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関係者(共同研究者) | 日野,賽 那,しやま |
AIBN由来の発生したDMPOアダクトのまとめ
【卒論】中~資は、2013年に、それまでの研究を過酸化ラジカル発生系の検討と抗酸化能評価法への応用というテーマで卒業論文としてまとめ、4種類の修飾されたシクロデキストリンを使って水溶液中でAIBNの溶解度を求めている.1)。
さいな,しやまらによる研究から得られた,DMSO溶液または水溶液中のAIBNの熱分解より発生させたROO・のDMPOアダクトのg値および超微細結合定数をまとめた2)3)4)5)6)。
g値7)は,DMSO溶媒および水溶媒中で,2.0059と一定の値を示した.超微細結合定数8)は,DMSO溶媒中で,A(N)=1.28~1.32mT, A(H)=0.86~0.89 mTであった.水溶媒中で,A(N)=1.33 mT, A(H)=0.87~0.97 mTであった.
抗酸化物質(抗酸化剤)は,微量で高い抗酸化作用を示すので,サプリメントなどで,ビタミンや抗酸化物質を大量に投与することはいかがなものだろか・・・・・おそらく,抗酸化物質が水分の多い生体内で,どの部位で,どの活性酸素種と反応すかを明らかにする必要があるだろう.もちろん,適切な処方も大切だ.
Royらの研究によるとAAPH,酸素,DMPOの熱分解反応で生成したスピンアダクトの質量分析による結果,最大m/zは,215.1であると述べている.9)最大分子量のサイズから,AAPHから発生できるラジカル種は,過酸化ラジカル(ROO・,LOO・)ではなくアルコキシルラジカル(RO・, LO・)の可能性が高い.AIBNは,過酸化ラジカルを発生できるラジカル開始剤であるが,水への溶解度は,0.035mg/100mL(@25℃)と小さい.
ヘプタキス(2‐O,6‐O‐ジメチル)‐β‐シクロデキストリン 10)によって溶解することで,水系で過酸化ラジカルを発生させるか?
日~介らは,AIBN由来のラジカル(2-シアノ-2-プロピルラジカル=R11))が酸素反応する速度が速く,ROO・またはRO・が生成する.酸素が存在する場合,DMPOは,DMPO-OOR・またはDMPO-OR・が発生し,酸素が存在しない場合,DMPO-R・が発生している可能性が高いこと示している.12)。
→ 酸素存在下では,過酸化ラジカルまたはアルコキシルラジカルである可能性が高い.
→ 文献値のR・と酸素の反応速度が10^(5)[/M/s]オーダーであることから,過酸化ラジカルを生成する可能性は,高い13).
【研究データ】
AIBN由来のラジカルのg値と超微細結合定数14)
【分子軌道計算の結果(溶媒効果とhfccの関係)】
SCRF=CPCM,水 ε=78.3553
A(H19)=0.872114 mT15)
SCRF=CPCM,DMSO ε=46.826
A(H19)=0.839722 mT16)
SCRF=CPCM,ベンゼン ε=2.2706
A(H19)=0.787011 mT17)
→ 溶媒の比誘電率が増加するにしたがって,hfccの値も増加する.
【関連化学特性&計算式】
DMPO-OOH
A(N)= 1.43 mT18)
A(H)(β)= 1.17 mT19)
A(H)(γ)= 0.125 mT20)
DMPOアダクトの不対電子の存在する軌道と水素原子の確度とhfccの関係21)
→ 生命科学者のための電子スピン共鳴入門のp.102の式には当てはまらないが,A(N), A(H)ともに,DMPO-OOC(CH3)CN・<DMPO-OOHの関係にある.
【DMPO-OR・22)の文献値23)】
A(N)=1.263 mT24)
A(β)(H)= 0.84 mT25)
A(γ)(H)= 0.185 mT26)
A(γ)(H)= 0.062 mT27)
→ 文献値と比較するとDMPO-OR・(2-シアノ-2-プロピルオキシル-DMPOアダクト)の可能性が高い.
t-BuOO-DMPO・は,ホモリシスを起こして,t-BuO・とDMPO-O・になることが予想されている28).分子軌道計算によって,DMPO-OOR・がDMPO-OとORに分離したこと29)も踏まえると,ホモリシスを起こして,分解することも予想される.
【関連ノート】
・AIBN + DMPO + DM-β-CD +H2O @ 90℃ のESR測定結果30)
・2-シアノ-2-プロピルラジカル/2-シアノ-2-プロピルパーオキシルルラジカルの分子軌道計算31)
・DMPO-2-シアノ-2-プロピルパーオキシルルラジカルの溶媒存在下での分子軌道計算32)
・AIBN由来のラジカルとDMPOおよび酸素の反応調査33)
・AIBN由来DMPOアダクトの分子軌道計算(hfcc)34)
【表】
量子計算によるAIBN由来生成ラジカルのDMPOアダクトの超微細結合定数35)
Aleksandra Bらは1984年にThe initiation properties of 2-cyano-2-propyl hydroperoxide in oxidation processesについて90度で,AIBNの分解から2-シアノ-2-プロピルパーオキサイドの生成速度定数koxは,1.7×10^5 [Ms]であると述べている.と述べており、AIBNの2次反応速度定数は、170000リットル毎モル毎秒であると述べている36)。
西暦 | 令和 | 🔷 平成 | 🔷 昭和 | 🔷 大正 | 🔷 明治 |
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2007 | R-11 | H19 | S82 | T96 | M140 |
2008 | R-10 | H20 | S83 | T97 | M141 |
2009 | R-9 | H21 | S84 | T98 | M142 |
2010 | R-8 | H22 | S85 | T99 | M143 |
2011 | R-7 | H23 | S86 | T100 | M144 |
2012 | R-6 | H24 | S87 | T101 | M145 |
2013 | R-5 | H25 | S88 | T102 | M146 |
2014 | R-4 | H26 | S89 | T103 | M147 |
2015 | R-3 | H27 | S90 | T104 | M148 |
2016 | R-2 | H28 | S91 | T105 | M149 |
2017 | R-1 | H29 | S92 | T106 | M150 |