3-3308 内部資料

吾輩は白谷である。名前はまだ無い。どこで生れたか大体察しはついているがあまり言いたくない。 何でも寒くてラブホが乱立したした所でギャーギャー騒いでいた事だけは記憶している。 吾輩はここで始めて研究者というものを見た。 しかもあとで聞くとそれは教授という人間中で一番獰悪な種族であったそうだ。 この教授というのは時々我々を捕つかまえて生き血を吸うという話である。 しかしその当時は何という考もなかったから別段恐しいとも思わなかった。 ただ彼の研究室に入れられてスーと持ち上げられた時何だかモヤモヤした感じがあったばかりである。 研究室の中で少し落ちついて教授の顔を見たのがいわゆる人間というものの見始めであろう。 この時妙なものだと思った感じが今でも残っている。 第一笑顔をもって装飾されべきはずの顔がのっぺりしてまるで機械だ。 その後白谷にもだいぶ逢ったがこんな片輪には一度も出会でくわした事がない。 のみならず人格の真中があまりに鬱屈している。 そうしてその興味の中から時々延々と説教をたれる。 どうもくどくて実に弱った。これが教授の読む論文というものである事はようやくこの頃知った。