米沢の冬は寒い。建築物の躯体材料は木材系、石材系、鉄骨系に大別される。このうち断熱性に優れているのが木材だ。木の温もりは、日本の自然にマッチした日本家屋の特徴だ。
文明開化の象徴である東京駅にあやかって総レンガ作りにしたいところではあるが、米沢の冬の厳しさを考えると木の温もりは捨て難い。しかも日露戦争の戦費が嵩んで予算は緊縮されている。内陸の米沢まで高価なレンガを輸送する手段もない。とすれは、やはり躯体は木材とするのが良かろう。
木材の弱点は、耐久性だ。腐ったり、虫に喰われたりする。多湿の日本でなおさらこの弱点を克服せねばなるまい。伝統的な日本家屋では囲炉裏の煙で柱を燻すことで、防腐と防虫を実現していた。
教室の暖房が囲炉裏では都合が悪かろう。やはり石炭ストーブだ。
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亜鉛華が大蔵省印刷局に大量に納入されることで経営が安定すると、重次郎はかねてからやりたかった近代塗料の固練りペイントの研究を開始します。明治12年頃に製造を成功させ、国内博覧会に亜鉛華とともに出品し優秀な製品であることから褒状を受けています。
当時の固練りペイントの価格は28ポンド(12.7Kg)入りの缶が3円でした。当時は東京品川郊外の土地1坪が2円で買えましたので、いかにペンキが高価であったのが分かります。