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リチウム二次電池の正極集電体アルミニウム中の不純物が電池性能に及ぼす影響
K. Tachibana, T. Nishina, T. Endo and K. Matsuki
Department of Materials Science and Engineering, Yamagata University, Yonezawa, Yamagata,
992-8510, Japan
K. Tac,Impuri,196th 1)
緒言 リチウム二次電池の正極は高い電位に曝されるのでその集電体として弁金属であるアルミニウムが用いられる。アルミニウムは不働態化して表面に酸化皮膜を作る。この酸化皮膜は絶縁体として電解コンデンサに用いられている。集電体の役割は電池活物質への電流供給であるから、電気の良導体の方が良い。しかしそのために酸化皮膜を破壊することは腐食の促進を意味する。アルミニウム酸化皮膜の絶縁性と電気伝導性について導電助材である炭素と酸化皮膜の欠陥部が関係しそうなことがわかってきた。そこで酸化皮膜の欠陥部に影響を及ぼすと言われるアルミニウムに含まれる不純物がリチウム二次電池にどのような影響を及ぼすか検討した。
方法 正極活物質として、LiMn2O4 (三井金属鉱業 Lot.No=97055)を用いた。活物質30mgにアセチレンブラック(DENKA BLACK) 5mgを良く混ぜ、テフロン分散液(Du pont-Mitsui Fluorochemical 30-j)を一滴加えてめのう乳鉢上で良く混練し、ラバー状とし正極合剤とした。正極集電体として不純物を含むアルミニウム試料(Nippon Light Metal Companey, Ltd.)を直径8mmに打ち抜き、アルミニウムワイヤ(99.999% 0.5mmφ)をスポット溶接したものを用いた。この集電体に正極合剤を塗り込み、最後に治具を用いて、1ton/cm2、一分間でプレスし、180℃、4h真空乾燥して、試料電極とした。対極、参照極にはステンレスワイヤ(SUS304)にLi箔を圧着した電極を用いた。電解液にプロピレンカーボネイト(PC)と1,2-ジメトキシエタン(DME)(1:1の体積比)を溶媒とする1M 6弗化燐酸リチウムLiClO4および1M 4弗化硼酸リチウムLiBF4を用いた(三菱化学株式会社)。セルはアルゴンで満たされたグローブボックス(美和製作所 MDB-1K-O型(P))で組み立て密閉した。測定は25±0.5℃に保ったインキュベータ(SANYO MIR-152)で中で行い、+3.5V~+4.4V vs. Li/Li+ の電位範囲で、定電流(0.4mA/cm2=0.09C)充放電試験を行った。
結果 図1に高純度アルミニウム(99.999+%, Fe=0.45, Si=0.45, Cu=0.13 ppm)を集電体に用いた場合の充放電曲線を示す。LiBF4(図1b)の方がLiPF6(図1a)よりサイクル毎の劣化が顕著であり、ときとして全く充電できなくなる場合もあった。そのような場合はアルミニウム表面にピットらしき形状が観察され、腐食が進行したものと推測される。図2に銅を含むアルミニウム(Cu=99, Fe=7, Si=7, Mo<1, Pb=0.5, Mn, Mg, Zn, Ni, Cr, Ti, Ga, V, B <1 ppm)を集電体に用いた場合の充放電曲線を示す。銅を含む場合、電流反転時のIRドロップが大きくなる傾向がみられ、二段になるLiMn2O4の電位平坦部が不明瞭になる傾向があった。ときとしてIRドロップが極端に大きくなり全く充放電できなくなる場合もあった。反面、高純度アルミニウムを用いたときと較べて容量が増加し(図2a)、LiBF4を用いた場合 (図2b) ではサイクル毎の劣化を抑制する効果があった。銀は銅と類似の傾向が見られたが、コバルトやモリブデンではまた異なる傾向が見られた。
by 立花和宏