図1に高純度Al集電体を用いたときの充放電曲線を示す。また図2に不純物としてCuを含むAl集電体を用いた場合の充放電曲線を示す。Cuを含むAl集電体を用いた場合、容量が増加した。またサイクル毎の容量減損も抑制された。しかし、電位反転時のiR降下が大きくなり、電位平坦部が不明瞭になった。このような効果はAgを含むAl集電体を用いた場合にも見られた。CoやMoを不純物として含むAl集電体を用いた場合も、容量の増加やサイクル毎の容量減損の抑制が見られたが、含有する不純物金属元素によってそれぞれ特有の挙動が現れた。また容量増加の効果は、結着材として水分を含まないPVDF/NMPを用いた場合よりも水分を含むTEFLON分散液を用いた場合の方が顕著であった。しかしTEFLON分散液を用いた場合サイクル毎の容量減損が認められた。そこでPVDF/NMPに微量の水分を添加したところ、容量増加と容量減損の抑制がバランス良く行われた。
Al集電体は有機電解液中でAlF3などの皮膜を生成して不働態化していると言われている1)。LiBF4電解液中におけるサイクリックボルタンメトリーから測定したアルミニウムのブレークダウン電圧は約50Vであった。従って、Al集電体にはこれらの電解液中で比較的緻密な皮膜が安定に存在していると思われる。また電解コンデンサなどでは駆動有機電解液中の微量の水分が絶縁皮膜の修復に非常に重要であることが知られている2)。Al集電体は純度が高いほど安定であるという報告もあるが3)、ここではAl集電体に含まれる不純物金属元素は、結着材中の微量の水分とともに皮膜の性質を変化させ、電池性能の向上に役立っていると考えられる。
結論として、リチウム二次電池の正極集電体アルミニウムに微量金属元素を添加することにより容量特性、サイクル特性が向上する。この効果は特にCuが顕著であった。また正極合材を正極集電体に圧着する時点の結着材中の微量の水分は不働態皮膜の安定化に寄与し、容量特性を向上させる。微量金属元素を添加した正極集電体アルミニウムに微量水分を含む結着材で正極合材を塗布するとサイクル特性および容量特性を共に向上できる。
(1) K. Kanamura, Battery Technology, 10, 85(1998).
(2) M. Ue, F. Mizutani, S. Takeuchi, N. Sato, J. Electrochem. Soc., 144, 3743(1997).
(3) C.Iwakura, Y.Fukumoto, H.Inoue, S. Ohashi, S. Kobayashi, H. Tada and M.Abe, J. Power Sources, 68, 301(1998).
立花和宏,○…らは、1999年に石巻で開催された平成11年度化学系7学協連合東北地方大会においてリチウム二次電池集電体としてのアルミニウムに含まれる不純物金属元素と酸化皮膜生成反応の電気化学的検討について報告しているリチウム二次電池集電体としてのアルミニウムに含まれる不純物金属元素と酸化皮膜生成反応の電気化学的検討1)。
K. Tac…らは、1999年にハワイで開催された196th Meeting of the ECSにおいてImpurity Effect in Aluminum Cathode Current Collector on Charging/Discharging Performance of Lithium Secondary Batteryについて報告しているImpurity Effect in Aluminum Cathode Current Collector on Charging/Discharging Performance of Lithium Secondary Battery2)。
第40回電池討論会@京都府京都市【学会】第40回電池討論会@京都府京都市
佐藤 幸裕は、2002年に、それまでの研究をリチウム二次電池正極劣化の機構解明と抑制というテーマで修士論文としてまとめ、山形大学を卒業したリチウム二次電池正極劣化の機構解明と抑制3)。
- (1) リチウム二次電池集電体としてのアルミニウムに含まれる不純物金属元素と酸化皮膜生成反応の電気化学的検討
立花和宏,○佐藤幸裕,遠藤孝志,仁科辰夫,松木健三,平成11年度化学系7学協連合東北地方大会講演予稿集, p.180 (1999). - >
- (2) Impurity Effect in Aluminum Cathode Current Collector on Charging/Discharging Performance of Lithium Secondary Battery
K. Tachibana, T. Nishina, T. Endo and K. Matuki,196th Meeting of the ECS講演要旨集 (1999). - >
- (3) リチウム二次電池正極劣化の機構解明と抑制
佐藤 幸裕, 山形大学 物質化学工学科, 修士論文 (2002). - >