語釈1.
1)【結果】2本の銀/塩化銀電極(参照電極)の電位差[V]、ダニエル電池の起電力の理論値[V]、Cuの単極電位[V vs.Ag/AgCl]、Znの単極電位[Vvs.Ag/AgCl]、電位数直線(横軸電位[V])と単極電位の差[V]
電気化学セルを組み立てて銀線を塩酸中でアノード酸化して1本だけ作ります。その作り方は次の通りです。銀線を紙やすりで研磨し、清浄な金属面を露出させます。その金属面を3M HNO3で前処理し、水洗いします。その電極で以下のセルを作成し、0.8mA/cm2で15分ほど電解し、表面に塩化銀を析出させます。電解セルには10mLビーカーを使います。転倒防止のため電解液を注ぐ前に底に両面テープを貼っておき、電解液を注ぎ終わったビーカーは実験台にしっかり固定します。電極はダブルクリップで固定します。
電解セルの作成(左図) 回路の接続(中央図) 出来上がり(右図)
→参考書:電気化学測定法(上)技報堂出版、p97「銀/塩化銀電極の作り方」
Ag/0.1M HCl/Pt
同じ手順でもう1本作成する。2本の電極を飽和KCl溶液に浸漬し下記のような電池を作成し、電位差をデジタルテスターで確認する。電位差が5mV以内であることを確かめる。もし、2本の電極電位が5mV以上ある場合は、うまく出来ていないと思われる方を作成しなおし、電位差が5mV以内になるまで繰り返す。10mLビーカーを2個用いて塩橋で接続する。塩橋にはシリコンゴム管を用いる。煮溶かした電解質-寒天溶液を専用スポイトで吸い上げて固め、ゴム管の両端をカットする。
→参考書:電気化学測定法(上) 技報堂出版、p96「新しく作った電極の電位チェック」
→参考書:電気化学測定法(上) 技報堂出版、p94「塩橋の作り方」
Ag/AgCl/KCl//KCl/AgCl/Ag (※ //=塩橋)
[新訂物理図解]p.103または[応用物理化学Ⅱ]p.191の図10・2を参考にして、ポッゲンドルフの補償法による電位差測定の回路を組む(ポテンショメーター)。検流計の替わりにコンパレータを使う。以下のダニエル電池を作成し*1)、標準電池の代用とする。白金以外の金属は測定直前に研磨後、0.1N HClで前処理を行い、水で十分に洗浄する。
Cu/0.01M Cu2+//0.01M Zn2+/Zn
ネルンストの式を用いてできるだけ正確にダニエル電池の起電力を計算する。計算した起電力とダニエル電池を用いて、抵抗尺の目盛りを較正する(本来ならウェストン電池を用いるが、ウェストン電池は水銀やカドミウムを使用するため取り扱いに注意を要する。そこで、ここでは標準電池をダニエル電池で代用し、電位や電圧の概念を習得する)。摺動抵抗と電源には電池付き抵抗尺(NiCd電池×2)を用いる。
ダニエル電池の起電力を直接エレクトロメータに入力し、その出力が抵抗尺の同じ目盛りに対応することを確認することで、エレクトロメータの動作を確認する。(エレクトロメータはポッゲンドルフの補償法をオペアンプで電子的に瞬時に実現する装置と言える)
銀/塩化銀電極の標準電極電位を計算する*2,3)。塩化カリウム水溶液の濃度は、実測した室温から、添付資料より飽和濃度を求める。飽和塩化カリウム水溶液の濃度は非常に濃いので活量係数による補正が必要である。添付資料から活量を求めてそれを用いる*4)。以下のような電池を組み、その起電力を補償法およびエレクトロメータを用いて測定し、それぞれの単極電位の測定結果からダニエル電池の起電力を計算し、一致することを確かめる。
Cu/0.01M Cu2+//KCl/AgCl/Ag
Zn/0.01M Zn2+//KCl/AgCl/Ag
?設問:参照電極の照合にはなぜデジタルテスターを用いてもよいのか?
?設問:うっかり亜鉛棒を硫酸銅につけると黒くなるのはなぜか?
?設問:デジタル式のテスターにはなぜ電池が必要か? 標準電池としてのウェストン電池はどのようにして作成するか?
電極と溶液(左図) 単極電位の測定(中央図) ダニエル電池の起電力(右図)