緒言
リチウム二次電池の正極集電体に用いられるアルミニウムは、フッ素を含む有機電解液中で高電場機構により緻密なバリヤ皮膜を生成して不働態化する。この皮膜は電池の劣化を引き起こすアルミニウムの腐食や電解液の分解と密接な関係があり、皮膜のバリヤ性を向上させることで電池のサイクル特性の向上が期待できる。実際の電池製造プロセスでは、アルミニウム材料の選択、表面処理、正極合剤の塗布、ロールプレス、電解液の注入、化成といった工程からなる。ここでは正極集電体の不働態皮膜の性質と電池性能の関係を明らかにし、それぞれの工程における不働態皮膜の制御方法について検討した。
実験方法
電気化学測定として、電流絞込み時における漏れ電流を測定するために定電位法を用いた。試料極としてアルミニウム箔(多結晶性99.99%、厚み 0.1mm、電解コンデンサー用)の旗型電極(7mm×7mm)を用い、前処理としてアルカリ脱脂を行った。有機電解液として、1M LiBF4/PC+DME(50:50)及び1M LiPF6/PC+DME(50:50)(キシダ化学)を用いた。対極としてPt、参照極にAg擬似参照電極(+3.0V vs Li/Li+)を用いた。有機電解液系の電解セルの組み立ておよび電気化学測定は全てアルゴン置換グローブボックス中で行った。
また、電池性能を評価するために充放電試験を行った。集電体に上述のアルミニウム、活物質にLiMn2O4、導電助剤にアセチレンブラックを用いた。また、対極および参照極にはリチウム金属を用いた。
結果および考察
Fig.1にLiNO3を0ppm、300ppm、600ppm添加した1M LiBF4/ PC+DME溶液中で定電位(5V vs.Ag)保持したときのアルミニウムの不働態皮膜の漏れ電流の経時変化を示す。漏れ電流はLiNO3を添加しない試料に比べ、300ppm添加で約30%、600ppm添加で約60%減少した。また、それらの皮膜をXPSで表面分析した結果、電解液中のLiNO3の濃度が増加すると、生成する皮膜中の酸素の割合が増加することがわかった。これらのことから、LiNO3が酸素供与体として働き、生成する皮膜の絶縁性を向上させたと思われる。
Fig.2にLiNO3を添加した1M LiBF4/PC+DME溶液中でのLiMn2O4のサイクル毎の放電容量の減少を示す。電解液中のLiNO3の濃度が増加するに伴い放電容量が増加し、かつサイクル毎の容量減少が抑えられた。
他の要因についても種々検討した結果、皮膜の漏れ電流と電池のサイクル特性はよく対応していた。したがって、材料組成、表面処理(熱処理)、正極合材(バインダー中水分)、電解液(水分、LiNO3)などの工夫で集電体の不働態皮膜の絶縁性を向上させると、電池のサイクル特性が向上できることが明らかになった。
【学会】第41回電池討論会@愛知県名古屋市1)
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佐藤幸裕.
<a href='https://edu.yz.yamagata-u.ac.jp/developer/Asp/Youzan/Academic/@Meeting.asp?nMeetingID=70'>
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リチウム二次電池正極アルミニウム集電体の腐食抑制による電池サイクル特性の向上
</q></cite>
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第41回電池討論会, 名古屋.
2000.
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