第2章 電解液中のポリマー種が鉛電極界面に及ぼす影響 2・1 緒言 鉛蓄電池は1860年にフランスのPlanteによってその原型が発明されて以来1世紀以上に渡って優れた二次電池として産業界を支えてきた。他の二次電池と比べた際、鉛蓄電池を基本的な電池特性が優れているとか取り扱いが簡便であるなど様々な評価がされるが、この電池のもっとも優れている点は水溶液系の湿式電池でありながら2Vという単セルあたりの電池電圧を実現したことにある。 この高電圧を実現する上で重要になってくるのが正極となる二酸化鉛と負極となる鉛の酸素過電圧と水素過電圧である。図2-1に硫酸イオンが含まれる場合の鉛の電位-pH図、図2-2に硫酸イオンが含まれない場合の電位-pH図をそれぞれ示した。図2-2において点線は酸素および水素の発生する電位を示している。明らかに、正極の電位は酸素発生電位より貴であり、負極は水素発生電位よりも卑である。この状態では電極上で常時、水の電気分解が起きていることになり電池として利用できるはずもない。しかし、二酸化鉛と鉛はそれぞれ酸素過電圧と水素過電圧が大きいために、通常では考えられない水の電気分解電圧である1.23Vを超えた電池電圧を得ることができる。 たて1) (1) 高分子と電池、ゴム、活性化剤舘謙太, 修士論文, (2009).