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令和6年12月4日 (水)

ステンレスはイオン化しにくいのでしょうか?

語釈1.

ステンレスになると物質が安定してイオン化しにくいということがあるのでしょうか?また、不動態化被膜についても教えてください。

不動態というのは、金属表面酸化されたときに、緻密で一様な酸化皮膜が金属表面に生成して金属表面全体を覆いつくしてしまい、その酸化皮膜が電子伝導性に乏しいためにそれ以上の金属酸化を抑制してしまう現象で、このとき生成する酸化皮膜を不動態皮膜と言います。この安定な酸化皮膜が金属表面に生成するということは、その酸化物自体が水に溶解しにくいということであり、イオンとして水には解けていかないということです。水に溶けやすい酸化物の場合は、金属酸化によって生成した酸化物がすぐに水に溶解してしまい、安定に金属表面を覆いつくすことができないため、不動態にはなりません。水に溶けにくい酸化物だからこそ、金属表面を安定に覆いつくす酸化物皮膜ができるんです。

では、ステンレスはどうかと言いますと、錆びないステンレスとして、第二次世界大戦前にドイツで開発され、特許取得されたもので、ステンレス中のクロムが重要な役割を演じています。ステンレス鋼の場合には、その表面に数nmという非常に薄いCr2O3の不動態皮膜が生成し、酸化を防いでいるんです。このCr2O3皮膜は、ステンレス鋼を引っかいて傷をつけ、金属地肌を空気にさらした場合でも、空気に触れた瞬間に安定で緻密な不動態皮膜が生成します。

この不動態皮膜の生成による金属の安定化、高耐食化は、Alもそうです。Alの場合には、Al2O3(アルミナ)という酸化皮膜が不動態として生成するため、腐食しにくい金属として建材など広く利用されているのです。

昔は『不働態』と表現していましたが、ワープロの誤変換によって論文でも『不動態』という記述が多く見られるようになり、『働』でも『動』でも意味は似たようなものだから、学会でも『不動態』を認めようということになり、今では『不動態』が正しいと若い人たちに勘違いされるまでに市民権を得てしまいました。
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