LiBF4中で1 mA・cm-2, 40秒 (= 40 mC・cm-2)、アノード分極して生成した皮膜の断面写真を示す。厚さの精度にはまだ検討の余地があるが、この試料では、アルミニウムをシュウ酸中や硫酸中でアノード酸化したときのような規則構造は見られず、電気化学的測定結果より推察されたように緻密なバリヤ皮膜であった。到達電位20V に対する厚みは約35nmであり、アノダイジングレシオは約1.75nm・V-1であった。この値が一般に知られている値1.3~1.4nm・V-1より大きいことについては、さらなる検討を要すると思われるが、後述のようにAlOx/2F3-xの密度はAl2O3に比べて小さいことと関係すると思われる。また、この試料の到達電位が図 3-1に比べて低いのはアノード分極時の電解液中の水分量が若干多かったためと考えられる。試料表面は凹凸があり、皮膜が剥離したり割れたりした個所があるが、これは超薄切片(20-30nm)の作製時にできたと思われる。また電子線の照射によって皮膜が損傷する様子が観察され、XPSやGD-OES(グロー放電発光分光分析法)などからも皮膜内部にBF4-やPF6-のアニオンや溶媒由来の有機物が取り込まれている可能性があった。 1)アルミニウムの有機電解液でのアノード分極,バルブメタルの有機電解液でのアノード分極立花 和宏, 非水カソード材料とアルミ, 講義ノート, (2006).(1) アルミニウムの有機電解液でのアノード分極,バルブメタルの有機電解液でのアノード分極立花 和宏, 非水カソード材料とアルミ, 講義ノート, (2006).