ニオブアノード酸化皮膜の絶縁特性に及ぼす熱処理雰囲気の影響.2003年電気化学秋季大会,札幌,(2003/09/11).
坂本1)や岡田2)の論文をもとに研究しました。
伊藤晋,立花…らは、2003年に福島県立医科大学(福島市光が丘1)で開催された化学系9学協会連合東北地方大会においてニオブコンデンサ用固体電解質のニオブアノード酸化皮膜への最適塗布条件について報告している3)。
ニオブはタンタル電解コンデンサに替わる材料として注目されている。実際のコンデンサでは固体電解質であるカソード材料が接触していて、接触界面が存在している。今までにカソード材料を接触させない状態でのニオブアノード酸化皮膜の特性に及ぼす熱処理などが検討されてきた。1),2)そこで、雰囲気を変え熱処理を行ったニオブアノード酸化皮膜にカソード材料を接触させたときの絶縁特性を検討した。
2、実験方法
ニオブワイヤー(日本ケミコン提供、純度99.9% φ0.30mm)を13cmに切り10cmを渦巻き形状に巻き、3cmを柄とし、約φ0.7mmの円形電極(電極面積:0.8cm2)を作成した。円形電極を前処理としてアルカリ脱脂を行い、電気炉を用いてHe、CO2、Ar+H2 の雰囲気中で1000℃、1h熱処理を行った。また、円形電極を20wt%リン酸中において電流密度10A/m2で20Vまでアノード酸化後、1h保持して試料とし、二酸化マンガンを塗布して試料極とした。塗布方法として、圧着、ディップコーティング、熱分解を行った。対極にPt、参照極にはAg/AgClを用いて三極式セルを組み立て、試料極を20wt%リン酸中においてサイクリックボルタンメトリー(電流―電位曲線)とクロノアンペロメトリー(電流―時間曲線)で評価した。前者は電位掃引速度を0.1V/sec、後者は電位ステップを5Vとした。
絶縁特性の評価方法として、サイクリックボルタモグラム(図1参照)の2サイクル目における自然電位から15Vまでの電位と電流との勾配(電位比例電流成分)を漏れ電流勾配として、漏れ電流勾配の小ささで絶縁特性を評価した。また、クロノアンペログラムの150s後あたりから電流値が一定となるので、その時の電流値を漏れ電流として、漏れ電流の小ささでも絶縁特性を評価した。
図1 CVの模式図
3、結果
表1 雰囲気を変え熱処理を行ったニオブ(MnO2圧着)の漏れ電流勾配
熱処理なし
[μA/V] He熱処理
[μA/V] CO2熱処理
[μA/V] Ar+H2熱処理
[μA/V]
MnO2圧着 3.2±0.7 2.7±0.4 9.1±2.5 1.2
表2 He雰囲気中で熱処理を行ったニオブ(MnO2接触)の漏れ電流
MnO2圧着
[μA] MnO2ディップコーティング
[μA] MnO2熱分解
[μA]
熱処理なし 5.0 1.3 17
He熱処理 5.7 1.0 75
表1より、He雰囲気中で熱処理を行うことによりMnO2を圧着した二オブの漏れ電流勾配が小さくなった。また、表2より、He雰囲気中で熱処理を行うことによりMnO2をディップコーティングしたニオブの漏れ電流が減少し、絶縁特性が改善した。
4、参考文献
1)大館広和、阿相英孝、小野幸子、2002年電気化学秋季大会講演要旨集、p.160(2002).
2)K.Kovacs,G.Kiss,M.Stenzel,and H.Zillgen,
JournalofTheElectrochemicalSociety,150(8),B361-B366(2003)
ニオブはタンタル電解コンデンサに替わる材料として注目されてきた。しかしタンタルコンデンサほど漏れ電流を低減することができなかった。ニオブのアノード酸化皮膜の熱処理などがリン酸水溶液中での漏れ電流とともに検討されてきた。しかし実際のコンデンサでは固体電解質であるカソード材料が接触している。そこで雰囲気を変えて熱処理をしたニオブアノード酸化皮膜の絶縁特性を検討した4)。
ニオブ5)
●2003年度(平成15年度)卒業研究6)
田中7)の卒業論文にも引用されています。
http://syllabus-…
…らは、2004年に特許出願2004-56767:ニオブを用いた固体電解コンデンサについて報告し、(54)【発明の名称】ニオブを用いた固体電解コンデンサ バルブメタルとしてニオブを用いてなる固体電解コンデンサにおいて、化成酸化皮膜にカソード材料として炭素を圧着し、これをアノードとして…と述べている8)。