創業当時、造幣寮では金銀の分離精製や貨幣円形(えんぎょう)の洗浄に多量の硫酸を必要とし、これを自給するため、1872年(明治5)イギリス人の硫酸製造技師フィンチや鉛職工を雇い入れ、硫酸製造所を開設し、硫酸の製造を開始しました。
最初は鉛室(えんしつ)2、硫酸焚焼釜(ふんしょうがま)12基、蒸発室1棟を建て、1日におよそ5トンあまりを製造していました。その後、年々需要量が増加してきた(局外の需要にも応じ、中国大陸へも輸出していました)ので、1876年(明治9)に蒸発室1棟、1881年には鉛室を増築する一方、同年にはソーダ製造所を開設し、硝酸、塩酸、アンモニア、硫酸ソーダ、苛性ソーダなどの化学薬品も製造されるようになりました。ところが各地に硫酸製造工場や硫酸ソーダなどの化学薬品が国内で調達できるようになってきたため、1885年(明治18)に製造を取り止め、全面的に民間に委ねることになりました。
模型のソーダ塩、粗製ソーダ、硫酸ソーダ製造設備は、当時、化学の大家と仰がれた宇都宮三郎の設計・監督により制作されたものです。当時は、図面により設備を作る技術が発達していなかったので、まずこのような模型を作り、これを基にして建物が建設されました。
【関連講義】
1873年大阪造幣寮で日産5トンの鉛室法硫酸が製造された。
1881年大阪造幣局でカセイソーダの工業的製造が始まった。
【取材日】
【関連講義】
【関連書籍】
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. 講談社サイエンティフィク, 2004. p.1. - (10) 野村正勝・鈴鹿輝男.
最新工業化学―持続的社会に向けて―
. 講談社サイエンティフィク, 2004. p.2.