☆分子の中では、電子は全く新しくできた軌道(分子軌道)に入る。(無機化学Iの復習) 例:H2分子 ・H原子の中の電子は1s軌道に入っている。しかし、H2分子を作ると、2本の1s軌道が「1σ」と「1σ*」という新たな軌道に生まれ変わる。1σはもとの1s軌道よりもエネルギーが低く(したがって電子はそこに入ろうとする)、1σ*はエネルギーが高い(電子は入りたがらない)。1σ軌道は「結合性軌道」、1σ*は「反結合性軌道」と呼ばれ、そこに入った電子はそれぞれ「結合を作ろう」、「結合を切ろう」とする。 ・通常H原子間の結合をH-HやH:Hと書いたりする。この-や:は「結合性軌道の電子対」を示しているのである。反結合性軌道には電子は入らないから描かないだけである。しかし、どの結合にも反結合性軌道は存在する。 例:He2分子が存在しないことを分子軌道法で示せ。 例:エタン分子のC-C結合の分子軌道を描き、電子を配置せよ。 例:テトラシラン(H3Si-SiH2-SiH2-SiH3)分子のSi-Si-Si-Si結合の分子軌道を描き、電子を配置せよ。 結合の数は3本、電子の数は? ☆ 共有結合している分子では、いくら結合の数が増えても、「結合性軌道は電子で満杯になり、反結合性軌道は常に空」である。 ☆ 結合の数が増えると、結合性軌道、反結合性軌道とも、エネルギー準位がわずかながらずれる(全く同じエネルギーではなくなる)。そのため、非常に多くの結合ができると、それぞれあるエネルギー幅を持った軌道の塊ができる。