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令和8年2月11日 (水)

液体や気体の膨張とエントロピーの関係は?

語釈1.

-----Original Message-----
気体は容器に入れた場合、その容器が大きくなるほど膨張
するのに対して、液体はそうならないということに、エントロピー
とエネルギーはどのように関わっているのですか? 
----- unquote -----

物理化学の範疇ですね。どの程度の説明をすれば良いのか、
困ってしまうのですが、もし難しすぎるというのなら、また質問
してください。

分子のエネルギー状態を記述するのに、併進、分子内振動、
分子内回転などを考えるんですが、液体と気体とでは、分子
内の振動と回転のエネルギーはほとんど同じなので、併進の
エネルギーだけを考えることになります。で、量子化学的に
併進のエネルギー状態を記述するにはどうするかというと、分
子の併進運動に対して、その分子が自由に動き回れる空間
(体積)free volumeを規定し、それに対して3次元の井戸型
ポテンシャルを適用して解析を進めます。これは、分子の運
動というものに対して量子化学的に見た場合の議論になり、
非常に微視的な話になります。液体の流動性といったニュー
トン力学の巨視的な話ではありません。

気体では、個々の分子は自由に容器内を動き回ることがで
きるので、この井戸型ポテンシャルは容器そのものになりま
す。また、気体では、周りの分子からの引力を断ち切って自
由に動き回ることができる状態にあるわけで、周りの分子か
らの引力を断ち切るだけの高いエネルギーを分子は持って
いることになります。

これに対して液体は、分子はある程度自由に動き回ることが
できますが、お互いの分子間の引力が強く、その引力を断ち
切って自由に容器内全体を分子が動き回ることができませ
ん。周りの分子からの引力を断ち切るには、エネルギーが
不足しているのです。そのために、分子が自由に動き回るこ
とができる空間(自由体積)が非常に小さいものになります。

以上の説明から、液体よりも気体のほうがエネルギーが高い
状態にあることがいえます。液体から気体になるのに要する
エネルギーが蒸発熱と呼ばれるもので、ΔHvapと表現されま
す。このΔHvap分だけ、気体のほうが高いエネルギー状態に
あります。

では、エントロピーはどうかというと、気体の分子に許されてい
る分子の併進運動は、その井戸型ポテンシャルが容器全体
になり、非常に広いものです。こういう広い空間では、一番低
いエネルギー状態と次のエネルギー状態の間隔(エネルギー
準位の間隔)は非常に狭いものとなり、容易に次のエネルギー
状態に遷移することができます。これは、気体では、分子がい
ろんなエネルギー状態を容易にとることができることを意味し、
広い野原で、皆が自由にのびのびと動き回っている状態にあ
ると思ってください。これは、エントロピーが大きいことを意味
します。

しかし、液体では、自由体積が小さいために、井戸型ポテン
シャルの大きさが極限られた狭い空間に制限されています。
こういう狭い空間では、一番低いエネルギー状態と次のエネ
ルギー状態の間隔(エネルギー準位の間隔)は大きくなり、
簡単には次のエネルギー状態に遷移することができません。
これは、液体では、分子は多くのエネルギー状態をとること
ができずに、同一規格の狭い4畳半のアパートにみんな詰め
込まれて、身動きができないような状態にあると思ってくださ
い。これは、エントロピーが小さいことを意味します。

ちなみに、蒸発に伴うエントロピー変化は、多くの物質で
88 JK-1mol-1であることがTroutonによって見いだされまし
た。蒸発に伴うエントロピー変化は、

ΔSvap = Svap - Sliq = R ln (Vvap/Vf)

となります。ここで、Vvapは気体の自由体積で、これは容器
の容積ということになりますね。Vfは液体の自由体積です。
そこで、Troutonの発見を利用して自由体積比を計算してみ
ると、

88 = ΔSvap = R ln (Vvap/Vf)
Vvap/Vf ≒ 10,000

となります。1molの蒸気の体積は大体20~30L程度である
から、液体の自由体積は、1mol当たりで2~3mLということ
になります。液体の典型的な1molの体積は100mLなので、
液体は、その体積の2~3%程度しか自由体積が無いことを
意味し、その2~3%程度しか自由に動き回れないということ
だから、エントロピーは気体よりも小さいということが言える
んです。
#量子化学


参考文献


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