もっとも懸念される課題は安全性であろう。大容量高出力のエネルギーが制御されることなく一気に開放されれば危険極まりないのは当たり前である。 将来的に革新的な製造方法が開発される可能性はあるにしても、現在は合材スラリーを集電体箔に塗布乾燥して巻き取り、セパレータを介してパッケージングし、電解液を含浸させて電池とする1)。大型電池を作るには広幅で塗布する必要がある。広幅になれば中央部と端でニップ圧が異なったりと、塗布厚みを制御するのが難しくなってくる。内部抵抗を小さくするために電極全体の厚みを薄くすれば塗布ムラの誤差はさらに大きく影響する。セパレータをぎりぎりまで薄くすれば、塗布ムラの凸部によってセパレータが異常圧力を受けて破損し、短絡を引き起こすこともありえる。こうなると塗布ムラは安全性の問題とも関係する。 実際に自動車用に構成する場合は組電池で使われることになる。そうすると個々の電池のばらつきによって課題が起きる。したがって大型化に伴って塗布厚みがばらつくとそれが電池のばらつきとなり組電池で使う場合の問題となる。 製造コストを下げるには製品を流す速さを上げる必要があり、これも困難をもたらす。 少しでも材料を無駄にしないためには (1)  > リチウムイオン電池の製造芳尾真幸、小沢昭弥, リチウムイオン二次電池-材料と応用-第二版, 日刊工業新聞社, (1996).