化学実験Ⅰのエネルギー化学分野は、2024年度より 化学実験Ⅱとして開講されます。
金属の腐食溶解現象を利用して、形状を作りこむことをエッチング加工と言います。
「で、今度はどうしろってわけ?」
だるそうに大樹が言った。
「とりあえず、簡単そうだからネームプレートの実験やるって言ったじゃん」
「そりゃそうだけどさ、ぜんっぜんわかんねーよ、これ。それにどーよ、あの院生の態度。」
「愚痴ってても仕方ないからやろうよ。えっと塩化鉄の水溶液作らなくちゃ」
大樹はしぶしぶ実験台の上のツールボックスからアルファベットのレタリングシールを取り出す。
「マスキング・・・?このシールはんのか?何でもいいの?」
「おいおい、カバーフィルムはがした?」
大樹が正樹の方に目をやると、こげ茶色の溶液をビーカーでかき混ぜている。
「これさ、塊が大きくてなかなか試薬びんから出てこないんだよね」
シャーレに移した塩化鉄の溶液にマスキングしたフィルムを浸す。
「これでいんだよね?」
「たぶん」
「
エッチング
はいろいろな工業製品に使われているよ。」
先生:「アルミニウムを塩化鉄につけるとどうなるか?」
Al | FeCl3
先生:「塩化鉄は当然、電離するから・・・」
FeCl3 ↔ Fe3+ + 3Cl-
先生:「3価の鉄は次の平衡に達して・・・」
Fe2+ ↔ Fe3+ + e- ( * )
先生:「これと競合して・・・」
Al ↔ Al3+ + 3e- ( * )
先生:「どっちの平衡反応の酸化還元電位が高いか?」
学生:「鉄イオンの平衡の方かな?」
先生:「そう!___V」
学生:「うわっ高っ!」
先生:「そう、だから鉄ばかりでなく銅までも腐食することができる」
【製品】メタリックなネームプレート
40wt%塩化第二鉄FeCl3水溶液を10mL調製し、さらに濃HClを1mL加えて腐食液とする。
Cu-PET、Fe-PET、Al-PETフィルムを適当な大きさに切り、PETフィルムにはカバーフィルムが貼り付いているので、紙やすりで磨き清浄な面を露出させ、ビニールテープを貼ってマスキングする。
残したい部分がエッチング液に触れなければいいので、ビニールテープのかわりにレタリングセットを使ってもよい。
また染色したAl-PETではそのままビニールテープでマスキングする。
マスキングを自分の好きな形(自分のイニシャルなど)を残して切り取る。着色していない場合はPET面から字が読み取れるように左右反転してマスキングすると美しく仕上がる。
マスキングされていない金属部分を腐食液で腐食溶解する。腐食液を水洗いし、マスキングを剥がして水洗いし、乾燥する。黒ラシャ紙を台紙にしてメタリックネームプレートを作成する。
突然激しい溶解が起きることがあるので、操作はドラフト内で行う。またPETフィルムは弾力があり、溶液を弾き飛ばすことがあるので保護眼鏡などを着用して実験する。
ピカッとさいえんす
フォトリソグラフィー
無機工業化学
マンガ本がなくなったら―印刷技術と半導体―
問1.身近なところにある錆,この錆を探して,その写真をJPEG形式の画像ファイルで提出してください.
問2.発見した錆びについて、予想される化学反応式を推測し、記しなさい。実験なので、化学反応式が一つとは限らない。複数の化学反応式を仮定してもよい。
問3.発見した錆について,錆を防ぐためにはどんな方法があるか調査し,文章で説明してください