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スターリングシルバーだとすれば、緑色になるのはまず無いと思います。緑色になるとすれば、ニッケル(Ni)系のものか銅(Cu)起因の緑青だと思います。色物としては、顔料(絵の具など)が参考になります。その中で、緑色のもので銀(Ag)が関係したものはありません。顔料系は、特殊な物質よりもありふれたものを使いますので、これをおさえておけば、大抵のものは把握できると思います。指輪で普通に使用していて緑色がついたとすれば、その緑色の物質はありふれたものの範疇でしょう。でも、銀というのは無いんですよね。
私も銀製品について調べてみたのですが、変色や手入れに関しては以下のページが参考になるでしょう。
http://www.e-rasta-man.com/original/silver.html
ということで、複数のお客様から苦情が出ているとすれば、仕入れたスターリングシルバー地金自体がまがい物である可能性が高いかと思います。その緑色のものが緑青だとすれば、元素分析をすれば確実にわかると思います。そういうことで、その苦情が出たものと大丈夫なものを分析させていただければ、明解な結論を出せると思います。具体的には、走査型電子顕微鏡にエネルギー分散型の元素分析装置をつけたもの(SEM/EDX)を使えば一目瞭然だと思います。この分析はここでできる話です。試料はSEMの試料台に収まるように切断などの加工が必要になりますけど、それでも宜しければ、こちらで分析できますよ。
尚、顔料については、以下のページが参考になるかと存じます。Agで緑色なんてまず無いんですよ。
色(顔料)
http://www4.justnet.ne.jp/~sienna/color/pigment/
http://www.artnavi.ne.jp/enogu_museum/a-3-1.htm
http://www.isekyu-jp.com/ceramic/syouhin/genryou/ganryou/gan01.htm
Ag系の化合物で緑色という記述は、私が調べた限りではAg2FとAgOしかあり
ません。Ag2FはAg(0)とAg(I)の混合原子価化合物と考えられるもので、緑色を
帯びたブロンズ色の固体で、金属導電性を示す物質だそうです。AgO自身は
還元されやすいもので、希酸に接触すると直ぐに酸素を発生してAg2Oになり
ます。濃い酸と接触すると、濃い色がつくそうで、HNO3では茶色、硫酸では
オリーブ緑色だそうです。また,AgOは皮膚をいためるそうです。指にも緑色
がついてしまうとすれば、皮膚を腐食していることになるかと思います。どち
らにしても、普通の環境でできるような代物ではないですね。
銀の化合物は光によって自身が光還元を受け、相手を酸化してしまうという性質を持つものが多いので、この光酸化によって汗のなかの何かを酸化しているのかも知れません。単純なものではなく、複数の要因が複合して発生しているものでしょう。単純な分析では原因はつかめないのかもしれません。