知識を現実と結びつけ、知恵にしましょう。
毒草を調べ、実際に探し出して、写真をとって報告してください。
米沢藩の名君、上杉鷹山は、「かてもの」という食糧辞典を著わしました。 飢餓に苦しんだ領民が、毒草を食べる中毒事故が多発したからです。 餓死より中毒死が多かったとも言われます。
動物には、みっつの知恵があります。
ひとつは生まれながらの知恵です。 生まれたばかりの赤ちゃんは、教わらなくても母親の温もりを頼りに母乳を探し当てて飲みます。 コアラは、青酸を含むユーカリを識別して、食べないようにすることを生まれながらに知っています。
ふたつめは、自分の体験にもとづく知恵です。 痛い思いをすれば、そのことを学習して、もうやらなくなるでしょう。
みっつめは、他人から教わり、学んだ知恵です。 上杉鷹山の「かてもの」を読めば、毒草でないか、そうでないかの知恵を授かることになります。
しかし、本で読んだり、話を聞いただけでは、 なかなか自信をもって、実践できるまでは至りません。 将棋のルールを知っているということと、将棋をさせるということはまるで違うことなのです。
アジサイは毒 です。
しかし、このことを言葉として知っていても、 アジサイを見たことがない人が アジサイの葉が、料理の皿に飾られていたとして、危ないと気がつくことができるでしょうか?
梅雨の季節が近づくと、アジサイによる食中毒事故が、毎年のように流れます。 それも、自宅の誤った調理が原因ではなく、 飲食店で料理に添えられた装飾用のアジサイを客が誤食する ケースが多発します。 これは、調理する側が知っていても、 客が知らなかったという、コミニュケーション不良も一因となっています。 また アジサイ弁当 などの誤解を招くネーミングも、できれば避けてほしいものです。 その言葉だけ聞いて、アジサイを調理してみようと思う素人が出てくるリスクをはらんでいます。
人間には無害でも、 ペットに危険な植物 もたくさんあります。 鑑賞用の園芸品種として、多く流通している身近な植物も例外ではありません。
毒は薬にもなります。 危険なものを安全につかいこなすことが技術というなら、 まさに薬は、バイオテクノロジーといっていいでしょう。 しかし、「薬(くすり)人を殺さず薬師(くすし)人を殺す 」という諺があるぐらいで、毒と薬は紙一重であり、 人を殺すのは、医者であり、薬剤師であり、エンジニアなのです。
全てを学ぶことはできません。百点満点がとれるのは試験だけです。 しかし、生半可な知恵は、人を殺しかねないことを忘れずに、 学んで身につけた知恵は、人に役立て、幸せにするために使わなければなりません。
野外で毒草を探す作業は、巡検と呼ばれる科学的手法です。
方法 | 説明 | 例 |
---|---|---|
観察 | 天体のように規模が大きすぎる場合や、人体のように倫理上の問題がある場合などは、積極的なアプローチを避け、あるがままを客観的にみて データとする。 | |
定性観察 | 同じかどうかを判断する(同定)。 注目する尺度で序列をつけ、データとする。 | 比色分析、帯電序列、層別 |
定量観察 | 物理量と単位となる 基準を 数値で表現する(計測、測定)。 数値 データとする。 | ノギスで長さを測定する。 |
巡検 | 現地に趣きあるがままを観察する。 地学、生物の分野で、対象を実験室に持ち込めないときに使う手法。 | 火山に赴き地層や地質を観察する。 山や野を歩き毒草の分布を調査する。 |
実験 | 主に実験室内で条件を設定して、現象を観察し、仮説を検証する。 物理、化学の分野で、対象を実験室内に構築して検証する手法。 | |
対照実験 | コントロールを設定して、現象を観察し、効果の有無を判定する。 | |
毒草の現物を見つけて、報告書にまとめましょう。 なぜその毒草を選んだか(緒言)、どのようにして探したか(方法)、実際に見つけて現物に接したかんじと、ネットなどで調べた情報とくらべてどうだったか(結果)、 全てを学ぶことができないということを前提に、学びの姿勢はどうあるべきか(考察)を含めて書いてみましょう。
課外 報告書 は、感想文ではありません。 データ の提示方法を工夫することで、 共著者の役割 の感情や思想を創作的に表現してください。 データ は、単なる実験事実や科学的数値です。 しかし、結果は、 著者による創作的な表現であり、 著作物です。
課外報告書は、学習保証時間8時間を要件とします。 期末にWebClassに提出する成績評価申請書には、主題の決定から、脱稿までの、それぞれに要した時間も含めてもらます。 データは、三現主義(現場・現物・現実)にのっとって収集してください。
学校教育法第百十三条に、 「大学は、教育研究の成果の普及活用の促進に資するため、その教育研究活動の状況を公表するものとする。」 とあります。
提出して終わり、ではもったいありません。 評価のための提出ではなく、誰かを笑顔にする取り組みにしてみませんか?
取り組んだ内容について、ぜひ、友人、知人、家族など広く伝えて役立てましょう。 また、意見やアドバイスを積極的に取り入れましょう。 査読された内容ではありませんが、 SNSなどで伝えていくこともいいでしょう。 ホームページで公表することも推奨します。 そのやり方は、 情報処理概論の演習を活用してください。 公表にあたっては、ネットストーキングの被害などから身を守る工夫をしましょう。
評価のために提出するだけでは、それを誰かが複製して利用することはありません。 複製して利用する価値があるとき、複製する権利は、著者にあり、それを著作権と言います。
評価を得るために他人の著作物を複製行為は、著者の著作権の侵害となります。 また評価をえなかったとしても、他人の著作物の剽窃行為は、倫理的にいかがなものかと思います。
課外報告書に取り組むにあたって、複数人で取り組むことはかまいません。コミュニケーションをとって、チームとしてプロジェクトに取り組んでください。
報告書は、個人の著作物です。 協働でテーマに取り組んでも、ひとりひとりが独立に報告書を作成し、提出してください。
複数人で取り組んだことを明らかにするため、共著者として、共同研究者を書いてください。執筆者(提出者)を筆頭著者としてください。 共著者の役割を明らかにしてください。
慣例にしたがう引用は、かまいませんが、自分が執筆した部分と、共同研究者の著作から引用した部分が、区別できるようにしてください。その部分を、実際に誰が執筆したのか、明らかでないような、引用の仕方(コピペされているのに、誰が書いたかわからないような状態)は、ご遠慮ください。
図や写真は、独立した著作物とみなされます。その場合は、引用ではなく転載となります。たとえば、写真は撮影者に著作権があります。許諾をとったうえで、自分以外の共同研究者が撮影した写真を掲載する場合は、著作権のクレジットを明記してください。もちろん、協働制作物を、それぞれが写真に撮影した場合は、それぞれが、それぞれの写真の著作権を持ちますので、クレジット表記は必要ありません。
著作物とは、著者の感情や思想を、創作的に表現したものです。それを踏まえて、報告書を作成してください。
項目 | 説明 | 事例 |
---|---|---|
捏造 (fabrication) | 実験していない データ を、でっちあげて、あたかも実験した データ のように表現してはいけません | ディオパン事件 3 ) 4 ) |
改ざん (falsification) | ||
盗用・剽窃 (plagiarism) | 他人の 論文 やアイディアなどを無断でコピペしてはいけません。 デジタル技術の発達で、コピペが簡単になった分、盗用も簡単になりました。 たとえ、自分の既発表 論文でも、 引用 5 ) ではなくそのまま流用すると「自己剽窃」です。 図表 は、引用ではなく、転載なので原則として、転載許諾が必要です。 | |
二重投稿 | 一度、公表した内容を使いまわしてはいけません。 | |
不適切な オーサシップ | 貢献していないのに、 著者として名を連ねてはいけません。 名義貸しです。名義借りはだめです。 他人の 論文や報告書を、代筆していけません。 * | |
査読不正 | 著者が、匿名査読者になりすまして査読してはいきません。 匿名査読者を特定し、査読に影響を与えてはいけません。 査読者が、査読中の論文の内容を、自分の内容として公表してはいけません。 ハゲタカジャーナル、ハゲタカ学会に投稿してはいけません。 | |
不正行為の証拠隠滅 | 不正行為があったことの証拠を隠滅したり、立証を妨害してはいけません。 |
課外報告書の配点は一律10点加点です。
単位数を2単位とすると、2×30時間が標準学習保証時間です。 最低学習保証時間のほかに、取り組んだ内容1件につき一律10点加点します。 2×30時間を100点満点とし、そこから最低学習保証時間を差し引いて、10点で割ると、 課外報告書の標準的な学習時間が計算できます。 つまり、課外報告書の学習保証時間は、8時間(約1日)です。 十分な時間をかけていない報告書の提出は、不正行為として扱うこともあります。 また課外報告書は、教室でやれない課外活動の報告です。 現場・現実・現物などの実態を伴っていない報告書の提出は、不正行為として扱うことがあります。
予習報告書は、課外報告書として申請できます。 設問ごとに別々の報告とすることはできません。その場合は、二重投稿(自己盗用)の不正行為として扱うことがあります。
成績評価申請書では、書誌情報、課外報告書の要旨(アブストラクト)、費やした時間(学習保証時間)、かかったコスト、現場・現実・現物のエビデンスなど指定された要件を申告してもらいます。