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🌡️ 📆 令和6年4月25日

バルブメタルって何ですか?

1.

バルブメタルとは、弁金属やバルブ金属とも言われているものです。バルブとは弁のことです。アノード酸化(陽極酸化)により金属表面がその金属の酸化物の皮膜で一様におおわれて、優れた耐食性を示すものです。

アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモンなどがいわゆるバルブ金属(弁金属)として知られているが、これらのうちで電解コンデンサ用としては、アルミニウムとタンタルとが現在実用に供されています。

これらの金属は、酸素供給源(空気中のO2や水H2OのOもそうです)があると、金属自体が酸化されて表面にその金属の酸化物の皮膜を作ります。これを酸化皮膜といいます。酸化物は絶縁体だったり半導体だったりします。絶縁体でもイオン伝導性を持っていますので、酸化皮膜内に生成した電位勾配に応じたイオン電流を流すことができます。このため、その電位勾配に応じた電流が酸化皮膜生成のための電流として流れることになります。しかし、酸化皮膜が生成すれば、酸化皮膜の厚さが厚くなっていくので、皮膜内の電位勾配は小さくなり、イオン電流は小さくなります。このイオン電流と皮膜内の電位勾配の関係は指数関数の関係にあり、皮膜生成電流 i は電位勾配ΔEの指数(exp ΔE)に比例しますから、皮膜の成長によりΔEが小さくなると指数関数的に電流値が小さくなり、我々が生活している時間程度の長さの時間オーダーでは無視できるほど皮膜成長電流が小さくなります。バルブメタルをある環境に置いた場合、このような酸化皮膜ができていて、見かけ上安定している状態にあるのです。

アルカリ溶液中では、可溶性のタングステン酸イオンやモリブデン酸イオンなどのオキソアニオンを生成する金属は、アノード酸化できません。オキソアニオンとして溶解してしまうんです。

直流の場合は、電圧・電流値に関係なく起こり得ます。交流でも起こりますというか、陽極酸化皮膜の生成は必ず起ります。チタン棒2本を電極として使用しているものと仮定します。金属TiからTiO2を生成する反応は、水素電極基準の電位系において、-0.86Vです。水が分解して水素ガスを発生する反応の熱力学的電位が0Vです。また、水の中には空気中の酸素が溶け込んでいますが、酸素が還元する反応(熱力学的な酸化還元電位は+1.229 V)もTiを酸化する反応に寄与しますので、Tiを溶液中に漬けた場合、自然電位は約+0.5Vになります。自然な環境でTi表面には約1.4Vという電位差分の酸化皮膜が生成しています。このときの膜厚は数nm程度でしょう。これが最初のTi電極2本の状態と考えてよいでしょう。

では、これに5Vという電位差を2本のTi電極間にかけます。負極のほうは、水の電気分解が起ります。このとき、表面の酸化皮膜であるTiO2を通して水素発生が起ります。そのときの電位が約-1.0 Vです。電極間の電位差が5Vですから、正極のほうには+4Vがかかることになりますから、正極側では+0.5V → +4Vに電極電位がシフトし、さらに+3.5V分の酸化皮膜が成長します。そして、皮膜内の電位勾配が小さくなるとともに、皮膜成長電流が小さくなります。電流値が小さくなればなるほど、負極のTiは自然電位に近くなります。自然電位は+0.5 Vですから、最終的には正極の電位は+5.5V程度になるものと思われます。ですから、Ti方面には+5.5-(-0.86)=6.36V分の酸化皮膜が成長していると思われます。このとき、正極には10nm程度の厚さの皮膜が生成しているでしょう。

2本の電極間の電圧を逆転します。負極になったTi電極上には既に6.36V分の酸化皮膜が成長していますが、水素発生は先ほどと同じ約-1.0Vです。ですので、新たに正極となった電極も先ほどと同じ程度の陽極酸化皮膜が成長しま
す。両電極は等価なものとなるのです。

こうなると、もはや5Vの電位差をかけても、ほとんど電流は流れなくなりま
す。また、TiO2はn型半導体なので、もともと酸化電流はほとんど流さないも
のなのです。

溶液側のイオン導電率(溶液抵抗)も関係してきますが、計算することはできます。しかし、溶液の導電率を測定するという目的からすれば、これは無駄な努力のように思います。

交流でも起こりますというか、陽極酸化皮膜の生成は必ず起ります。但し、溶液のイオン導電率を測定するという目的からは、交流の場合は状況が違ってきます。

TiO2はn型の半導体です。まぁ、酸化皮膜が電子的には絶縁体でも良いのですが、この酸化皮膜は誘電体として機能し、溶液と金属の間にコンデンサーとしての機能を持ちます。電子回路に使われる電解コンデンサはこの陽極酸化皮膜の誘電体としての性質を利用したものです。直流の場合は、このコンデンサーへの充電が終わってしまえば電流は流れなくなりますが、交流の場合には、定常的にコンデンサーを通して交流電流が流れます。つまり、電極表面がコンデンサーで、このコンデンサーの間に溶液が入ることになり、溶液抵抗Rsと電極表面のコンデンサーCsの直列回路と等価になるのです。
ですから、交流電流は流れることになります。

溶液の導電率を測定するという観点からは、電極表面の状態が少々変わっても溶液抵抗を確実に測定できる必要があります。電極表面が変わるということは、Csの値が変わるということであり、これが変わっても溶液抵抗を確実に測定する為には、CsによるインピーダンスをRsよりもはるかに小さいものにすればよいことになります。これはCsを大きくするということであり、電極表面を凸凹に荒らして実際の電極面積を見かけの幾何面積よりも大きくしてやればよいことになります。もしくは、交流の周波数を大きくしてやれば良いことになります。交流の周波数を大きくした場合、Rsは100kHz程度までは値は変わりませんので、回路的にも負担の少ない周波数を選んでやれば良いことになります。この周波数としては、よく1kHzが用いられます。
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