アルミニウムはアジピン酸アンモニウムなどの水溶液中でアノード酸化したとき緻密なバリア型の不働態皮膜を生成するバルブメタルとして知られている2)。一般に水溶液中におけるアルミニウムのアノード酸化は次のような反応で進行し、Al2O3の酸化皮膜を生成する。このときアルミニウムは溶媒の水を酸化物イオンの供給源としている。 アルミニウムのアノード酸化1) このようなアルミニウムをはじめとするバルブメタルのアノード酸化に関する研究は古くからあり、それらの要点は不働態皮膜中を横切るイオン電流密度jと皮膜に印加される高電場eとが非線形な関係にあるということで、それに類した理論は高電場機構と呼ばれている。そのもっとも典型的な関係として(2)式を示したのがA. GunterschulzeとH. Betzであり、1934年のことである2)。 非水溶媒中でのアルミニウムのブレークダウン電圧の挙動としてLiBF4、LiPF6、(C2H5)4NBF4でのクロノポテンショグラムを図 1に示す。水溶液中でアノード酸化した場合と同様に直線的な電位上昇が確認されるが、その上昇速度は酢水溶液より急激である。ブレークダウン電圧はLiBF4で38V、LiPF6で19Vと水溶液系よりかなり低い。また(C2H5)4NBF4でわかるようにカチオンの種類はあまり影響を与えない。なおこのブレークダウン電圧は有機電解液中の水分濃度とともに上昇し、約1200ppmの水分を含むLiBF4で58Vとなり、その後の水分増加に対しては頭打ちとなる。 BMIBF4中でのアルミニウムのブレークダウン3) 第70回ARS例会4)BMIBF4中でのアルミニウムのブレークダウン, グラフ.(1)   3Al + 2H2O =   Al2O3 + 6H+ + 6e-, ?, (反応-477).(2) 電流密度は電場強度の指数に比例(高電場機構)A. Gunterschulze, H. Betz, Journal Full.(1934).(3) BMIBF4中でのアルミニウムのブレークダウン, グラフ.(4) 第70回ARS例会, 会議.