1.緒言
Fig.1のように、負極側で析出した金属が二次電池のセパレーターを貫通してしまい起こる発火事故が相次いでいる。イオン化傾向の小さな金属が最初に析出することで、対極側から一番近く、イオンが移動するエネルギーが一番小さく済む最初の析出金属上に積み重なるように析出し棘状になる。その工程が繰り返され棘が伸びていきセパレーターを貫通してしまう。
そもそもこの異物金属は、工場配管に含まれている鉄がスラリー中の炭素によって削られ、混入してしまう。現在、異物金属の混入を防ぐシステムとして磁気を利用したものがある。しかしそのシステムは検出するものではなく、鉄が磁石につくことを利用し取り除くものだ。これではどこで混入したのか、取り除ききれたのかが把握できない。この異物金属の混入を検出することが出来れば、電池の発火事故を防ぐことができる。また、炭素が衝突し続けもろくなっている配管の発見にもつながる。
厚めのガラス瓶2個にそれぞれアセチレンブラックとN-メチルピロリドン (NMP)溶液、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)の混合スラリーを15g流し込んだ。片方には0.75wt%鉄粉0.1gを混ぜた。SUS430を20mm×30mmに切り抜いたものを電極ばさみにセットした。電極ばさみを厚紙に通し、電極間距離を35mmに固定した。この状態で高電圧をかけサーモカメラで発熱部位を観察した。
また、同じ条件でスラリーに電流を流し、テスターで電圧変化を観察した。
3.結果と考察
Fig.2にスラリーへ高電圧をかけた際の発熱のイメージを示す。溶液全体ではなく、電極間に発熱が見られた。鉄粉を含むスラリー、含まないスラリーともに徐々に温度が上昇した。
Fig.3のように電流が5mAを超えると電圧が低下した。鉄を加えたもの、加えていないものどちらも5mA以上電流を大きくしても電圧が低下する負性抵抗の特性が見られた。鉄を含むスラリーはより大きい負性抵抗として観察された。鉄を含まないスラリーは20mAで、鉄を含むスラリーは30mAで白煙を上げた。
参考文献
1) 伊藤知之, エネルギーデバイスに使われる非導電性材料の構造がその電気的性能に与える影響, 山形大学卒業論文, p13, (2014).