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表面技術協会の要旨
表面処理を施したアルミニウム集電体と電極合材との接触抵抗
(山形大院理工)○加藤直貴,小野寺伸也,伊藤知之,立花和宏,伊藤智博,仁科辰夫
キーワード[リチウム電池、集電体、アルミニウム、接触抵抗、表面処理]
1. 緒言
リチウムイオン二次電池の正極にはアルミニウム集電体が使われる。その表面には不動態皮膜が生成しており、その表面処理は電極合材との接触抵抗に大きく影響する。しかしながらアルミニウム集電体の表面処理と接触抵抗の関係を定式化して議論している報告は見当たらない。
リチウムイオン二次電池の内部抵抗は正極合材とアルミニウム集電体との接触抵抗Rc、溶液抵抗Rs、反応抵抗Rrに分けられる1。接触抵抗Rcは、溶液抵抗Rsの次に電池のレート特性を左右する支配的因子である。小野寺らはアルミニウム集電体の初期皮膜の厚みをd0=0.7nmとし、皮膜の電気抵抗率ρを合材組成によるρ0=20MΩm,合材によらないρ0’=6MΩmに分け、合材成分iの電気感受率をXei、寄与率をciとしたとき接触抵抗Rcは式(1)で表されると述べている2。
(1)
ここで電気感受率Xeiは物性値であり、比誘電率εから1を減じて求められる。寄与率ciは、電極合材の組成、合材に含まれる材料の分散状態ばかりでなくアルミニウム集電体の表面状態によっても大きく変化する。
本研究では表面処理を施したアルミニウム集電体と電極合材との接触抵抗について寄与率ciを使って定式化を試みることを目的とする。
2. 実験方法
Table1にアルミニウム集電体に施した表面処理の種類と求めたアルミニウム集電体の表面処理と電極合材の接触抵抗Rcを併せて示す。それぞれのアルミニウム集電体は見かけの電極面積Sが100mm2の旗形とした。拡面倍率を求めるために表面処理を施したアルミニウム集電体に電圧2Vのバイアスを印加し、アジピン酸アンモニウム中で静電容量Cを測定した。
アルミニウム集電体に活物質のマンガン酸リチウム(平均粒子径17μm、電気感受率Xe1 =3.9)、炭素材料のアセチレンブラック(一次粒子径40nm、電気感受率Xe2 =0と推定)、バインダーのポリフッ化ビニリデン、分散媒のN-メチル-2-ピロリドンからなるスラリーを塗布・乾燥し試験電極とした。この試験電極と、参照極に銀、対極に白金、電解液に1M 四フッ化ホウ酸テトラエチルアンモニウムの炭酸プロピレン溶液を使って電池を組み立てた。その電池式を式(2)に示す。
Al|LiMn2O4, AB, PVDF|TEA BF4/PC|Pt vs. Ag (2)
式(2)の電池の内部抵抗Riをクロノポテンショグラムの電圧降下から求め、ついで電池の溶液抵抗Rsを交流インピーダンス法により実軸切片から求め、それらの差に電極面積Sを乗算し、接触抵抗Rcを求めた。合材中で接触抵抗に寄与する成分は活物質(i=1)と炭素材料(i=2)と仮定し求めた接触抵抗Rcより活物質の寄与率c1を求めた。
3. 結果および考察
Fig.1(i)に活物質の接触によるアルミニウム集電体と電極合材との接触抵抗の増大の様子を示す。表面極性の大きい活物質がアルミニウム集電体と接触すると、アルミニウム集電
体表面の不動態皮膜の欠陥に存在する電子が表面から追いやられ空乏層が形成し、接触抵抗が増大する。
Fig.1(ii)に粗面化処理による接触抵抗の低減の様子を示す。
粗面化されたアルミニウム集電体に粒径の小さい炭素導電材が優先的に充填されることで活物質の寄与率が低下する。寄与率の低下は、活物質の粒径r1に較べてアルミニウム集電体の平均ポアサイズr2が小さいほど著しいと考えられ、(3)式で示される。Fig.2に示したa箔のSEM写真から読み取った粗面化箔の平均ポアサイズr2は0.8μmであった。a箔について活物質の寄与率c1を求めると、0.6であり、これより粗面化係数H=13となった。
(3)
Fig.1(iii)に相互拡散層による接触抵抗の低減の様子を示す。
相互拡散層により活物質表面の表面電荷はほとんど遮蔽されると仮定でき、活物質の寄与率c1を0と置くことで接触抵抗が推算できる。
Table1 アルミニウム箔の表面処理の種類と静電容量、接触抵抗の関係
アルミニウム箔の種類 表面処理の種類 静電容量 C /μF 接触抵抗Rc /mΩm2
未処理箔 表面処理なし 1.0 200±60
a箔 粗面化(大) 33 35±12
b箔 相互拡散層(厚) 4.5 3
c箔 粗面化(小)+相互拡散層(薄) 14 10
d箔 粗面化(小)+相互拡散層(厚) 17 2
e箔 粗面化(大)+相互拡散層(薄) 19 4
f箔 粗面化(大)+相互拡散層(厚) 28 4
4. 結言
粗面化処理または相互拡散層を施したアルミニウム集電体と電極合材との接触抵抗について寄与率ciを使って定式化できる。
文献
1) C. Honda, et al; The Electrochemical Society of Japan, Abstract#1097, October 7-12, (2012)
2)S. Onodera, et al; Electrochemistry, (submitted).
Type Ver.1.05
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