高速マンガン酸リチウムを使った電池の内部抵抗の支配要因. 第59回電池討論会, 大阪府立国際会議場(グランキューブ大阪). 2018.
キーワード[ 接触抵抗, 表面極性, 集電体, マンガン酸リチウム, アルミニウム ]
こんにちは!😄山形大学のノブが、「マンガン酸リチウム粒子の表面極性によるアルミニウム集電体との接触状態の変化」について発表させて頂きます。
電池は正極と負極と電解液で構成されます。 リチウムイオン電池の正極はマンガン酸リチウム等の活物質,アセチレンブラック等の炭素導電助剤,ポリフッ化ビニリデン等の バインダーをスラリー状に混ぜ、アルミニウムなどの集電体金属に塗布して作られます。 負極ではカーボンと,ポリフッ化ビニリデン等のバインダーをスラリー状にして金属集電体に塗布して作ります 1 ) 図に正極にマンガン酸リチウムを使用した時のリチウムイオン電池の反応の様子を示します。
正極では導電助剤が、集電体とマンガン酸リチウムまでの電子の導電パスを形成します。そして、マンガン酸リチウムは導電助剤と電解液が接触する場所でリチウムイオンの脱挿入反応が行われます。
リチウムイオンが抜けると充電し、リチウムイオンが入ると放電します。
負極ではリチウムイオンが、カーボン粒子内に入り充電し、リチウムイオンが抜けると放電します。 C6+Li++e-⇄C6Li
加藤は、誘電率の違うマンガン酸リチウムを変えたスラリーを作成し、アルミニウム箔に塗布して、 リチウムイオンを含まない電解液を使用したセルを組み立て、 周波数fcp=0.1Hz、Ic=2.0mAp-p矩形波電流を印加し、内部抵抗Riを算出しました 2 ) 。
極性の大きいマンガン酸リチウムの方が接触抵抗が大きくなりました。
マンガン酸リチウム | 接触抵抗 ( mΩm2) | ||
---|---|---|---|
高極性マンガン酸リチウム
(比誘電率εr=24) |
120 | ||
マンガン酸リチウム
(比誘電率εr=3.7) |
48 |
アルミニウムを正極集電体にすると、アルミニウムの酸化被膜とマンガン酸リチウムが接触し、接触抵抗が発生します。 接触抵抗は被膜抵抗と集中抵抗の和です。 集中抵抗はマンガン酸リチウムとアルミニウムの接触点で酸化被膜の破壊が起こり、 電流密度が他の部分より大きくなる事で発生する抵抗です。 被膜抵抗は 金属導体の表面に酸化膜などの皮膜が形成された場合、電流は皮膜を介して流れる。 皮膜の抵抗率は金属導体よりも一般的に大きく、この部分の抵抗を言います。 3 )
小野寺らは、アルミニウムの酸化被膜と電極合材との被膜抵抗は下の式で表されると述べています。活物質の誘電率が大きくなると、接触抵抗が大きくなります。 4 )
加藤らは、小野寺らの理論を掘り進め、表面処理を施したアルミニウム集電体を用いて、電極合材との接触抵抗の発現要因を論じて おり、炭素材料や相互拡散層で遮蔽することで、接触抵抗を低減できると述べています 5 )
西らは、マンガン酸リチウムを集電体で挟み、電解液とスラリーを使用しないセルを作成した。電解液とスラリーの影響を気にせずに、集電体とマンガン酸リチウムの相性が分かります。
6 ) 。西らが作成したセルの予想される等価回路図を示します。 セルにおける電気的特性を支配する主な要素は、4つと考えられます。 ひとつめは 集電体と粒子の接触抵抗Rcです。こちらは固体同士の点接触です。 点接触では圧力による接触状態の変化が、接触抵抗を変化すると予想されます。 ふたつめは 粒子と粒子の接触抵抗Rpです。固体同士の点接触です。 みっつめは 結晶と結晶の界面抵抗Riです。こちらはいわゆる結晶子どうしの面欠陥であり、面接触の接触抵抗と考えられる。 よっつめは マンガン酸リチウム結晶のバルクの電気抵抗Rbです。これはマンガン酸リチウムの電子伝導機構そのものに起因します。
集電体にアルミニウム箔、相互拡散箔、炭素担持箔、炭素コート箔を使用した。。 マンガン酸リチウムに、通常のマンガン酸リチウム(比誘電率:6~20)と高極性マンガン酸リチウム(比誘電率:15~80)を使った。
セロハンテープに皮ポンチ(Φ10)で穴をあけておきます。集電体を約1.5×1.5 cm2の大きさで切り出し、穴を開けたテープを張ります。 次に、集電体の上に活物質を載せ、集電体で挟みます。テープ部をしっかりと重ね合わせたら、余分な部分をはさみで切った。 最後に、穴が開いていて部分で、集電体とゼムクリップを当て、ゼムグリップを固定した。
作製したセルを画鋲が付いた洗濯ばさみで挟み圧力を加え、ゼムクリップを定電圧源に接続し、掃引速度100 mV/s、掃引範囲-5 V ∼+5 Vで、電圧-電流密度曲線を測定した。
測定した電圧-電流密度曲線の傾きから、抵抗の逆数であるコンダクタンスを求めました。そして、接触コンダクタンス G と電流密度 j の関係をプッロトし、G=aj+b の式で近似して、傾き a を算出した。
マンガン酸リチウムの電圧-電流密度曲線を図に示します。
アルミニウム箔の集電体では、電圧-電流密度曲線が S 字曲線になり、非直線性を示した。相互拡散箔や炭素担持箔、炭素コート箔の集電体では、電圧-電流密度曲線が直線になった。
アルミニウム箔の集電体では、電圧と電流密度の関係が S 字曲線になり、非直線性を示した。相互拡散箔や炭素担持箔、炭素コート箔の集電体では、木の葉型になった。
このことから、高極性マンガン酸リチウムは容量性があることが分かる。
2Vの時の各マンガン酸リチウムとアルミニウム箔と相互拡散箔の抵抗を表に纏めた。
アルミニウム箔使用した時、高極性マンガン酸リチウムとマンガン酸リチウムの面積当たりの抵抗に差は殆どなかった。 しかし、相互拡散箔使用した時は高極性マンガン酸リチウムの方が抵抗が大きかった。
集電体 |
マンガン酸リチウム との面積当たりの抵抗 MΩ·cm2 |
高極性マンガン酸リチウム との面積当たりの抵抗 MΩ·cm2 |
|
---|---|---|---|
アルミニウム | 1.7 | 1.5 | |
相互拡散箔 | 0.04 | 0.24 |
アルミニウムを集電体にした時の電圧-電流密度電圧曲線から 求めた接触コンダクタンスと電流密度の関係をプロットした図を示します。 コンダクタンスは、電流密度とともに増加した。
G とj の関係から傾きa を求めると、 マンガン酸リチウムでは、1.1 S/Aだった。 高極性マンガン酸リチウムでは1.2 S/A と傾きはほぼ同じだった。
この傾きから、アレニウスの式を使って、エネルギー障壁(eV)を推定してみませんか?
金属と半導体を接触すると、整流性が現れる場合と、整流性のないオーム性電電流が流れる場合がある。前者をショットキー接触,後者をオーミック接触と呼びます 7 ) 。
図に整流性が現れる電圧-電流密度曲線を示します。アルミニウムとマンガン酸リチウムは整流性と思われる曲線が現れたので、アルミニウムとマンガン酸リチウムはショットキー接触 と考えられる。 相互拡散箔や炭素担持箔やカーボンコート箔は電圧-電流密度曲線は直線になったので、オーミック接触すると考えられる。
図に集電体による電流の流れるイメージを示す。矢印は電流の様子です。 アルミニウムに表面処理を施したとき、接触抵抗は高極性マンガン酸リチウムの方がマンガン酸リチウムより大きい。 なので、接触抵抗は小野寺の式に従うので、マンガン酸リチウムとアルミニウムの接触抵抗は被膜抵抗に支配されており、
しかし、アルミニウムと電流密度とコンダクタンスの傾きでは高極性マンガン酸リチウムとマンガン酸リチウムの傾きは殆ど同じだった。 アルミニウムとマンガン酸リチウムの間の接触抵抗はショットキー接触が支配的と考えられる。
ご清聴ありがとうございました!😄
現在、世界中で日常的に使われているリチウムイオン電池。2019年10月、吉野彰先生(旭化成名誉フェロー)がノーベル化学賞を受賞することでより注目されるようになった。
リチウムイオン電池には正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO2)が使われることが多い。しかし、コバルトは貴重な物質であるためコバルト酸リチウムは安価ではない。そこで、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)を使えば、コバルトより性能は劣るが安価であるため、マンガン酸リチウムを使う中で良い条件を見つけることで、コストの良い電池を作ることができるのではないかと考えた。
リチウムイオン電池の正極活物質としてマンガン酸リチウムが用いられる場合、集電体と正極活物質との接触部分において次の化学反応がおこる。
LiMn2O4 ? Li+ + Mn2O4 + e-
伊藤らは、見かけの比誘電率の高いマンガン酸リチウムが、リチウムイオンの脱挿入がスムーズに行われ、高速性を示すと報告している[伊藤知之他7(2013)、電気化学会創立80周年記念大会,仙台]。
アルミニウムの0度における抵抗率は、2.50μΩcmと小さく[*]、 電池の充放電に伴うエネルギー損失の低減が期待できる。 また、アルミニウムは六フッ化リン酸イオンを含む電解液中で不動態化し[*]、 リチウムイオン電池の高い正極電位でのアノード分極にも耐えられる。 さらにアルミニウムのクラーク数は7.56であり[*]、 資源的にも豊富である。 その上、アルミニウムの密度は、2700kg/m3と小さく[*]、 電池を軽量化するのにも適している。 以上のような理由から、アルミニウムは リチウムイオン電池の正極集電体として用いられている。 しかし、アルミニウムはマンガン酸リチウムとの相性が良くないといわれている。 そのため、アルミニウムとマンガン酸リチウムとの相性を改善できるような材料の組成が特定できればより良い性能の製品を作り出せるかもしれない。
小野寺らによると粉体活物質を静電遮蔽することで、アルミニウム集電体被膜抵抗を低減できる理論を報告している[3-4]。 この報告によるとアルミニウム集電体被膜抵抗は、被膜に接触する材料の電気感受率とその寄与率で決まると述べられている。 加藤らは、小野寺らの理論を掘り進め、表面処理を施したアルミニウム集電体を用いて、電極合材との接触抵抗の発現要因を論じており、炭素材料や相互拡散層で遮蔽することで、電極材料との接触抵抗を低減できると述べている[5]。
兼子によると、マンガン酸リチウムの評価において、高速特性を示すマンガン酸リチウムのTN001に高電圧を印加すると集電体に関わらず電流値がある電圧で急増する傾向がある。 また、従来のマンガン酸リチウム(比較用マンガン酸リチウム)の場合、電圧と電流値がほぼ比例する傾向がある。[1]
電池の性能は、材料の物性だけではなく、その構成に左右される。 そのため、電池の性能評価だけから、マンガン酸リチウムの特徴を調べることは困難である。 そこで、本研究では、電池反応が高速なマンガン酸リチウムの物性の特徴を明らかにするため、 マンガン酸リチウムの粉体のみでの電気的特性の 評価を試みた.
Q.タイトルに、「マンガン酸リチウム粒子の表面極性」とありますが、それついて詳しく具体的に説明してください。
Q.タイトルに、「接触状態」とありますが、それついて詳しく具体的に説明してください。
Q.タイトルに、「マンガン酸リチウム粒子」とありますが、この発表での粒子の定義について詳しく具体的に説明してください。
Ic=2.0mAp-pの矩形波電流を印加し、電流反転時の直線的に降下した電位差ΔEを印加電流Ic=2.0mAp-pで割り、内部抵抗Riを算出しました。
Q.内部抵抗と接触抵抗の違いを具体的に説明してください。
比誘電率εr=24の活物質と未処理箔を用いたセルの接触抵抗は120 mΩm2、比誘電率εr=3.7の活物質と未処理箔を用いたセルの接触抵抗は48 mΩm2と比誘電率が大きい、マンガン酸リチウムの接触抵抗は大きくなった。
Q.接触抵抗は、密度や誘電率のように、材料固有の物性値ですか?
。活物質の誘電率が大きくなると、接触抵抗が大きくなります。
Q.誘電率と、タイトルの表面極性の関係を説明してください。
テープで固定した。同様の操作を繰り返し、両面にゼムグリップを固定した。 作製したセルを画鋲が付いた洗濯ばさみで挟み圧力を加えた。
Q.実験方法に圧力を加えたとありますが、具体的な圧力はいくらですか?また圧力と接触抵抗の関係は、どうなっていますか?
Q.実験方法に温度、湿度、気圧の記載がないようですが、具体的にそれらはいくらですか? 接触抵抗は、湿度の影響を受けやすいと思いますが、接触抵抗と温度、湿度の関係はどうなっていますか? とくに高湿では、結露による影響もあると思いますが、結露の影響はどうなっていますか?
Q.発表では、マンガン酸リチウムが取り上げられていますが、 リチウム電池活物質として、コバルト酸リチウムやニッケル酸リチウム、あるいは三元系などが使われてます。 それらの場合は、接触抵抗はどうなりますか?また、あえてマンガン酸リチウムを取り上げた理由はなんですか?
Q.使用したアルミニウム箔の表面の酸化皮膜は厚みと組成を教えてください。 また、表面の酸化皮膜は厚みと組成を変えると、接触抵抗はどう変わりますか?
Q.結論として、目的にある「接触状態の変化」は、どうなりましたか? また、目的に「接触抵抗を下げる方法」とありますが、結論として、それぞれのケースで接触抵抗はいくらだったのですか?
その接触抵抗は非直線性を示す。
Q.接触抵抗が、何に対して非直線性を示すのですか? そのグラフ(縦軸:接触抵抗、横軸:不明)はどこにありますか?
その非直線性は、活物質の表面極性には依存しない。
Q.表面極性が、説明されていません。 そのグラフ(縦軸:非直線性、横軸:活物質の表面極性)はどこにありますか?
Q:高速反応性を何故CVで測定したの?
Q:インピーダンスと高速反応性の関係性は?
A.p型n型の領域pが接触したときp領域とn領域のフェルミ準位が熱平衡状態に達して同じレベルに一致するまで、n領域の電子はp領域へ p領域の正孔はn領域へ拡散する。その結果遷移領域に電位障壁が形成される接触をショットキー接触。 電位障壁が無いのが、オーミック接触
A. 電極反応は反応物質の吸着,電子授与,結合の開裂などの複雑な粗反応を通って進み、その全てに活性化エネルギーがある 8 ) 。
赤間は、マンガン酸リチウムの活性化過電圧はホール濃度に支配されていると述べている。 9 )
接触抵抗が活性化過電圧に依存し、ショットキー障壁はホール濃度に依存するので、接触抵抗はショットキー障壁に依存する
A.アルミニウムの電圧ー電流密度曲線から、電圧が抵抗によって変わっています。集中抵抗が支配的になったら、電圧ー電流密度曲線はオーミック接触すると 考えられる。
加藤、が使った電解液は1M の4フッ化ホウ酸テトラエチルアンモニウム/炭酸プロピレン溶液
高速マンガン酸リチウムを使った電池の内部抵抗の支配要因. 第59回電池討論会, 大阪府立国際会議場(グランキューブ大阪). 2018.
図にサイクリックボルタモグラムを示す。 高速マンガン酸リチウムは点線、比較用マンガン酸リチウムを実線で示す。アルミニウムの表面に相互拡散処理効果を施した事により抵抗が低くなったのが分かる。 集電体に未処理のAl箔を使用して、高速マンガン酸リチウムと比較用マンガン酸リチウムを挟みこんだセルの電流値は、 5Vの電圧で、高速マンガン酸リチウムが、38μA, 比較用マンガン酸リチウムが28μAであった。一方, 集電体に、Al b箔を使用したセルの電流値は、 5Vの電圧で、高速マンガン酸リチウムが、1サイクル目が442μA, 2サイクル目が500 μA,比較用マンガン酸リチウムの1サイクル目が410μA,2サイクル目が360μAだった。 Al箔を集電体に使用したセルのコンダクタンスGは、高速マンガン酸リチウムが7.6μS, 比較用マンガン酸リチウムが5.6μSであった。Al b箔を集電体に使用したセルのコンダクタンスGは、高速マンガン酸リチウムが88μS, 比較用マンガン酸リチウムが82μSだった。
図に5Vの定電圧で印加した時のクロノアンペログラムを示す。長時間印加すると高速マンガン酸リチウムは比較用マンガン酸リチウムに比べて抵抗が大きくなった。。高速マンガン酸リチウムをb箔で挟んだセルは、印加直後の電圧は1400μAだったが、最後は19μAになった。一方、比較用マンガン酸リチウムをb箔で挟んだセルは、印加直後は347μAで緩やかに上昇していたが、1080s後に電流値が下がった。その後上昇や下降を繰り返し、最後は243μAになった。