語釈1.
強酸性電解水の話原理は食塩電解と同じで、アノードで生成した塩素ガスが水に溶解して生成する次亜塩素酸による殺菌効果のものですね。http://syllabus-pub.yz.yamagata-u.ac.jp/Electrochem/Species.asp?DSN=ElectroChem&nSpeciesID=28
を参照してください。我々が運用しているサイトです。そこから辿っていける所から、以下の電極反応が引けると思います。
[PtCl6]4- + 2e ⇔ 2Cl- + [PtCl4]2- Eo=0.726 V
[PtCl4]2- + 2e ⇔ 4Cl- + Pt Eo=0.758 V
PtO + 2H+ + 2e ⇔ Pt + H2O Eo=0.98 V
Pt2+ + 2e ⇔ Pt Eo=1.188 V
[IrCl6]3- + 3e ⇔ 6Cl- + Ir Eo=0.86 V
IrO(s) + 2H+ + 2e ⇔ Ir + H2O Eo=0.87 V
IrO2 + 4H+ + 4e ⇔ Ir + 2H2O Eo=0.926 V
Ir3+ + 3e ⇔ Ir Eo=1.156 V
Cl2(g) + 2e ⇔ 2Cl- Eo=1.3583 V
Cl2(aq) + 2e ⇔ 2Cl- Eo=1.396 V
Cl3(-)(aq) + 2e ⇔ 3Cl- Eo=1.4152 V
です。上記の電位は標準水素極の電位を0Vとした相対値です。標準水素極は水の電気分解でカソード側で水素が発生するところの電位だと思っていただいて構いません。水の電気分解による酸素発生の電位は1.229Vです。
塩化物イオンCl-は金属腐食の憎まれ役です。Cl-がいると、ステンレスなんかも孔食していしまいます。その理由は、金属イオンと錯体を作ってしまうんです。[PtCl6]4-なんかですね。[IrCl6]3-なんかもそうですから、白金もイリジウムも高電位でアノード分極すると溶けちゃいます。
白金上に生成する酸化皮膜ですね。交流をかけているので、白金の酸化皮膜生成と再還元(Ptに戻る)を繰り返しているでしょう。酸化皮膜ができるとき、は白金原子間に酸化物イオン(O2-)が入り込むので、金属表面上の白金原子の配列が変わります。それが再還元して金属Ptに戻ったとしても、Pt原子の再配列の速度が遅いため、白金表面上にはPt原子の微小な集団(クラスター)ができているものと思われます。クラスターってのは、まぁとても小さな原子の集団でとても小さな団子みたいなものができていると思ってください。これは、白金表面上にとても小さな白金のクラスターができている状態であり、黒色を呈するので白金黒(プラチナブラック)と呼ばれるもので、電極反応などの触媒能力が高いものです。
白金をアノード分極していくと、0.8V位から酸化皮膜PtOの生成が起ります。更にアノード分極していくと1.5V位から水の電気分解による酸素発生が起ります。この間は1Vもありませんので、1nm程度の非常に薄い酸化皮膜ができています。この皮膜は電気を通すので、酸素発生も起るのです。また、酸化皮膜が絶縁体であったとしても、1nm程度の厚さですとトンネル効果によってトンネル電流が流れますから、結局は電流が流れちゃうんです。
溶出するでしょうね。溶出速度はわかりません。電極反応によって電流が流れているということは、白金表面でなんらかの反応が起っているということで、その反応量はファラデーの法則によって電流値と関係づけられます。電流は反応速度を表しているということになります。しかし、白金の溶出電流ばかりではなく、そのほとんどは水の分解による酸素発生がまず起ります。さらに、高電位側では溶液中のCl-イオンが酸化されて塩素ガスが発生します。これらの反応の全量が、実際に流れる電流値になりますので、そのうちの白金溶出電流の割合がどの位かは状況によって変わることもあるので、一概には言えません。ただ、流れる電流のほとんどは酸素ガス発生や塩素ガス発生でしょう。電気化学の視点で言えば、5Vの直流電解なんてものは、恐ろしい程の高電圧で電気分解している状況にあると思ってください。それから、溶出量は白金の厚さで決まるのではなく、表面積で決まると思っていただいたほうが良いですね。
上記の反応式中の標準電位の値から、電気化学反応での電位差はせいぜい1V程度なんです。それに5Vもの電位差をかけるということは、恐ろしい電位差を印加していることになります。例えば、半導体なんかのバンドギャップは2V程度でしょうか。これに対して絶縁体のバンドギャップは4V程度です。5Vという電位差は、この絶縁体のバンドギャップをも超えるとてつもなく大きな電位差なんです。
前回の回答で、溶液の導電率を測るのならば交流を使ったほうが良いということを書きましたが、交流電圧のことを書き忘れたと思います。交流法による導電率測定では、印加する交流電圧は5mVとか10mVとかの値です。高い電圧を印加してしまうと、水や電解質を電気分解してしまってエネルギーロスも大きいですし、電極の酸化溶解なんかも起るので、良いことは何もありません。溶液のイオン伝導度を、系に与える外乱を最小限に小さくして測定するほうが得策です。ですから、5mVなんかの交流電圧を使うのです。
あと注意しなければならないのは、電解している電極のほかにも導電率測定の為の電極が別にあることになりますが、外部の電子回路のアースがどのようになっているかで注意が必要なんです。例えば、外部回路間のアースレベルが違っている場合(プラス接地とマイナス接地とか)、外部回路の電源間やシャーシ間で共通アースが取られていたりすると、いつのまにか高電位がかかっていることがあるのです。ですので、注意が必要なんです。それを避けるためには、導電率測定用の電極には1kHz程度の交流電圧を印加ようにし、電極と直列にコンデンサをかまして直流分が導電率測定用電極に掛かることを防ぐと良いでしょう。オシロスコープなんかの入力段のACカップリングと同じことをしましょう、ということなんです。
ちなみに、水溶液中でのPt等の電極表面には電気二重層というコンデンサのようなものが存在し、その容量値は電極1cm2あたりの数字として10μF/cm2程度の値を持ちます。これからコンデンサのインピーダンスが計算できるので、どの程度のカップリングコンデンサを使用すればよいかが計算できるでしょう。周波数は1kHz程度、交流電圧は5mVとか10mVとかで十分ですし、そのような値を使うほうが良いと思います。