電池は材料開発が終わればそれで終わりというわけにはいかない。それぞれの材料がその機能を十分に発現できるよう、電池としてくみ上げる必要があるからである。実際に電極材料の塗布・乾燥プロセスが異なると、同じ材料を使っていても電池性能が全く異なってしまう。そこで本節では電極材料の塗布・塗布乾燥プロセスと電池性能にまつわる話題について議論する。 リチウムイオン二次電池の製造は、正極・負極それぞれに基材となる金属箔に合材スラリーを塗布・乾燥し、セパレータをはさんで巻き取り、電解液を含浸させた後、密閉して行われる。合材スラリーには、正極・負極の電池反応活物質ばかりではなく、導電助材、分散剤、結着材などが混練される。本来であれば活物質ひとつひとつに結線しなければならない電気回路を、塗布プロセスにおける自己組織化によって量産を可能にしているのである。 塗布する以上、流動性がなければならない。つまりレオロジー的性質が求められるのである。しかも活物質と炭素導電助材と二種類の固体粉末のスラリーであり、ともに十分に分散している必要がある。持ち歩きの面から電池の構成部材の固体化が期待されているものの、濡らすだけで界面の形成が可能な液体を電解質の使用は捨てがたい。 正極について言えば電池の活物質は酸化力を維持するための酸素原子、反応物質であるリチウム原子、そして価数を変化させながら酸素をつなぎとめておく遷移金属原子からなるセラミックスである。セラミックスは金属、ガラス、プラスチックスと違ってその形状の制御は困難であり、焼成粉砕後の現状有姿の粉体を使う場合がほとんどである。 スラリーを構成するための液体としてはNMPのような溶媒を使う。これは後に乾燥固着させるためのバインダーを溶解するためである。溶媒は乾燥によって最終的に除去されるがバインダーは電極内に残存するため、エネルギー密度の向上や内部抵抗の低減など様々な観点から最適な配合が検討されている。 やぎぬまは、2010年に、それまでの研究をリチウムイオン電池合材スラリーの最適化というテーマで修士論文としてまとめ、山形大学を卒業したリチウムイオン二次電池用バインダーおよび合材スラリーの評価法に関する研究1)。 バインダ…は、活物質2)と導電助材導電助材(導電助剤)3)を結着して合材4)としたり、合材と集電体集電体(集電子)5)を接着したりします。活物質や導電助材が凝集しないための高分子分…ことが知られているバインダ6)。 バインダと電子伝導の阻害…は、○柳沼雅章,…らは、2008年に大阪府堺市堺区戎島町4-45-1で開催された第49回電池討論会において炭素導電助材を含む電極におけるパーコレーション現象を用いたバインダの評価について報告してい…ことが知られているバインダと電子伝導の阻害7)。 バインダのイオン透過性…は、バインダは電解液で膨潤してイオンを透過するようです高分子電池8)。 【活物質に関する関係】 ○阿部智幸,…らは、2006年に同志社大学工学部(京田辺市多々羅都谷1-3)で開催さ…ことが知られているバインダのイオン透過性9)。 K. Tac…らは、1999年にハワイで開催された196th Meeting of the ECSにおいてアルミニウム集電体の純度と電池性能について述べる中で、バインダーが電池性能に及ぼす影響について報告しているImpurity Effect in Aluminum Cathode Current Collector on Charging/Discharging Performance of Lithium Secondary Battery10)。 松木健三、立…らは、2000年にリチウム二次電池の性能評価の標準化について報告し、…と述べているリチウム二次電池の性能評価の標準化11)。 松木健三、立…らは、1999年にLiMn2O4系に対する導電付与材、集電体&電解液の効果について報告し、リチウムイオン二次電池の正極活物質であるマンガン酸リチウム12)系の電池反応において導電付与材、集電体&電解液がどのような影響をおよぼすか検討した正極に LiMn2O4 を用いたリチウム二次電池の充放電挙動-集電体と電解液の組み合わせの影響-13)。 【関連…と述べているLiMn2O4系に対する導電付与材、集電体&電解液の効果14)。 立花和宏,松…らは、1997年にProposal for an accrate and rapid international electrochemical test for various battery materials using T-M cell(Part.1):Test results EMD in KOH and LiMn2O4 in organic electrolyteについて報告し、アルカリ乾電池に使われる電解二酸化マンガン(EMD)とリチウムイオン二次電池に使われるマンガン酸リチウム(LiMn2O4)の簡便で迅速な評価方法を開発した。 ツーソン【学会】ツーソン…と述べているProposal for an accrate and rapid international electrochemical test for various battery materials using T-M cell(Part.1):Test results EMD in KOH and LiMn2O4 in organic electrolyte15)。 ○立花和宏…らは、1997年に大阪豊中で開催された第38回電池討論会において一次電池および二次電池の充放電時における正極導電助材としての炭素材料の機能について報告している一次電池および二次電池の充放電時における正極導電助材としての炭素材料の機能16)。 活物質導電助材(導電助剤)合材集電体(集電子)バインダバインダと電子伝導の阻害バインダのイオン透過性Impurity Effect in Aluminum Cathode Current Collector on Charging/Discharging Performance of Lithium Secondary Battery正極に LiMn2O4 を用いたリチウム二次電池の充放電挙動-集電体と電解液の組み合わせの影響-【学会】ツーソン一次電池および二次電池の充放電時における正極導電助材としての炭素材料の機能(1) リチウムイオン二次電池用バインダーおよび合材スラリーの評価法に関する研究柳沼 雅章, 山形大学 物質化学工学科, 修士論文 (2010).>(2) 実験方法 > 材料&試 > 活物質,材料&試料仁科 辰夫,卒業研究(C1-電気化学, 講義ノート, (2006).>(3) 実験方法 > 材料&試 > カーボン > 導電助材(導電助剤),カーボン材料仁科 辰夫,卒業研究(C1-電気化学, 講義ノート, (2007).>(4) 実験方法 > 材料&試 > 合材,材料&試料仁科 辰夫,卒業研究(C1-電気化学, 講義ノート, (2007).>(5) 実験方法 > 材料&試 > 集電体(集電子),材料&試料仁科 辰夫,卒業研究(C1-電気化学, 講義ノート, (2007).>(6) 実験方法 > 材料&試 > ゴムとポ > バインダ,ゴムとポリマー仁科 辰夫,卒業研究(C1-電気化学, 講義ノート, (2006).>(7) 実験方法 > 材料&試 > ゴムとポ > バインダ > バインダ > バインダと電子伝導の阻害,バインダーの特性仁科 辰夫,卒業研究(C1-電気化学, 講義ノート, (2008).>(8) > 高分子電池芳尾真幸、小沢昭弥, リチウムイオン二次電池-材料と応用-第二版, 日刊工業新聞社, , (1996).>(9) 実験方法 > 材料&試 > ゴムとポ > バインダ > バインダ > バインダのイオン透過性,バインダーの特性仁科 辰夫,卒業研究(C1-電気化学, 講義ノート, (2008).>(10) Impurity Effect in Aluminum Cathode Current Collector on Charging/Discharging Performance of Lithium Secondary BatteryK. Tachibana, T. Nishina, T. Endo and K. Matuki,196th Meeting of the ECS講演要旨集 (1999).>(11) リチウム二次電池の性能評価の標準化松木健三、立花和宏、遠藤孝志、仁科辰夫, 山形大学紀要(工学), 26, No.1, p.25-32, (2000).>(12) マンガン酸リチウム, , LiMn2O4, = 180.8146 g/mol, (化学種).>(13) 正極に LiMn2O4 を用いたリチウム二次電池の充放電挙動-集電体と電解液の組み合わせの影響-○片倉英至,立花和宏,松木健三,第38回電池討論会講演要旨集 (1997).>(14) LiMn2O4系に対する導電付与材、集電体&電解液の効果松木 健三, 立花 和宏, マテリアルインテグレーション, Vol.12, N. pp.35-42, Vol.12, p.35, (1999).>(15) Proposal for an accrate and rapid international electrochemical test for various battery materials using T-M cell(Part.1):Test results EMD in KOH and LiMn2O4 in organic electrolyte立花和宏,松木健三,小沢昭弥, Progress in Batteries & Battery Materials, V.16, N.0, pp.322-331, (1997).>(16) 一次電池および二次電池の充放電時における正極導電助材としての炭素材料の機能○立花和宏,第38回電池討論会講演要旨集 (1997).>