のみでの、平常点の申告はご遠慮ください。
WebClass への平常演習提出は、推奨しますが、必須ではありません。 提出されていなくとも、 成績評価申請書 に、各回の授業時間以外の0.5時間の取り組みが申告されれば十分です。未提出だからと心配することはありません。
成績評価申請書 では、それぞれの授業で何を学び身につけたかを申告してもらいます。 WebClass に提出したかどうかより、身につけることを優先してください。 授業で取り上げたトピックや、グループワークの意見交換の内容は、期末までノート 6 ) などに記録しておくことを推奨します。 逆に授業に参加していないのに、WebClassの出席や提出だけの場合は不正行為として扱うことがあります。 平常の取り組みだけで、「到達目標を最低限達成している。成績区分:C」となります。 評点が60点に満たない場合は、不合格となります。 欠席した場合、課外報告書へ取り組むことで挽回してください。 出席が60%に満たない場合、課外報告書を提出しても、単位認定できません。
2024年1月21日 松木健三名誉教授がご逝去されました。