電池の電圧は電流に比例せず、線形システムではありません。 一方、インピーダンスはシステムの線形性を仮定します。 まずは、電池の起電力や内部抵抗など基本的なところをおさらいして、 インピーダンス測定とどう折り合いをつけるかみてみましょう。
電池は電気を流さなくても電圧があります。これを電池の起電力といいます。このときの内部抵抗は無限大とみなせます。電池から電流を取り出すと電圧が下がります。この見かけの抵抗を内部抵抗と呼びます。
電池式の書き方と電極の呼び方. 山形大学, エネルギー化学 講義ノート, 2015. https://edu.yz.yamagata-u.ac.jp/developer/Asp/Youzan/@Lecture.asp?nLectureID=4304 , (参照 ).
計測可能
な
物理量
(セル) |
界面
の特性値 (面積) |
バルクの
物性値
(セル定数) |
---|---|---|
電気抵抗
R[Ω]
=電圧÷電流
,
|
反応抵抗(面積抵抗率)
Rct〔Ωm-2〕
=電圧÷ 表面 電流密度 接触抵抗 (界面抵抗) * =電圧÷表面電流密度 |
抵抗率(体積抵抗率)ρ
=電場強度e÷ 断面 電流密度 抵抗率ρ〔Ωm〕=電気抵抗R〔Ω〕÷ セル定数 a〔1/m〕 抵抗率ρ=1÷導電率 |
コンダクタンスG[S]
=1÷電気抵抗R |
導電率
σ(
|
|
静電容量
(キャパシタンス)C
,
|
電気二重層容量Cd〔Fm-2〕 |
誘電率
=電荷密度÷ 電場強度e |
インダクタンスL
,
|
透磁率 μ |
電池の内部抵抗は、 バルク抵抗だけでなく、界面抵抗に左右されます。 溶液に金属を浸しただけの ダニエル電池 のような単純な電池では、バルク抵抗が支配的ですが、 合材電極や固体電解質を使う リチウムイオン電池 のような複雑な電池では、界面抵抗が支配的です。 電池の内部抵抗の評価には、 交流評価と直流評価を組み合わせが必要です。
界面を表す特性とバルクを表す物性があります。等価回路ではときどき不明瞭なものがありますので、単位で確認しましょう。
電池のモデル固体粒子の接触は、点接触です。面積を見積もるのがとても大変です。界面の電流密度がわかりません。 接触抵抗は電流集中を伴うので、圧縮などの影響を受けやすいのです。活物質や炭素材料、固体電解質などの取り扱いが難しいのはそのためです。
実用電池のほとんどは電極内部に複雑な構造を持ち、多種の材料からなる。 たとえば活物質、導電助剤、バインダー、電解液、集電体としただけで その界面の組み合わせは5C2=20通りに達するのである。 このような電極に単純な等価回路を当てはめて議論するのは無理があり、 かといって等価回路を複雑にしたところで意味がない。
回路コールコールプロット(ナイキストプロット)とボードプロットはインピーダンス測定結果の主要な表現です。とボードプロットにはしばしば両対数プロットが使われます。
コールコールプロットとナイキストプロットインピーダンスは数式1で示されます。
物理量 | 数式 | 備考 | |
---|---|---|---|
周期 T〔s〕 | 🖱山のてっぺんからてっぺんまでの時間です。 | ||
周波数 f〔Hz〕 | f = 1/T | 周波数と振幅で交流を表現します。 | |
角周波数
|
ω=2πf | ||
電圧 振幅Ep0 | 交流の大きさの表現には、振幅のほかにピークトゥピークや実効値があります (※)。 | ||
電流 振幅Ip0 | |||
インピーダンス Z〔Ω〕 | * | ||
絶対値 |Z| | |||
位相角
|
|||
アドミタンス Y〔S〕 | * | ||
インダクタンス L | |||
静電容量C | |||
電気抵抗 R | インピーダンス Z の実部 | ||
リアクタンス X | インピーダンス Z の虚部、 X=ωL-1/ωC | ||
コンダクタンスG | アドミタンス Y の実部 | ||
サセプタンス B | アドミタンス Y の虚部 |
複素平面にプロットしたインピーダンスの周波数による軌跡を コールコールプロットまたは ナイキストプロットと呼びます。