アルミ電解コンデンサとリチウムイオン二次電池 アルミ電解コンデンサ?有機電解液=微量な水分で修復 アルミニウムはアジピン酸アンモニウム1)などの水溶液中でアノード酸化したとき緻密なバリア型の不働態皮膜を生成するバルブメタルとして知られている2)。一般に水溶液中におけるアルミニウムのアノード酸化は次のような反応で進行し、Al2O3の酸化皮膜を生成する。このときアルミニウムは溶媒の水を酸化物イオンの供給源としている。 2Al + 3H2O → Al2O3 + 6H+ +6e-2) 3) リチウムイオン二次電池などに使われる有機電解液は非水材料であり、水溶液とちがって酸化物を形成するための酸化物イオンの供給源がない。有機電解液中で生成した不働態皮膜を分析したところフッ素を多く含んでいた。また表 1に示すように有機電解液中でのアルミニウムの不働態化は水溶液中同様に高電場機構に従っていたが、それらの速度論的パラメータは水溶液中の値とは大きく異なっていた。またアルミニウムが非水材料で不働態化するのはLiBF4、LiPF6、などの電解質を用いたときに限定され、イミド塩などでは不働態化しない。これらのことを考慮すると、アルミニウムはLiBF4、LiPF6、(C2H5)4NBF4などのフッ素系アニオンからなる電解質を含む有機電解中で、次のような反応により不働態化が進行し耐食性が与えられると考えられる。 Al + 3BF4- → AlF3 +3BF3 + 3e- …(3) Al + 3PF6- → AlF3 +3PF5 + 3e- …(4) 表 1 種々の電解液中でアルミニウムをアノード酸化する際の高電場機構パラメータ 1M LiBF4 1M LiPF6 水溶液系. A [A・m-2] 1.75×10-11 0.88×10-11 2.6×10-28 B [m・V-1] 4.71×10-8 4.75×10-8 8.87×10-8 K [m3・C-1] 1.86×10-10 1.86×10-10 5.7×10-11 [nm・V-1] 1.74×10-9 1.71×10-9 1.35×10-9 (1) アジピン酸アンモニウム, , NH4OOC(CH2)4COONH4, FW = 180.20404 g/mol, (化学種).(2)   3 + 2H2O =   Al2O3 + 6H+ + 6e-, ?, (反応-477).(3) リチウム電池駆動用電解液中におけるアルミニウムの不働態化立花和宏、佐藤幸裕、仁科辰夫、遠藤孝志、松木健三、小野幸子, Electrochemistry, Vol. 69, No.9, pp.670-680, (2001).