例:酸化亜鉛(ZnO) → ウルツ鉱型構造(陰イオンの六方際密充填の中の4配位サイトの1/2に陽イオンが入っている構造)。白色で、白の絵の具の顔料やベビーパウダーにも使われる。 Znの電子配置は[Ar]4s23d10。Zn2+は[Ar]4s03d10。 理想的なZnOは絶縁体。 ZnOもNiO同様不定比化合物だが、NiOと異なるのは Znが酸素よりも過剰なこと。中性の亜鉛原子が4配位 サイトまたは6配位サイトに入っている(4配位サイト の残り半分と6配位サイトの全部が空いている)。 したがって、酸化亜鉛の組成を、不定比を考慮して書けば Zn1+xO (x≒10-6)となる。 中性のZn原子は、 Zn ⇔ Zn+ + e- ⇔ Zn2+ + 2e- のように(自らがイオンになる代わりに)電子を放出し、それらの電子が結晶構造内を移動する。 従って、不定比な酸化亜鉛はn型半導体である。中性の亜鉛原子が1個の電子を放出しているという前 提に立って、イオンの電荷を考慮した化学式を書くと、Zn2+1-xZn+2xO2-となる。(電荷の総和がゼロで あることを確かめよ)。 ☆酸化亜鉛の電気的性質: 不定比組成(x≒10-6)酸化亜鉛の導電率(室温)は10-1Sm-1程度。NiOよりも不定比の度合いが小さい にもかかわらず、導電率が高い。これは伝導電子(Zn2+イオンに付け加えられるもう1個の電子)がZnの 4s軌道に入るためである。4s軌道は空間的に大きく広がっているので、隣り合ったZnどうしの4s軌道 は互いに重なり合っている。そのため、電子の移動が容易に起こる。NiOの場合には、正孔(Ni3+の状態)が移動するたびごとに酸化物イオンがわざわざ位置をずらす必要があったが、ZnOではその必要がないことが高い導電率の原因になっている。付け加えると、ZnOも半導体なので高温ほど導電率が高くなるが、その度合いはNiOに比べて小さい。