9月21日は、宇部フイルム株式会社小野田工場にてラミネートフィルム製造工程の工場見学と実地調査を行った。ラミネートフィルムは、Li電池の技術のなかでは、セパレータやフレキシブル・パックに使用される外装材として使われ、Li電池の安全性、高性能化、寿命に関係する重要な周辺基盤技術である。安全性に関しては、セパレータと外装材が関係し、セパレータの熱収縮による内部ショートの発生とそれに起因する発火事故に直接関係し、外装材は電解液の漏洩による事故や水分の電池内部への拡散などによる寿命低下に直接関係する。特に最近、フレキシブル・パックのリード・タブ・シール部の接着強度不足による電解液の漏れが電池業界でも大きな問題となっており、とあるメーカは中国の大手ユーザ(BYD社か？)から6,500万円の損害賠償請求を受けているという噂も耳にしている。 ラミネートフィルム自体は電池ばかりでなく、食品包装等の一般民生用途も広く、重要な基本技術である。このような一般民生用途が多いためか、ラミネートフィルム事業はコストダウン競争が激しく、事業も大変だとのことである。工場自体は、Li電池関係ばかりでなく、食品包装関係も多いため、工場全体がセミ・クリーンルーム化されており、埃・塵・虫の混入を極力嫌う工場となっていた。フィルムは異種材料の多層ラミネートとなっており、工程の最初で異種材料を同時に押し出し積層し、エアーブローによる延伸を経て薄膜化されていく。ガラスを膨らませて作る風鈴やコップと基本的には似たようなエアーブローによる延伸であるが、これを連続的に行っているのである。このままでは袋状になっており、折り曲げて2枚重ねの状態にする。その両端をスリッターでカットして2枚重ねのフィルムを引き剥がし、これを最終的には2mほどの幅のロール2本分を同時に巻き取ることになる。このときのプラスティックの結晶状態の制御が、セパレータの多孔化等に効いてくる。この条件をちゃんと把握しておくのも、電池作りに必要な重要な周辺技術のひとつなのである。 ラップフィルムは、基本的にはガス透過性のない塩ビ系のフィルムを使い、冷蔵庫内での臭いの充満を防ぐものだと思っていたが、ダイオキシンの関係で嫌われて以来、PE系が増えている。宇部フィルムも例外ではなく、PE系のラップフィルムを作っていた。その謳い文句が秀逸だった。「ガス透過性に優れたラップフィルムです」。うーむ、電子レンジで暖めたときに発生する水蒸気が簡単に逃げてくれるラップフィルムねぇ。これは、欠点を利点に代える逆転の発想だな。苦し紛れの宣伝文句なのだろうけど、環境問題のこともあり、生協へのウケが良いというのは、ビジネス戦略として正解とも言える。しかし、外装箱は無味乾燥すぎる。消費者になるほどと思わせる工夫が外装箱には必要だ。このように使うと便利というレシピを外装箱に印刷すると良いのではという提案をこちらからさせていただいた。他には、消費者受けが良いようにということで、ラップフィルム自体にキティちゃんの印刷をしたいということであった。印刷による高付加価値化は、商品の差別化としてよく使う手である。しかし、工程のどこで印刷するかが問題になる。これは、アルミラミネートフィルムへの印刷（ハイチュウ等）とは異なり、印刷後に延伸するとなると、技術的にとても難しい。きっと、宇部フィルムさんは、この問題も現状の工程をそれほど大きく変更することなく、小規模の工程変更程度で解決してしまうに違いない。難波社長なら、それもやってのけられると思う。しかし、難波社長は工程を隅々まで知っておられるようで驚いた。これは、とある別の会社の工場見学をしたときにも感じたことだが、工場長よりも社長のほうが良く工程を理解していて、質問にも間髪入れずに答えが返ってくるところは、営業成績が伸びていくようだ。難波社長も、そのときの会社の社長に似ていると感じた。だからといっては単純すぎますが、きっと営業成績が伸びていくと思います。
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