2017-6-14
平成29年度山形県理科教育センター協議会事務局員研修会
https://edu.yz.yamagata-u.ac.jp/Public/54299/c1/Extra_Syllabus/2017_H29/20170614.asp
音楽史1)に楽譜の記法がほぼ確立した。
楽譜の縦軸は周波数の対数だ。横軸は時間だ。ここに音符(♪?????)をプロットする。
コストと音質のはざまでぎりぎりの設計をするデジタル音響技術。そんなテクノロジーにとってもっとも手ごわいのが自然音だ。自然を扱う番組でも、背景の自然音まで際立たせてくれる構成は少ない。ラジオにテレビにネットが普及した今となっては自然音の魅力を知っている大人はそこまで多くない。だからそうでない視聴者に向けて番組を面白くするためにやむをえずBGMやナレーションで誤魔化してしまう。
しかし、この自然音は一生聞き続けられるものではない。ヒトは年を取れば、耳が遠くなってゆく。育ててもらう側から育てる側に回る頃から、少しずつ高音域が聞こえなくなる。若いころに聞こえた音は、いつのまにか別な音になってしまっている。若いころに聞く機会に恵まれなかった音は、年をとって別な音になってしまっていても気づくことすらできない。
理科の基本は自然の観察だ。五感を研ぎ澄まして自然に触れることこそ、理科の原体験だ。ネットで配信される音楽を楽しむのも良い。歴史の中を生き残ってきた生楽器の音を楽しむのも良い。でもやはりヒトの手を介さない自然の音も楽しみたい。それが楽しめるときに楽しませたい。
雪解けの水が側溝を走るの音、桜の花びらをなびかせるそよ風の音、雷鳴とともに遠くからやってくる雨脚の音。色あせたもみじが地面に舞い落ちる音。積もりはじめた雪の上にそっと重なる天からの音。
たとえ年をとってかつて聞こえた音が聞こえなくなったとしても、しんしんと降る雪のことが、故郷からの季節の便りにしたためてあったとき、若かりしあのときのあの一瞬を呼び起こせるように、そのひとときの目の前の当たり前を大切にしよう。
それが自然科学たる理科の学ぶべきもっとも基本的な姿勢なのだから。