黒澤らはNMCやコバルト酸リチウムを使用したリチウムイオン二次電池の正極を使用し,負極に亜鉛を使用することで水溶液中で2Vを超える起電力を持つ2V級水系リチウム電池を実現できると報告している.
下記の3つの電池式のセルを組み,OCVから2.2V(または2.5V)までLSV測定を行った.
1. Au|6M LiNO3aq|Zn vs. Ag/AgCl
2. Au|NMC|6M LiNO3aq|Zn vs. Ag/AgCl
3. Au|NMC|PVDF|6M LiNO3aq|SUS vs. Ag/AgCl
1のセルでは,2.0V付近から電流が立ち上がり,水の分解に伴う電流の上昇が観察され,2.2Vでは10mA程度の電流がながれ,金電極表面には気泡が観察された.
2のセルでは,0.6V付近からリチウムイオンの脱離に伴う0.1~1.0mAの観察され,1.8V付近から水の分解に伴う電流の上昇が観察され,2.2Vでは10mA程度の電流がながれた.
3のPVDFを塗ったセルでは,0.6V付近からリチウムイオンの脱離に伴う電流上昇が観測され,1.5V付近で3.0mAのピーク電流が観察され,1.8Vから,水の分解に伴う電流の再上昇が観察された.2.2Vでは,6.0mAの電流がながれた.
これらの結果から,2V級水系リチウム電池ではバインダとして,PVDFが最適であり,PVDFがLiイオンを選択的に通すゲル電解質のような働きをしている可能性がある.また,水の分解反応は,1のセルと2または3のセルの水の分解反応の電位が異なることから,NMCを打ち込んだ電極では,NMCと金,および電解液の三層界面で
起きている可能性が高い.