無機工業化学

繊維から作る工業製品(ファイバー、紙、不織布、織物、編物、衣類、断熱材など)のサプライチェーンを 無機材料までさかのぼってみましょう。 その無機材料が、 酸・アルカリ工業電気化学工業鉄鋼業非鉄金属工業窯業のいずれによって生産されたか、以前に授業でとりあげたテーマと関連付けましょう。

またその工業製品の繊維が、製品の中でどのような構造になっているか(絡み方、織られ方、編まれ方)スケッチしてみましょう。

さらに、その工業製品が現在抱えている課題について議論し、 それを解決するための商品を提案しましょう。 提案は、メーカーの研究開発の立場で行うこと。 リサイクルやリユースは、メーカーの立場ではありません。

その商品を開発するために、下記の表から、部門を選び、その立場で議論しましょう。 それぞれ部門がそのように研究開発計画に参入すればよいか、 ガントチャート にまとめてみましょう。

  1 間接部門と直接部門 *
分類 部門 説明
間接部門 研究・開発 新商品の 研究開発 1 )
知財・法務 特許 戦略を立てる。 係争になりそうな案件はイヤ!
人事 人件費がかかりそうな案件はイヤ!
総務 給与計算、勤怠管理、評価など。働き方改革に逆行する案件はイヤ!
直接部門 営業 受注、クレーム対応。利幅の取れないのはイヤ!
技術 メンテナンスに手間のかかる設備の導入はイヤ!
生産技術 工程の設計。作業標準の作成。 十分な試作データのない新製品はイヤ!
生産管理 生産量の管理、納期の管理、資材と製品の在庫管理。 仕掛品が多いのはイヤ!
購買 コスト(固定費、変動費) 2 ) 、安定供給元の確保、納期の確認。 入手しづらい資材を使うのはイヤ!
製造 無理、無駄、ムラをなくす。タクトタイムを短く。シフト管理。 手間が増えて複雑なのはイヤ!
品質管理 検査基準の作成。 許容誤差の指定がなく、良否の判断ができないのはイヤ!
👨‍🏫 職種

例)

ティッシュペーパーを選んだ。

ティッシュペーパーは、トイレットペーパーと違いバージンパルプから作られる。 ティッシュペーパーのサプライチェーンを遡る。

木材は、セルロース繊維とそれを結合する樹脂分のリグニンからなる。 その樹脂分を強力に鹸化して分離するのに使われるのが水酸化ナトリウムである。 この工程を蒸解という。

また蒸解のあとの漂白工程でも次亜塩素酸が使われる。 こうして作られる化学パルプ(クラフトパルプ)の工程は、 蒸気も電力も回収可能となり、環境にもやさしく、経済的である。

水酸化ナトリウムも次亜塩素酸も、ソーダ工業(電気化学工業)で生産される無機材料である。

繊維の構造の例: 不織布の遷移の構造

現在、ティッシュペーパーの抱える最大の課題は、大量消費による環境負荷の増大である。 ティッシュは、安価で入手でき、ためらいも少なく大量に消耗されている。 このコロナによって衛生ペーパーの需要は、さらに伸び、環境負荷の増大に拍車がかかかっている。

たとえば、ティッシュペーパーに通し番号を印刷するのはどうだろう。 環境問題は、すでに消費者が知っていると思うが、 具体的に何枚使ったかを目に見えるようにすることで、その意識を高められないだろうか?

既存の商品: キャラクターや模様が印刷されたティッシュ


  2 酸と塩基(アルカリ)
材料例 原料/ 製法 用途
塩基(アルカリ) 灰汁(あく) 灰汁抜き、釉
苛性ソーダ(水酸化ナトリウム) 食塩電解 製紙パルプ蒸解)、 繊維 (紡糸)、中和、二酸化炭素の吸収除去
ソーダ灰 (炭酸ナトリウム) 食塩アンモニア、 二酸化炭素/ ソルベー法、安塩ソーダ法 ガラス工業
🏞 アンモニア 空気、水素/ バーバー・ボッシュ法(空中窒素固定法) 3 ) 4 ) 5 ) 肥料 、硝酸、樹脂、 繊維
酸敗ミルク ミルク/発酵 繊維
硫酸 硫黄/接触法 肥料 (硫安)、 染料、洗浄剤、中和剤
硝酸(揮発性) アンモニア/アンモニア酸化法(オストワルト法) 肥料 、火薬(硝酸カリウム)
塩酸(揮発性) 食塩/ 電解 食品鉄鋼、 紙、織物 染料
リン酸 リン鉱石/湿式法、乾式法 肥料 、食品
👨‍🏫 単体・工業薬品など @JIS.K―化学・化学分析

繊維

  3 繊維
分類 細分
天然繊維 🏞 植物繊維
セルロース
麻(リネン)
木綿(コットン)
🏞 動物繊維
(タンパク質)
羊毛(ウール):ケラチン
絹(シルク):フィブロイン
🏞 鉱物繊維 アスベスト
🏞 合成繊維 6 ) 有機系 高分子 繊維 ナイロン
ポリエステル
アクリル
ビニロン
無機系 高分子 繊維
ガラス 繊維 ( 光ファイバー 7 )

肌触りのよりインド産の綿布は、キャラコと呼ばれました。 香料貿易でオランダに敗れたイギリスの東インド会社が、新商品としてキャラコをヨーロッパにもたらしました。 寒いイギリスでは、キャラコが大うけして、イギリス伝統の羊毛工業を危機に陥れ、1700年にはキャラコ禁止法まで制定されました。 しかし、このキャラコが 産業革命 の引き金になったと言ってもいいでしょう 8 )

繊維製品は、品質表示法により、消費者への 品質表示 が義務付けられています。

4代文明と繊維 アスベスト、カーボンナノチューブ

米沢高等工業学校本館 紡織科 👨‍🏫 米沢織物歴史資料館@山形県米沢市

  4 工業製品
分類 項目 説明
金属工業 鉄鋼 鉄道レール、鉄骨
非鉄金属 銅線、サッシ
金属製品 ボルト、ナット
化学工業 化学製品 洗剤、 🚂 医薬品🚂 肥料
プラスチック製品
🚂 石油製品 🚂 灯油
ゴム製品 タイヤ
機械工業 機械 産業用ロボット
電化製品 🚂 冷蔵庫 、 🚂 テレビ
情報通信機器 📱 スマホ 、 💻 パソコン
電子部品 🚂 液晶パネル
輸送用機械 🚂 自動車
食品工業 🚂 加工食品、飲料 🚂 ビール カップラーメン
繊維工業 繊維🚂 衣服 🚂 シャツ 🚂 下着 🚂 靴下
その他の工業 窯業 ビン、 ガラス🚂 食器 レンガ
🏞 木材 椅子、 🚂 (テーブル) 🏞🚂 箪笥(たんす)
🚂 家具
パルプ トイレットペーパー
印刷業 マンガ本 🚂 🏞、 チラシ
🚂 かばん 革靴、皮財布
楽器・ 🚂 日用品 (JIS.S) 🚂 ピアノ 、ギター、 電池
建設・そのほか 住宅、ビル、塔、橋、 ダム

いかなる工業製品も サプライチェーンをさかのぼってゆけば、 最後は地球上の資源にたどり着く。 どこかの鉱山で掘られた石か、農業あるいは狩猟採取によって殺した生き物か、そんな 天然資源 から工業原料は出発する。

化学工業 で生産される工業製品は、計数できる物体ではなく、 計量できる 物質と言っていいだろう。


パルプ

  5 パルプ
分類 原料 工程 製品例
砕木パルプ (機械パルプ) 針葉樹 の丸太材 材木をすりつぶす。 安価 新聞紙・ 印刷用紙・ グラビア用紙
クラフトパルプ (化学パルプ) 針葉樹広葉樹 木材チップを 水酸化ナトリウム で蒸解する。 それを次亜塩素酸ナトリウムで、漂白する。 ティッシュペーパー
古紙パルプ 古紙を脱墨(脱インキ)する 王子製紙

https://www.daio-paper.co.jp/koujou-saiyou/product/elleair.html

https://www.nepia.co.jp/company/nepia_product.html

9 )

✍ 平常演習

平常演習の配点と取り扱いについて

平常演習の配点は、授業1回ごとに、一律加点です。 平常演習には、ワークショップ、意見交換、発表、質疑応答など授業時間内の学習活動を含みます。 そのほかに授業時間外の0.5時間の学習活動を含みます。 平常点は、学期末に WebClass成績評価申請書 に申告していただき集計します。

授業時間外の活動の一助としてWebClassへの提出を推奨します。〆切は講義後1週間です。 ただし平常点の加点は、授業時間内の学習活動も含みます。 WebClass への提出のみでの、平常点の申告はご遠慮ください。

WebClass への平常演習提出は、推奨しますが、必須ではありません。 提出されていなくとも、 成績評価申請書 に、各回の授業時間以外の0.5時間の取り組みが申告されれば十分です。未提出だからと心配することはありません。

成績評価申請書 では、それぞれの授業で何を学び身につけたかを申告してもらいます。 WebClass に提出したかどうかより、身につけることを優先してください。 授業で取り上げたトピックや、グループワークの意見交換の内容は、期末までノート 10 ) などに記録しておくことを推奨します。 逆に授業に参加していないのに、WebClassの出席や提出だけの場合は不正行為として扱うことがあります。 平常の取り組みだけで、「到達目標を最低限達成している。成績区分:C」となります。 評点が60点に満たない場合は、不合格となります。 欠席した場合、課外報告書へ取り組むことで挽回してください。 出席が60%に満たない場合、課外報告書を提出しても、単位認定できません。


参考文献


QRコード
https://edu.yz.yamagata-u.ac.jp/Public/53202/_09/q_084.asp
名称: 教育用公開ウェブサービス
URL: 🔗 https://edu.yz.yamagata-u.ac.jp/
管理運用 山形大学 学術情報基盤センター

🏫 学問の自由 は、心の自由。 大学では、精神は自由であらねばならない。(松木健三)
名称:C1ラボラトリー
URL:🔗 https://c1.yz.yamagata-u.ac.jp/
管理運用
山形大学 工学部 化学・バイオ工学科 応用化学・化学工学コース
C1ラボラトリー ( 伊藤智博立花和宏 ) @ 米沢

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