(右図)イオン結晶の代表例、「NaCl型構造」。 <注意> NaClのような固体は、塩化ナトリウム(NaCl)という「分子」からできているのではない。無数のNa+イオンとCl-イオンが右図のように規則正しく並んだ「結晶構造」を作っている。 問: 右の構造を、言葉で表現したらどうなるだろう? 答: 「陰イオンが面心立方構造を作っており、陽イオンがその6配位サイトのずべてに入っている」 (陽イオンは6個の陰イオンに囲まれている) *NaCl型構造では陽イオンと陰イオンを入れ替えても同じことであるが、大抵の場合、「陰イオンの基本構造があり、そのすきまに陽イオンが入っている」と考えた方が便利なことが多い。 *副格子:特定の元素(イオン)だけで作られる構造。上の場合、陰イオンだけに着目すれば面心立方構造が見えてくるが、その面心立方構造を陰イオンの副格子と呼ぶ。 <単位格子または単位胞(unit cell)>:向きを変えずに平行移動で並べるだけで、全体の結晶構造を作り出せるような、「最小の単位」のこと。上の図はNaCl型構造の単位格子を表している。 *NaCl型構造を取る物質の例(カッコ内はShannon&Prewittのイオン半径、Å): Li+(0.88) Na+(1.16) K+(1.52) Rb+(1.63) Cs+(1.84) F- (1.19) ○ ○ ○ ○ ○ Cl- (1.67) ○ ○ ○ ○ × Br- (1.82) ○ ○ ○ ○ × I- (2.06) ○ ○ ○ ○ × Mg2+(0.86) Ca2+(1.14) Sr2+(1.30) Ba2+(1.50) O2-(1.26) ○ ○ ○ ○ S2-(1.70) ○ ○ ○ ○ Se2-(1.84) ○ ○ ○ ○ Te2-(2.07) × ○ ○ ○ *これらはすべてNaCl型構造をとるが、これをLiF構造やMgO構造などと呼んではいけない。