リチウムイオン二次電池負極材料としての精米副産物焼成炭
(山形大工*1,山形大院理工*2)立花和宏*1,○星野大助*2,仁科辰夫*2,遠藤孝志*1,尾形健明*1
Rice milling by-product derived Carbonaceous Materials as an Anodes for Lithium Ion Secondary Batteries
K. Tachibana, D. Hoshino, T. Nishina, T. Endo, T.Ogata (Yamagata Univ.)
まず緒言①といたしまして、リチウムイオン二次電池の動作原理を説明させていただきます。 1991年に,リチウム金属系負極に代わって,リチウムイオンを吸蔵放出する炭素材料を負極に用いたリチウムイオン二次電池が発表されました。 負極と正極では図1の下方に示される反応がおこり
緒言③はSi/C複合材料について説明いたします。シリコン(Si)系材料は容量が高く、放電電位の低い優れた材料として注目されてきましたが、Siは充放電時の体積膨張収縮率が大きくサイクル特性に問題がありました。また、 Si/C複合材料の研究では黒鉛系よりも高容量、かつ80%の良好なサイクル特性が報告されています。
次に緒言④といたしまして、新規天然系前駆体に注目した研究について説明いたします。これまでに、リチウムイオン二次電池の負極材として用いられる難黒鉛化性炭素材料の前駆体として、珈琲豆と竹を使用したものが報告されています。珈琲豆焼成炭では放電容量510mAh/g , 充電容量570mAh/gが報告されており、竹焼成炭では放電容量は600mAh/gを超え、実電池の負極に適用した際に重要であるリチウム電位付近のフラットな電位容量も400mAh/g得られていることが報告されています。どちらも黒鉛系の理論容量372mA/gを上回るものです。
1. 緒言および目的
1991年に,リチウム金属系負極に代わって,リチウムイオンを吸蔵放出する炭素材料を負極に用いたリチウムイオン二次電池が発表された1)。その後,更なる高容量化を目指してSi/C複合材料の研究が行われ,多孔質Si/C複合材料の研究では800~1000mAh/gの高容量が得られることが報告されている2)。片や環境への配慮から,珈琲豆焼成炭の研究が行われ,充放電容量510/570mAh/g ,充放電効率89.4%が報告されている3)。また,籾殻は国内において年間290万t廃棄されている精米副産物であり,籾殻を負極材として利用することができれば,安価で入手できるため,生産コストを削減できることが期待できる。そこで,本研究では,籾殻焼成材料の粒径の違いが充放電効率に与える影響を評価した。
2. 実験方法
籾殻をフェノール樹脂と混合し,窒素雰囲気下900℃で3時間焼成させ,粉砕し,精米副産物焼成炭(RHS)を得た。本報告には,これをさらに粉砕させて,平均粒径が10μmと1.5μmの試料(RHS-10,RHS-1.5)を使用した。バインダーとしてKFポリマー(呉羽化学,#1120)を用いて、試料と混練し,銅メッシュ (φ8mm、厚み0.11mm)に圧着して,180℃4時間真空乾燥し,試料電極とした。対極,参照極に金属リチウム,電解液に1M LiPF6/EC+DEC(1:1)を用い,3電極式の電解セルを作製した。測定は掃引速度0.1mV/sec,掃引範囲0.002~2V(vs. Li/Li+)でサイクリックボルタンメトリー(CV)を行い,電流密度0.2mA/cm2,カットオフ電位0.002~2V(vs. Li/Li+)で定電流充放電試験を行った。
3. 結果および考察
Fig.1から,RHS-10では,カソード電流の最大値は0.002V(vs. Li/Li+)
で2.5mA,アノード電流の最大値は0.7V(vs. Li/Li+)で0.5mAであった。RHS-1.5ではカソード電流の最大値は0.6V(vs. Li/Li+)で2.5mA,アノード電流の最大値は1.1 V(vs. Li/Li+)で0.5mAであった。Fig.2から,RHS-10では,充電容量は325mAh/g,放電容量は27mAh/gで,充放電効率は約8%であった。RHS-1.5では,充電容量は340mAh/g,放電容量は53mAh/gで,充放電効率は約15%であった。粒径の小さいRHS-1.5の方が充放電効率において優れていると思われる。
参考文献
1)  David Linden,Handbook of Batteries [Second Edition],p.787 (1996).
2)  山田將之,夏永姚,上田篤司,青山茂夫,第44回電池討論会講演要旨集,1D12,pp.450~451 (1999).
3)  山田心一郎,井本浩,世界考二,谷崎博章,永峰政幸,電気化学秋季大会講演要旨集,2A03,p.15 (1997).