語釈1.
知りたいと思いました. 具体的には写真フィルムの原理であるところのAgBr → Ag + Br
の光反応にいくらのエネルギーが必要かということです.
光の粒子性を使って光分解反応をどのように説明なさるのか、興味があります。光分解反応ということで、ハロゲン化銀そのものは紫外線から青色にしか感度がありません。400nm~520nmとのことです。たぶん、フィルムにはAgBrだけでなくAgIもあるようなので、AgIが長波長側の特性に関係しているのかもしれません。
「原子核物理学」のセンスから言いますと, AgBr と Ag と Br の精密な質量が分かれば AgBr の結合エネルギーが出せますので、上記の吸熱反応の熱量が分かる筈です。
これは、結合に伴う質量欠損から結合エネルギーが計算できるということ
でしょうか?
私は写真の専門家ではないので詳しいことは知りませんが、電気化学反応の中で、AgBrに関係した電極反応を示こととします。
化学反応では、ギブスの自由エネルギー変化ΔGが化学反応の指標になります。また、酸化還元反応の電位EとΔGの間にはΔG=-nFEという関係があります。ここでFはファラデー定数、nは反応電子数です。電位は標準水素極NHE (2H+ + 2e→H2)を0Vとして規約し、NHEに対する相対値で標記しています。
AgBr + e ⇔ Br- + Ag Eo=0.0711 V
Br2(aq) + 2 e ⇔ 2 Br- Eo=1.0874 V
です。Ag関連の電極反応の電位は、
http://syllabus-pub.yz.yamagata-u.ac.jp/Electrochem/Species.asp?DSN=ElectroChem&nSpeciesID=17
にあります。他の元素の電極電位や式量(分子量)なども、やはり私どもが運用する上記電気化学データベースから求めることができます。従いまして、熱力学的には電極反応で
2AgBr → 2Ag + Br2
という反応を進行させるためには、1.0874-0.0711=1.0163 Vの分解電圧で可能だということになります。しかし、この反応は水溶液中での反応であり、各イオン種は水和して安定化しておりますし、Agも金属Agに取り込まれた状態での話であり、Br2も水溶液として水に溶解した状態の話です。
これに対して、銀塩写真での光分解反応
AgBr → Ag + Br
は異なります。まず、光分解反応はAgBr結晶内で起る反応であり、AgBr内でバンドギャップ以上のエネルギーの光が入射されたときに結晶内で電子が励起されてホールと電子に分離します。この電子を結晶内で動きやすいAg+が補足し、準安定状態になって潜像化します。周りの環境が異なるため、水和エネルギーなどが関係してくるため、水溶液系の電位差をそのまま適用することはできません。
ちなみに、手元にある資料でハロゲン化銀のバンドギャップを調べたところ、AgClが3.2eV、AgIが2.8eVです。Br2の結合エネルギーは193 kJ/molでしたが、AgBrやAgの結合エネルギーは手元の資料にはありませんでした。化学便覧で光吸収スペクトルを調べたところ、吸収極大はAgClが350nm、AgBrが420nm、AgIが425nm、Br2が415nm、Cl2が330nm、I2が520nmでした。どうもハロゲン化銀のバンドギャップはハロゲンの光吸収スペクトル極大に近いようですね。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/spstj2/j-mokuji/62(3)1999.html
に目次が出ています。しかし、山形大の図書にはこの雑誌はないみたいなので、詳細は不明。臭化銀の固有感光波長域は400nm~520nmという記述が、コニカのコニカ赤外750という赤外フィルムのカタログに出ています。
http://www.konica.co.jp/amuseum/ir750/ir_data/infrared750.pdf
http://www.mmjp.or.jp/rwicp/data106.html
化学の原典 第 II 期 -4、光化学、日本化学会/徳丸克己 編
菊判/250頁/本体価格 3800円、ISBN 4-7622-9384-9[86.9刊]
等という本もあるようです。
http://www.jssp.co.jp/f_chem_classic/genten2_04.html
写真やハロゲン化銀などの感光全般に関しては以下のページが参考になるようです。
http://www.dango.ne.jp/anfowld/kensaku.html
http://www.dango.ne.jp/anfowld/Lights.html
http://homepage2.nifty.com/fkagaku/inpaku/jp/5nen/200010/adv.htm
http://www.geocities.com/yoshihitoshigihara/ag.htm
http://arata.page.ne.jp/nichigei/notes/p-cmstry.html