第41回電池討論会, 日時:2000(平成12)年11月20日(月)~22日(水) 場所:名古屋国際会議場 (名古屋市熱田区熱田西町1-1).
1.緒言
リチウム二次電池は電力平準化デバイスとして更なるサイクル特性の向上が期待されている。その正極集電体には、電気伝導性、耐食性、加工性、軽量性、コストなどの視点からアルミニウムが用いられる。このアルミニウム集電体の腐食が、リチウム二次電池の劣化機構のひとつであると報告されている。しかし、アルミニウム集電体の腐食が電池反応にどのような影響を及ぼすのか報告している例はない。ここでは、クエン酸錯体浸漬法によるLiMn2O4薄層電極を用いて、アルミニウム集電体の不働態皮膜の破壊が、正極活物質反応のサイクル特性に及ぼす影響を検討する。
2.実験方法
LiNO3、Mn(NO3)2、クエン酸1水和物を混合し、少量の水に溶解し、集電体として金ワイヤ(φ0.3mm)を浸漬した。そのままロータリーエバポレータで70℃、1h蒸発し、強粘性の液体を得た。この液体を真空乾燥機(YAMATO DP22)で、真空乾燥し、フレーク状の中間体を経て、仮焼、本焼を行い、金ワイヤ上にLiMn2O4薄層電極を作成した。
次に作用極(集電体,1cm2)としてアルミニウムおよび金、対極に白金、参照極に銀を用い、未処理の電解液を定電流1mA, 30minでアノード分極し、試料電解液とした。それぞれの電解液についてTable1に示す。これらの電解液を、LiMn2O4薄層電極を作用極とし、対極に白金、参照極に銀を用いて、サイクリックボルタンメトリーおよび交流インピーダンス法で評価した。電解セルの組み立ておよび測定はAr置換グローブボックス中で行った。
3.結果と考察
Fig.1(a) にLiBF4中で測定した典型的なクエン酸錯体浸漬法によるLiMn2O4薄層電極のボルタモグラムを示す。クエン酸錯体の熱分解によって得られる活物質の粒径は非常に細かいので、100mVs-1という早い掃引速度でもLiMn2O4特有のダブルピークが観察できた。その結果、1時間ほどで数十サイクルの特性変化を追跡および評価できることがわかった。また、LiMn2O4薄層電極の集電体に用いた金は化学的に安定であり、電極に導電助剤やバインダを含まないので、電解液が活物質におよぼす影響を純粋に評価できる。
Fig.1(b) にアルミニウムを用いて1mA, 30min定電流アノード分極した電解液(Al/LiBF4)中で測定したFig.1(a)と同一のLiMn2O4薄層電極のボルタモグラムを示す。Fig.1(a)に比べてピーク電流が小さくなり、電池容量が急激に減損したことがわかる。さらに、この同一のLiMn2O4薄層電極を、再度未処理の電解液中で測定したところ、電池容量の復活はわずかであった。この結果より、電解液(Al/LiBF4)中のアノード分解生成物が、活物質容量の減損を招き、その減損は不可逆的であると考えられる。
Table 1 に種々のアノード分極処理を行った電解液を評価した結果をまとめて示す。LiClO4をアルミニウムでアノード電解した電解液からは、ICP分析の結果アルミニウムが検出された。またこの系とLiBF4に塩化アルミニウムを加えた系では、再度未処理の電解液中で活物質のボルタモグラムを測定したところ容量が若干回復した。しかし、LiBF4,LiPF6をアルミニウムでアノード分極した電解液やLiClO4をAuでアノード分極した電解液は、ICP分析ではアルミニウムが検出されなかったにもかかわらず、容量の回復はわずかであった。
フッ素を含む有機電解液中ではアルミニウムは高電場機構によって不働態化し、バリヤ皮膜を生成するが、その皮膜は水溶液系に比べて漏れ電流が大きい。その漏れ電流はアルミニウムのアノード溶解、電解質や溶媒の酸化分解などを引き起こし、その結果、電解液中に蓄積したアノード分解生成物が活物質の電池反応を阻害し、電池容量の減損を招くと考えられる。したがって、アルミニウム不働態皮膜の破壊を抑制することは、リチウム二次電池のサイクル特性を向上させるのに重要であると考えられる。
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立花和宏.
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リチウム電池正極アルミニウム集電体の腐食が正極活物質のサイクル特性に及ぼす影響
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第41回電池討論会, 名古屋国際会議場.
2000.
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