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令和8年2月5日 (木)

周期律

語釈1.

2.元素の一般的性質と周期性
(基本無機化学p.21~31)

<この項目のポイント>
 ① 「元素の周期性」は、元素のどのような性質に反映されているか。(高校では、どのような性質に周期性が
反映されていると教わったか)
 ② 元素の一般的な性質を理解する上で必要な用語の定義:イオンエネルギー(高校で学習済み)、電子親和力、有効核電荷、電気陰性度(最も重要)。
 ③ 電気陰性度はどのように定義されているか。

2-1 周期律の反映① … 原子の大きさ(p.21)
     ・普通、原子の大きさというときには、(1.17)式ではなく、共有結合半径やイオン半径を意味する。
      (1.17)の意味は、今は理解しなくて良い。
       共有結合半径 → 同種元素間の結合距離の1/2。原子を「球」とみなしている。(p.22、表1.3)
       イオン半径   → イオン結晶中の陽・陰イオン間距離から算出された値。提唱者によって、様々なイオン半径表があるが、現在はShannon-Prewittの半径表(p.329、付録1)が最も信頼されている。イオンを「球」とみなしている。
     ・共有結合半径、イオン半径とも、「価電子が存在する軌道の半径」を意味している。
・価電子を引きつけようとする原子核の正電荷(有効核電荷、後述)が大きいほど、価電子が存在する軌道の
 広がりは小さくなる。
⇒ 同じ周期の元素では、左から右に行くにしたがって共有結合半径が減少する(p.22、表1.3)。

  【電子軌道の遮へいと有効核電荷(スレーターの規則)】
  ・原子中の電子から原子核を眺めると、その電子よりも
   内側の電子雲によって原子核の正電荷が「減らされ
   て」いるように見える(遮へい)。そのため、その電子が
   感じる原子核の電荷(有効核電荷)は、原子核本来の
   正電荷よりも小さい。
  ・原子中の電子に及んでいる有効核電荷は、スレーター
   の規則から比較的簡単に近似できる。
 <練習問題>
1.NaからClまで、それらの価電子が感じる有効核電荷を計算せよ
   2.表1.3において、Na → Clの順に共有結合半径が小さくなっていく理由について考察せよ。

2-2 周期律の反映② … イオンエネルギー (Ionization Energy) IE (高校で学習済み)
     ・ある元素E(中性)から電子1個をうばって1価の陽イオンにするのに要するエネルギー

      E  →  E+  +  e-    (1.19)  (このとき IE のエネルギーを要する)

     ・イオンエネルギーは価電子に及んでいる「原子核からの静電引力(エネルギー)」と関係がある。それは
      また、有効核電荷とも対応する。
⇒ p.26、表1.4や図1.12をみると、左から右に行くにしたがってイオンエネルギーが大きくなる。
⇒ イオンエネルギーは、小さな増減を繰り返しながら増加していく。p.27の記述を参照のこと。

2-3 周期律の反映③ … 電子親和力 (Electron Affinity) EA (高校では一部の教科書に記載あり)
    ・ある元素E(中性)に電子1個を付け加えて、1価の陰イオンにするときに放出されるエネルギー
    ⇒ ある1価の陰イオンE-から電子1個をうばって中性元素にするのに要するエネルギー

    E  +  e-  →  E-  ΔHo   (EA = -ΔHo)   (1.21)
    E-  →  E  +  e-    (1.21*)    (このとき EA のエネルギーを要する)

・電子親和力は新たに付け加わる電子に及んでいる「原子核からの静電引力(エネルギー)」と関係がある
(有効核電荷とも対応する)。
    ⇒ p.28、表1.5や図1.13をみると、左から右に行くにしたがって電子親和力が大きくなっていく。
    ⇒ 電子親和力も、イオンエネルギーと同様、単調には増加しない(増減を繰り返しながら増加する)。

2-4 周期律の反映④ 電気陰性度 (Electronegativity) χ … 最重要
   ・(分子内の)原子が電子を引き寄せる尺度。 … 有機化学でもすでに少し触れられている。
   ・電気陰性度は、単に陽・陰どちらのイオンになりやすいかという目安だけではなく、分子の極性、有機化学にお
    ける反応の予測、錯体、固体の性質…など、化学のなかのあらゆるところで使われる重要な概念。
・電気陰性度は無単位の尺度(物理量ではない)。提唱者により算出の仕方が異なる。
・電気陰性度の算出式(1.22)~(1.24)や元素ごとの値を覚える必要はないが、算出式が導かれた背景を理解す
 ること。
 ○ Mullikenの定義:  χ∝ (EI + EA)/192.97  (テキストではIEとEIが混用されている)
      電気陰性度は、「陽イオンへのなりにくさ」と「陰イオンへのなりやすさ」の平均であると考えた。
      電気陰性度の値そのものは無次元であるが、物理量としてはエネルギーに対応している。
○ Allred-Rochowの定義:  χ= A×Z*/r2 + B ∝ Z*e2/r2  eは電子の電荷、rは共有結合半径
      電気陰性度は、共有結合距離だけ離れた電子に働く原子核の静電引力に相当すると考えた。物理量とし
      ては「力」に対応している。
○ Paulingの考え方: 電気陰性度の異なる元素間の結合エネルギー(例えばH - F)は、それぞれの元素単体の結
      合エネルギー(H - HとF - F)の算術平均よりも大きい。これは、より陰性の元素が電子を引き寄せる結
      果、イオン結合的な寄与が上乗せされるためである。そこでフッ素の電気陰性度が3.98であるとして、これ
      を基準に決め、(1.23)式を考え出して各元素の電気陰性度を決めていった。
  ⇒ 表1.6を見ると、フッ素が最大、フランシウムが最小。右から左、上から下に行くにつれて小さくなる。
  ⇒ 遷移元素(3~12族)にはやや不規則な変化をするものがあるが、IEやEAよりも単調に変化。

宿題
1.今日のプリントの練習問題1.と2.を解答せよ。
2.F-、Na+、Mg2+の各イオンに含まれる電子数を数えよ。次に、それぞれのイオン半径(配位数6…この意味
は今は知らなくて良い)を比較して、大きい順に並べよ。イオン半径の順番がなぜそのようになるか、説明せ
よ。
3.(2002年度北大院工)Slater則を使って、Mnの3d電子の有効核電荷Z*を求めなさい(25Mn=[Ar]3d54s2)。
4.(2002年阪大院理) a) 第6周期までの2族元素について、第一イオンエネルギーの小さい順に元素記号
を用いて書け。またそのように変化する理由を説明せよ。 b) 同じ周期の元素においては、第一イオン化エ
ネルギーは原子番号の増加とともに増大する傾向にある。そのように変化する理由を説明せよ。
5.Allred-Rochowの方法を用いて、次の手順でAlの電気陰性度を計算せよ。
  ① Alの価電子に対する有効核電荷を、自分以外の12個の電子が遮へいしているものとしてスレーターの
方法で計算する。
  ② 式(1.24)に代入する。このとき、rcovは表1.3の値を用いる。
  ③ 答は1.65となる。これは表1.6の値と少し異なるが、表1.6はもっと精密な有効核電荷の計算を用いて
いるためである。
6.H2、F2、HFの結合エネルギー(結合解離エネルギー)はそれぞれ432、155、567kJ/molである。Fの電気陰
性度を3.98として、Paulingの方法でHの電気陰性度を求めよ。

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