先のアルミニウム集電体に導電性高分子を塗布したら,電池の内部抵抗が小さくなるだろうか.そうではない.空間電荷層が形成されて,電気抵抗が大きくなるのである.では,それは蓄電デバイスに使えないのだろうか.それもまた違う.むしろその電気抵抗の大きさを利用してコンデンサに使えるのである.
アルミニウムの表面に存在する酸化アルミニウムを誘電体とし,カソード材料として導電性高分子(PEDOT/PSS)を使ったのが導電性高分子固体アルミ電解コンデンサである.カソード材料が従来の電解液ではないため,使用温度範囲が広いなどに加えて,高周波領域での等価直列抵抗(ESR)が小さく熱損失が少ないという特性を持つ.
そういうことなら導電性高分子は,さぞ電気が流れるであろうと思いきや,導電性高分子分散液をそのまま乾燥してフィルムにし,テスターで電気抵抗を測ると数MΩの値を示す.導電性高分子は直流を流さないのである.
実際にコンデンサとして使われる交流での挙動はどうであろうか.100 Hzぐらいの周波数での交流インピーダンスは直流での測定より小さくなる.100 kHzの交流インピーダンスになると交流インピーダンスは,さらに小さくなる.そこにはかなりの容量成分が含まれる.高周波領域では等価直列抵抗(ESR)が小さくなるが,結局のところ導電性高分子は導電性とは言いがたい.
一般に導電性高分子には導電性を向上させる添加剤が含まれる.添加剤は共有結合化合物であり,それ自身の電子伝導は見込めない.フィルムにした導電性高分子材料に添加剤を浸透させて,テスターで電気抵抗を測ると数MΩから数百kΩにまで低下する. 添加剤の浸透による電気抵抗の低下は高周波領域でより顕著になる.高分子材料も有機分子材料も共有結合化合物で教科書的には電気を流さない.そのふたつが作用しあうと電気を流すとはいかなることか.
Fig. 7に導電性高分子に添加剤を滴下した直後のインピーダンスの時間変化を示す. マーカーの違いは同一条件で作成した異なるセルを示す. 導電性高分子に添加剤を滴下する前はおよそ2000 Ωのインピーダンスを示したが,添加剤を滴下した瞬間にインピーダンスが劇的に指数関数的に減少した.120秒後のインピーダンスは導電性高分子の種類によらず,20 Ωであった.