充電を短時間で済ませ、大電流を取り出せることはずっと期待され続けてきた。活物質の種類で高速性に差があるのか?それはなぜか?マンガン酸リチウムの高速性の本質の解明を目的とし、電池の内部抵抗の支配要因を解析するためのデータを収集した。
金線(φ= 0.3 mm)に高速マンガン酸リチウムを打ち込み、対極ステンレス板、参照極銀塩化銀電極、電解液に6M 硝酸リチウム水溶液を用いて3極式セルを作成した。作成したセルが1.0 V vs. AgCl | Ag、になるまで40μAを通電した。その後にセルの電位平坦部が観察されるように周波数、振幅を変えながら、ハイレートで矩形波を通電した。電位波形の観察にはデジタルオシロスコープを使った。また40μAのローレートで充放電しながら電流遮断による電位変化の観察を行った。電流遮断は、7.5秒通電、2.5秒遮断を繰り返した。水の分解を考慮し1.5V vs. AgCl | Ag以上に達したら、あるいは電位が急上昇したら電流を反転させた。その後電流値を変えて測定した。
3.結果と考察
Fig.1にハイレート充放電曲線を示す。周波数f=2.0 Hz、Ipp=5mAおいても電池反応と思われる電位平坦部が観察された。このことは、マンガン酸リチウムがCレート20000に追従することを意味する。充放電後にボルタモグラムで劣化状態を確認したところ、容量の減少は見られたが、活物質の破壊は見られなかった。
Fig.2にローレートで電流遮断を行ったときの充放電曲線を示す。内部抵抗は充放電深さにより異なった。このことは、内部抵抗の要因が溶液抵抗や接触抵抗ではなく、電荷移動抵抗や反応抵抗に支配されることを意味している。Fig.3にその様子を示す。
同じマンガン酸リチウムのサンプルの違いによって内部抵抗の挙動が異なっている。XRD等から結晶構造に大きな違いが無いことがわかっているので、内部抵抗の挙動の違いは、表面の電荷移動抵抗に起因するものではないかと推定している。