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令和7年2月9日 (日)

15族元素

語釈1.

3.15族元素(窒素族)
(無機化学序説第8章、およびテキストにない内容を含む)

3-1 単体の構造と性質
    ○ 窒素: 2原子分子。 リン: 基本的に3種の同素体(構造は図8.2)。わずかに電気を通すが、非金属。
    ○ ヒ素、アンチモン: 室温では層状構造をもつ固体。同素体がある。構造は複雑なので覚える必要はない。
ヒ素、アンチモンは「類金属(半金属)」で、電気を通す。
    ○ ビスマス: 金属。電気を通す。

     <問> 窒素は2原子分子であるが、リンがP2という2原子分子を安定に作らないのはなぜか。
          また、窒素がリンのように無数に連なった状態をとらないのはなぜか。

3-2 水素との化合物 (17、16族ではH2Oなどのように水素を先に書くが、15族より右の元素は水素を先に書く)
      (PH3(ホスフィン)、 AsH3(アルシン)、 SbH3(スチビン)、 BiH3(ビスムチン)などが存在するが、あまり安定
ではない(17、16族元素より電気陰性度が低く金属的性質が高いので、-3の酸化状態を嫌う))。
   【NH3(アンモニア)】
      HF:ブレンステッド酸、ルイス塩基   H2O:ブレンステッド酸・塩基、ルイス塩基、
      NH3:ブレンステッド塩基、ルイス塩基   CH4:ブレンステッド、ルイスとも酸でも塩基でもない
      Nのsp3混成軌道。孤立電子対を含めると4面体型分子。弱いブレンステッド塩基。
    ○ H2Oが  2H2O  ⇔  OH- + H3O+と自己解離(電離)するように、液体アンモニア(-33.4℃以下)では
  2NH3  ⇔ NH2- + NH4+ の自己解離する。
ただし、アルカリ金属を入れると、水中では  H2O + Na → Na+ + OH- + 1/2H2 と水素を発生するが、
液体アンモニアでは Na → Na+ + e-の反応がおこるだけで(溶媒和イオンと溶媒和電子ができる)、水
素は発生しない。 → 液体アンモニア中のプロトンは非常に還元されにくい。
    ○ HF:H2とF2を混合すればただちに爆発的に生成。H2O:H2とO2を混合して、点火すれば爆発的に生成。
NH3:H2とN2を混合してもなかなかできない → Haber-Bosch法(触媒存在下、400℃、100気圧以上)
  → 単体の結合エネルギーがF-F < O=O < N≡Nの順に大きくなることにも一因あり。

   【N2H4(ヒドラジン)】 … H2N-NH2 Nはsp3混成。
    ○ 還元力が強い(とくに塩基性溶液で)   N2H4  → 4H+ + e- + N2
        例) N2H4 + 2O2 → 2H2O2 + N2
    <問> ヒドラジンのN-N結合は切れやすいので反応性が高い。その理由をF-F、HO-OHとの類似性から考
察せよ。
    <問> アセチレン(HC≡CH)は窒素と同様に3重結合を持つが、これは容易に水素化されてエチレン→エタ
ンとなる。しかし、窒素の3重結合は非常に安定で、アセチレンほど容易にはヒドラジンを作らない。そ
の理由を考察せよ。

3-3 酸化物とオキソ酸
   【窒素の酸化物とオキソ酸】
    ○ 亜硝酸(HNO2)と硝酸(HNO3)  
       <問> どちらが強いブレンステッド酸か。その根拠を推定して答えよ。

          窒素の基底状態

      亜硝酸中の窒素の電子構造

                                            Oとのπ結合
                            sp2混成。1組の孤立電子対が1隅を占める。

      硝酸中の窒素の電子状態 Oとのπ結合

                            sp2混成。電子1個を1個のOに「貸し」、そのO-と単結合。
                       → p.73の図のような構造をとる。
     <問> 亜硫酸イオン(SO32-)と硝酸イオンとの構造の違いを、混成の様式の違いに基づいて述べよ。
     <問> 亜硝酸イオン中のO-N-O結合角は115°である。なぜ120°ではないのか理由を述べよ。
     <問> NO3- + 2H+ + e- → NO2- + H2O (E0 = 0.835V)、 HNO2 + H+ + e- → NO + H2O (E0 = 0.996V)
          硝酸も亜硝酸もどちらも酸化力があるため、塩酸に溶けない銅などの金属も硝酸には溶ける。
銅と硝酸との反応式を調べてひとつ記せ。また、銅よりも卑な金属には硝酸に溶けないものがあ
る。それはどのような金属か、また溶けない理由は何か、答えよ。
    ○ 窒素酸化物 … N2OからN2O5まで多種存在する。このうち、重要なものは、N2O、NO、NO2。
      *液体のN2O4(NO2の二量体)以外の窒素酸化物は、熱力学的には不安定で、O2とN2が自然に反応し
て生成することはない。過度に高温での燃焼や、窒素を含む物質の燃焼で生成。最大の発生源は自動
車。窒素酸化物を総称してNOx(ノックス)という。
    <問> NO2分子はO-N-Oの結合角が134°の分子であって常磁性をもつ(不対電子がひとつある)。このよ
うな形をとる理由を考えよ(ヒント:亜硝酸イオンのどこかから電子が1個抜けた状態)。またNO2+イオ
ンは直線状分子である。そのような形をとる理由を考えよ(ヒント:CO2と電子数が同じ)。

    ○ NOxが環境に及ぼす影響:
      ①オゾン層破壊:   (i) N2O + 光 → N2 + O    (ii) N2O + O → 2NO   (iii) NO + O3 → NO2 + O
 (iv) NO2 + O → NO + O2 …以下NOが連鎖的にオゾンを破壊。
      ②地球温暖化:    N2Oは大気中に存在するNOx中で最も多い。温暖化効果はCO2の数百倍。
   ただし現在はCO2の1000分の1程度の濃度。急激に増えつつある。
      ③酸性雨: NOは空気中の酸素ですぐにNO2に酸化され、これが二量化してN2O4になる。
N2O4 + H2O → HNO3 + HNO2
      <問>酸性雨とはどのような雨か。定義を調べよ。

   【リンの酸化物とオキソ酸】
    ○ 通常は+5価の酸化物(P4O10)とオキソ酸(H3PO4、オルトリン酸)を作る。
       P4O10  +  6H2O  →  4H3PO4   P4O10は強力な脱水剤。
    ○ H3PO4は3価の弱酸。(p.75)
      <問>リン酸の逐次解離定数(pKa1、pKa2、pKa3)はそれぞれ2.15、7.20、12.35である。H3PO4とH2PO4-
では、どちらがより強いブレンステッド酸であるか。また逐次解離定数がそのように変化する理由を
述べよ(ヒント:「基本無機化学」に答えが書かれている)。
      <問> 同じ周期の元素のオキソ酸を比較すると、ブレンステッド酸の強さは、
             HClO4 > H2SO4 > H3PO4 > H4SiO4である。その理由を述べよ(2000九大院理)。
           (ヒント)電離(酸解離)したあとの陰イオンの負電荷の広がりの大きさを比較せよ。プロトンとの静
電引力はどの順に大きくなるか。
    ○ 【縮合酸】オルトリン酸どうしから水が取れて縮合酸ができる。リン酸→ケイ酸の順にその傾向が強くなる。
      <問> リンの酸化数が+5のオキソ酸は、分子3個が脱水縮合して環状の3量体になる。これを化学反応
式で示し、生成物の構造を書け(1985群馬大院工)。

   【ヒ素、アンチモン、ビスマスの酸化物】
    ○ 周期が下がるにつれて+3価の酸化物を作る傾向が大きくなる。
      ヒ素: As2O5とAs3O3、アンチモン:Sb2O3とSb2O5、ビスマス:Bi2O3のみ
      <問> 周期が下がるにつれて+3の酸化数が安定になる理由を述べよ(ヒント:16族元素参照)。

練習問題
1. オルト燐酸中のリンの電子状態を推定せよ。
2. リンのオキソ酸はH3PO4であるのに、窒素にはH3NO4なるオキソ酸は存在しない。その理由を述べよ。(ヒント:上の1.の答えを踏まえれば、容易である)
3. P4O10分子中のP-O結合には、139pmのものと162pmのものがある。この違いの理由を説明せよ。
4. p.76、演習問題28を答えよ。
5. p.76、演習問題30を答えよ。
6. PCl5(五塩化リン)の分子構造を推定せよ。また五塩化窒素なる分子が存在するかどうか、考察して理由ととも
に述べよ。
7. 窒素にはP4O10と同形のN4O10という酸化物の分子が存在しない理由を述べよ(注意:N2O5という分子はある)。


宿題

1. 今日の授業の範囲の<問>および上の練習問題1.~7.を解答せよ。

2.(予習問題) 二酸化炭素は3原子分子の気体であるが、同じ族のケイ素の酸化物(二酸化ケイ素)は巨大高分
子(固体)である。なぜこのような違いが現れるのか、自分なりに考察してA4 1/3ページ以内で述べよ。


#🗒️👨‍🏫点火#🗒️👨‍🏫#🗒️👨‍🏫基底状態#🗒️👨‍🏫ブレンステッド塩基#🗒️👨‍🏫不対電子#🗒️👨‍🏫アルカリ金属#🗒️👨‍🏫酸性雨


参考文献


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