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鉛電池の新技術(鉛電池回収~4時間充電)

~New Technology for Lead-Acid Batteries~

卒業研究 54299 Files Google+ C1 ITE電池研究所 本田敦哉のグラフ   

ハンガリー、ブタペストのITUの国際大会で2015年10月15日に日本の研究グループ(小澤・間瀬・川邊・冨永)により発表された鉛電池研究の要点

(1)鉛電池は、現在世界で最も生産量の大きい電池である(下表1)。これがリチウム電池生産が今後大きくなって、鉛電池は次第に使用料も生産量も減少すると考えている人々も多いが、鉛電池の劣化原因を研究して、その劣化を確実に防止する新技術を日本のグループが開発し、各種鉛電池でその新技術1が有効で、これまで寿命が3〜4年とされていたものが10年〜15年にできることを発表し、多くの出席者に大きなインパクトを与えた。

(2)今までの出版物に、鉛電池の劣化原因は正極にあると記述されていたが、これは誤りで、劣化原因は負極の水素化過電圧の低下で、水素ガス発生が起こり、その充電反応(PbSO4→Pb2+ +SO42- , Pb2++e-→Pb)が起こりにくくなることによる大型PbSO4の生成(サルフェーション)によるPbSO4の蓄積が劣化の最大の原因であることを実験的に実証した。

(3)200台のトラックの鉛電池に年1回のITE活性化剤(Super-K)の添加で全く電池劣化が10年間なかった。

(4)50台のトラックの電池を50%小型の鉛電池でSuper-Kをテストし、5年間全く電池劣化が無かった。

(5)ITEの開発した有効添加剤は、有機ポリマーで、20年前発見したP型は年1回の添加が必要であったが、最近開発したA型化合物では1回の添加で2年有効であり、やや多量(1セルに3〜4g)添加すると1回の添加で3〜4年有効であることを示した。

(6)ITEグループの研究で、鉛電池は安くてリサイクルの容易な電池として、今後も大きく人類に貢献するものになったと報告した。

(7)鉛電池は出力密度(W/kg)が著しく大きいので(下表2)、今後ハイブリッドカーや軍用潜水艦に大きく使用されてゆくと予測される。

諸言

1860年、プランテによって発明され、自動車、太陽電池、バックアップ用として現在も使用され続けている鉛電池は今後ますます需要が見込まれる。しかしながら鉛電池はサイクル寿命が短く、重量がかさむために、その交換のための出張・人件費がコストを増大させるという課題がある。小澤らは劣化した廃鉛電池にITE活性化剤を添加することによって、劣化電池の自動回復及びサイクル寿命の延命が可能だと述べている。そこで本研究ではITE活性化剤ポリマーの評価を行うと共に、IoTを駆使して鉛電池の劣化メカニズムを推定し、将来のネットワーク社会に最適な鉛電池の活用システムについて提案することを目的とする。

実験

・使用器具

  • キノマクリエイト(KINOMA-CREATE,21600円,SWITCHSCIENCE)
  • ユニバーサル基板(P-03229,60円,秋月電子通商)
  • 5V LQリレー(P-09148,220円,秋月電子通商)
  • 12V LQリレー(P-09149,220円,秋月電子通商)
  • テスター(AD-5529,2700円,株式会社エーアンドデイ)
  • スライダック型充電器(DC130V, ITE電池研究所)
  • 自動車電池用わに口クリップ(小澤先生より頂いた)
  • A型ポリマー(A1型、A5型の2種類,小澤先生より頂いた。)
  • B型ポリマー(B1型〜B5型の5種類,小澤先生より頂いた。)
  • 銅線(12×11mm,1280円,ホームセンタームサシ)
  • 5V ACアダプター(GF12-US0520,650円,秋月電子通商)
  • 12V ACアダプター(GF12-US1210,650円,秋月電子通商)

実施手順

1.廃鉛電池回収

劣化鉛電池を回収するため、各タクシー会社に連絡し、13個の廃鉛電池をいただいた。

その13個の鉛電池に番号を振り、♯1~7にA5型ポリマー、♯8~13にA1型ポリマーを添加した。

2.電池の4時間充電

銅線を使い、♯1~7の廃鉛電池を6個直列に接続した。

♯1~7をスライダック型充電器に接続し、電流4Aになるように電圧を調整した。

パルスの間隔を3秒に設定し、4時間の充電を行った。

結果

1.廃鉛電池回収

図1に回収した劣化鉛電池を示した。 鉛電池には番号を振り、伊藤研究室に並べた。

図1.タクシー会社から回収した劣化鉛電池
図2.廃鉛電池用A型ポリマー添加剤

表3に鉛電池の形式等全データを示す。

表3 廃鉛電池データ
番号 バッテリー形式 比重[-] OCV[V] 添加剤 添加量[g/cell]
♯1 40B19R 1.21 12.11 A5型 1.0
♯2 40B19R 1.20 12.21 A5型 1.0
♯3 55B24R 1.31 10.81 A5型 0.8
♯4 85D26L 1.13 13.32 A5型 0.7
♯5 75D23L 1.13 7.76 A5型 0.5
♯6 S46B24R - 13.05 - -
♯7 75D23L 1.26 12.35 - -
♯8 85D26L 1.27 11.23 A1型 1.0
♯9 85D26L 1.28 10.87 A1型 1.0
♯10 D26R 1.24 12.47 A1型 0.9
♯11 - 1.28 8.30 A1型 0.7
♯12 D31R 1.24 11.39 - -
♯13 55D26L 1.15 -0.28 A1型 0.6

2.電池の4時間充電

図3に銅線で電池を直列繋ぎにした図を示す。

図3.電池の直列繋ぎ

#17の鉛電池を銅線で直列に接続し一つ一つの開回路電圧を測定した。銅線が繋がっていない正極にスライダック式充電器の赤色ワニ口コードを接続した。銅線が繋がっていない負極に黒色ワニ口コードを接続した。スライダックを操作して4Aになるように調整し4時間充電を行なった。

#813の鉛電池を銅線で直列に接続し一つ一つの開回路電圧を測定した。銅線が繋がっていない正極にスライダック式充電器の赤色ワニ口コードを接続した。銅線が繋がっていない負極に黒色ワニ口コードを接続した。スライダックを操作して4Aになるように調整し4時間充電を行なった。充電時の鉛電池を図25に示した。

充電が完了したのを確認し、スライダックを0Vにして充電を完了させた。#1の電池から銅線を取り外した。放電器のニクロム線が完全に浸かるまで水を入れて、放電器の赤いワニ口コードを#1の正極に接続した。放電器の黒いワニ口コードを#1の負極に接続した。赤いワニ口コードにクランプメーターを挟んで電流値が読み取れるようにした。鉛電池の電池電圧が9V以下になるまで電池を放電し、それまでの時間と電流値を1分ごとにまとめた。

 スライダック式充電器を使い、廃鉛電池を4Aで4時間充電しOCV測定を行った。このOCVを表4にまとめた。1時間ごとの電圧を測定して表5にまとめた。 図4-1に充電の様子を、図4-2に放電器示した。
図4-1.4時間充電の図
図4-2.ニクロム線抵抗放電器
表4.劣化鉛電池のOCV
番号 充電開始[V] 充電終了[V]
♯1 12.16 12.77
♯2 12.02 12.76
♯3 10.76 13.39
♯4 11.44 13.10
♯5 6.61 11.88
♯7 12.30 12.87
表5.4Ampで4時間充電をおこなった結果

電流[Amp]

時間[h]

1

2

3

4

5

7

0

0

12.16

12.02

10.76

11.44

6.61

12.30

3.0

1

13.91

15.59

15.90

15.15

15.82

13.00

3.9

2

14.10

15.94

15.95

15.00

15.58

13.37

4.0

3

14.41

15.47

15.88

14.81

15.56

15.31

4.0

4

15.49

16.17

15.96

14.96

15.51

15.64

@ ♯7はITEの活性化剤ポリマーを添加しなかったもので、充電の最初の2時間が他の電池に比べて大きく低い電圧だった。これは負極の副反応である水素発生が大きく、主反応である硫酸鉛の還元がほとんど行われなかったためだと考えた。

A 活性化剤ポリマーは、負極に吸着し、水素発生過電圧を上昇させる。しかし、4時間の4A充電では、かなりの量が充電に使用されているため、他の活性化剤ポリマーを添加した電池と同じくらいの開回路電圧を示している。この結果から、活性化剤ポリマーを添加しない場合でも、劣化鉛電池の再生は可能であると言える。しかし、活性化剤ポリマーなしの状態で、長時間の充電を行うと、正極側が過充電状態になり、泥状化し、劣化の原因となってしまう。

充電した6個の劣化鉛電池の放電結果を表6に示した。

表6.4時間充電後の電池電圧

番号

OCV [V]

電流 [Amp]

放電時間[s]

1

12.59→12.06

119.0

60

2

12.59→12.07

116.1

60

3

12.34→11.04

54.3

5

4

12.89→12.40

116.5

10

5

11.77→11.48

92.1

10

7

12.65→12.39

127.6

150

@     残存容量が20秒だった1,2は、放電後60秒で電圧が8.98V,8.24Vまで減少した。

A     4は、4時間充電ではあまり回復していないように見える。

B     活性化剤を添加していない7は、230秒まで放電時間が延び、8.44Vとなった。

C     3,5は充電前のOCVが他のバッテリーに比べ低く、4時間充電後はOCV12V付近まで上昇したものの、放電が数秒で終わってしまうものとなった。これら、1,2,4,7は電流値も100Aを超えているのに対し、354.3Aと低く、復活しているとは言い難い。

D     3のセルは、負極側のセルがサルフェーションを起こしていた。また、単セル内部でショートが起きているのか、充電中の気体発生が見られなかった。

 

3.各鉛電池の電圧

図5-1に伊藤研究室の鉛電池の電圧を示す.スライダック型充電器で充電しているため電圧がゆれる. この電池の電圧は,キノマクリエイトが測定したデータを元に1時間の平均電圧を求め,プロットしたものである.

図5-1.Kinoma684で測定された鉛電池の電圧(♯1:40B19R)

図5-2に立花研究室のシールド鉛電池の電圧を示す.測定開始は2016/1/21 16:00からである.縦軸の電圧[V]は,1時間の平均値をプロットしたものである. 現在は充電器に接続しているため電圧は14V付近まで上昇している.本田敦哉のページにて接続されたLEDを遠隔で点灯させることが可能である.

図5-2.Kinoma710で測定された鉛電池の電圧(♯6:S46B24R)

結論

4時間充電では電池容量を完全に復活させるに至らなかった.よって24時間充電,48時間充電を行うことにした.その後の結果は私の卒業論文を参照ください.

謝辞

本論文を完成させるにあたり、研究室配属当初から手厚く指導してくださいました仁科辰夫教授、立花和宏准教授、伊藤智博准教授に心から感謝を申し上げます。また、貴重なサンプルを提供してくださったITE電池研究所様、吾妻観光タクシー(株)様、ツバメタクシー様、マルミヤタクシー様。はるばる愛知県名古屋市より山形大学工学部キャンパスへお越しくださり、共に実験・論文作成をお手伝いくださりました小澤昭弥様、深謝致します。ならびに先輩である小野寺伸也様、加藤直貴様、同輩の方々に謝辞を申し上げます。

参考文献


でら キノマクリエイト
デラさんのM2MとIoT
菅野の電卓
菅野の電卓2
菅野のクラウドポテンショスタット
ハマツのグラフ
旧米沢高等工業学校の設立
リチウム電池とLEDによるイネの室内水耕栽培
伊藤のIoTによる子育て支援

学会発表

エコ研究のすすめ


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